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夕焼けこやけ



放課後、志摩から屋上に来るように言われ、屋上へと繋がる階段を駆け足で上っていた。
この間、志摩が溢した本音。
そのせいで、最近は志摩を意識して、彼の顔をまともに見れないでいた。

ドキドキしながら屋上の扉を開ければ、志摩がフェンスに手を置き、オレンジに染まりかけている空を見つめていた。


「志摩、」
「!…名前ちゃん、来てくれたんやね。」

私が声をかけると、志摩は一瞬肩を揺らした。そしてゆっくりこちらを振り返って、いつものへらっとした笑顔を私に向けた。

「…どうしたの?」
「あ、えと……」
「…?」

彼は言うのを躊躇っているのか、口をもごもご動かしている。

「…名前ちゃん!」
「は、はいっ!」
いきなり大きな声で名前を呼ばれ、思わず敬語で返事をすると、志摩に、なんで敬語なん、と笑われてしまった。

「やっぱり名前ちゃんおもろいわ、」
「ちょ、それ失礼じゃない!?」
「はは、俺はホンマのこと言うただけやでー」
「なにそれ!別に私面白くなんかないもん!」

気づけば、いつもみたいに騒いで、笑えていた。最近こんな風に笑えてなかったから、なんだか嬉しくなる。
しばらく二人して笑いあってると、急に志摩の顔が真剣なった。


「はぁ、…名前ちゃん」
「なに?」
「俺な、名前ちゃんのこと、好きやねん。」

志摩の口から紡がれた言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。
好き、という言葉を理解し、一気に顔が熱くなる。

「えっ…」
「最初にあったときから、名前ちゃんのこと、好きやったん。」
「う、嘘だあ…」
「嘘やあらへん。嘘でこんなに、恥ずかしくならんもん…」

いつもの冗談かと思って否定すれば、強い声で嘘じゃないと言われた。そして、その後に続く言葉を聞いて顔をあげれば、志摩は耳まで真っ赤になっていた。

「本気で、名前ちゃんが好きなんや。俺と、付き合うてください。」
「……はい。」

真剣な志摩の真っ赤になった顔を見ていると、改めて好きと言われ、付き合ってほしいと言われた。私は自然とはい、と答えていて、自分でも驚いていた。


「えっ、ホンマに!?」
「うん。…私も、こないだ志摩が変なこと言うから、ずっと意識しちゃって…志摩の顔、見れなかったんだから…。」
「…っ名前ちゃん!」
「ちょ、うわっ…!」
いきなり志摩が飛び付いてきて、バランスを崩してそのまま屋上の床へ倒れ込んでしまった。背中に鈍い痛みが走り、少し顔を歪めれば、志摩が眉をさげて謝ってきた。

「堪忍な、名前ちゃん。大丈夫か?」
「うん…大丈夫だよ」

ふと上を見上げれば、空はオレンジ色に染まっていた。

「志摩、上見て」
「ん?」
「すごく綺麗な夕焼けだね」
「…せやね、」

私たちは、それからしばらく、その空を眺めていた。



110923


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