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夏休みに入る少し前…

「おっくむーらくんっ!」
「…なんです?」
「あ、一応返事してくれるんだ。」

今僕の前にいる彼女は、入学当初から僕に話しかけてくる女の子だ。
僕に言い寄ってくる子は、今でもたくさんいるが、その人達とは何かが違うような気がするのだ。それは多分、僕が彼女に恋をしているから。
そしてその子は、今日も、少し頬を染めながらクリクリした瞳を僕に向けていた。

「当たり前ですよ。呼ばれて返事をするのは人として当たり前のことですから。」
僕は曖昧な笑顔を彼女へ向け、席を立った。

「奥村くん、どこいくの?」
「…それ、貴女に何の関係があるんですか?」

好きな子は苛めたくなると言う、小学生みたいなS心を持ち合わせてしまっている僕は、ついつい彼女には冷たい態度を取ってしまうのだった。
でもそんな態度を取っても、いつも彼女は笑顔を返してくれていた。

だが、この日は少し違った。


「あ……そ、か…ご、ごめんね、奥村くん、」
「……謝るくらいなら、聞かないでくださいよ。」
「!…ご、ごめっ…そうだよね、迷惑だったよね…」
「別に迷惑というわけでは「奥村くんは…私のこと、嫌いだもんね。」
……え?」


彼女から信じられない言葉が聞こえた。

ヤバい、やりすぎた。

そう思ったときにはもう遅く、彼女は目に涙をたくさん溜めていた。
多分、泣かないように堪えているのだろう。

僕は、胸が締め付けられたようにぎゅっと苦しくなった。
気が付けば僕は彼女の手を強引に掴み、屋上へと連れ出していた。
そして、堪らなくなり僕は彼女を抱き締めた。

「!?…へっ?ちょ…お、くむらくっ…」
「ごめん。」
「…え?」
「…僕は、苗字さんのこと、好きなんです。」
「………えぇ!?」
「だから…少し苛めたくなっちゃったんですよ…泣かせるつもりなんか、無かったんです。ごめんね。」
「お、奥村くん……」

少し距離を離し、彼女を見てみれば、耳まで真っ赤になっていた。
その姿がなんとも可愛くて、見つめていれば、目があった。

「…私も、奥村くんのことが、すきだよっ」
「はい、知ってます。だって苗字さん、分かりやすすぎるんですよ。」

クスッ、と笑って見せれば、もっと真っ赤にして、耐えられなくなったのか僕の胸元に顔を埋めた。
その可愛さに、僕のS心はまた擽られてしまったらしい。
未だ僕の胸元に顔を埋めている彼女の耳元へ顔を近付け、そっと名前を囁いた。

「名前…好きですよ…?」
「!?なっ、奥村くんっ、なにを…んっ」

彼女が上を向いた瞬間、彼女の唇を自分の唇で塞いだ。

「お、奥村くっ…いま、き、ききききっ…きすっ…」
「名前がいけないんです。…奥村くん、じゃなくて…ね?」
「あ…えっと、う……ゆ、雪男…くんっ…」
「…まぁ、良いでしょう。上出来です。」

彼女の頭をそっと撫でてやれば、また頬を赤く染めながら、はにかんだような笑顔でもう一度僕の名前を口にした。




素直な君と天の邪鬼な僕
(おくっ…じゃない、雪男くんっ)
(なんですか?)
(今度の日曜、暇?で、ででで、でーと、しないっ?)
(嫌です。)
(えぇっ!?)
(嘘ですよ。日曜ですね。楽しみにしてます。)
(っ…雪男くんのばかっ!)









青の祓魔師/奥村雪男
雪男か燐どっちで書くか迷った結果、雪男にしました。
きっと雪男は好きな子ほど苛めたくなる人だと思うんです。←



110726


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