シオカラトンボ
「志摩、頭に蜻蛉。」
「…え。えっ、と、取って!!死ぬ!往生する!」
「取るから静かにして!」
私は志摩のふわふわのピンク頭にシオカラトンボが止まっていた。
こいつはしぶといのか志摩が暴れても動じなかったため、とってあげることにした。
「はい、取れた。…こいつ、色綺麗だなー…ほら、もう志摩の頭に乗っちゃダメだぞ!」
「名前、男前やな…」
「僕らの出番無いですね」
私は、蜻蛉を放してやり、志摩のほうを向く。
志摩はホントに怖かったのか、うっすらと涙が浮かんでいる。
「おおきにな、名前ちゃん…」
「んーん」
涙目の志摩を苛めたくなった私は、あることを思い付いてしまった。
そして志摩の前へさっき蜻蛉を掴んだ手を差し出す。
「ねぇ志摩。」
「ん?」
「手、つなご?」
「…え」
「ほら」
志摩は明らかに動揺していた。
「えっ、む…無理やて!」
「えー。じゃあ繋がないの?私もう子猫丸とは繋いじゃってるよ?」
「う…名前ちゃんは鬼畜や!」
「ほら、どうすんの?」
「…繋ぎ、ます」
「はい」
志摩は観念したのか、恐る恐る私の手を握り返してきた。
(ふええ…虫触った手…でも大好きな名前ちゃんの手…背に腹はかえられんわ…)
110913
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