※「私」の読みは「あて」でお願いします。
「坊。」
「あぁ…名前か。どないしたん?」
「んーん、呼んだだけや。堪忍な、邪魔してもて。」
「いや、もう終いさかい、大丈夫や。」
「ほんま?なら、お散歩行かへん?」
「別にええけど…。」
「ほな、行くで。」
私と坊は、幼馴染み。
私は昔から、坊が好きやった。
やて、坊は跡継ぎで、私は明陀にすら入れへん一庶民。
しかも、坊にはちゃんと許嫁がおって、その許嫁は私の友達の葉月ちゃん。
二人はお互い好き合ってたんや。
そして坊と彼女の仲を取り持ったのはこの私で。二人はめでたくお付き合いしとる。
せやから私が入る隙なんてあらへんかった。
「坊。葉月ちゃんとは、あんじょういっとるん?喧嘩でもしたんとちゃう?」
「あ?あー……おん。…なんや、名前にはバレとったか。」
「当たり前や。何年あんたと一緒におる思てんねん。あんたが元気ないんなんか葉月ちゃんのことばっかやん。全てお見通しや。」
「あんな、俺が嫉妬してもうて、いいあいしてしもたんよ。」
「…ほか。ほならあんたが謝らなアカンな。謝って、ヤキモチ妬いただけや伝えて、仲直りや。」
「…せやな。明日謝ってくる。おおきにな。」
私は身を引くで。
どうせ入る隙なんかあらへんのやったら、この気持ちが大きくなる前に、諦めるんや。
「あんたらが仲悪いなんて気持ち悪いから元戻ってほしかっただけや。」
「でもホンマおおきにな。俺はええ幼馴染みを持ったな。」
「せやせや!感謝しいや?あんたと葉月ちゃんくっつけたの、私なんやから、別れたりされたら往生するわ。」
「…ははっ、せやな。おおきに。」
なんて言った坊は、はにかむような、幸せそうな笑顔を私に向けた。
「…幸せにな、坊。葉月ちゃん泣かせるんやないで?」
「わーっとるよ。名前もええ相手、見つかるとええな。」
「…せやね。」
そう言った私は、あんじょう笑えとったやろか。
諦める一歩
(そんときの私は)
(その一歩を踏み出せとったんかな。)
青の祓魔師/勝呂竜士
やっぱり坊は跡継ぎだからちゃんとした相手じゃなきゃいけないんでしょうね。
坊のネタは全部悲恋になってしまうという。
もしかしたら後日ストーリー書くかもしれないです。
110726
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