さらわれた
「なんか今日風強いね。」
「せやね、麦わら帽子、飛ばされんようにな?」
「うん、」
今日は約束していた、志摩とのショッピングだ。
私たちは、とりあえず一通り買い物も終わって、クレープを買い、ベンチに座って休憩をしている。
「なんか良い買い物が出来た!ありがと、志摩!」
「いやいや、お礼なんかええんよ!俺も名前ちゃんとデート出来て、めっちゃ楽しかったし!」
「でも、ありがと。」
私は志摩に向けて笑顔を向けると、彼は一瞬驚いたように目を瞬かせ、すぐにふわりっと微笑んだ。
「どーいたしまして。名前ちゃんが満足ならよかったで。」
「志摩男前じゃん。」
「何言っとん、俺は前から男前やで!」
「え…。」
「え、ちょ、なにその疑いの目ぇ!名前ちゃんえげつないで!」
そんな他愛もない話をしていたら、さっきより強い風が吹いて、麦わら帽子が風にさらわれてしまった。
「あ…」
「麦わら帽子、持ってかれちゃった。」
私と志摩は、麦わら帽子が飛んでいった方をしばらく見つめていた。
「追いかけんでええの?」
「んー、うん。まだ麦わら帽子あるし、あれは諦めるよ。」
「ほか…。似合っとったんに、残念やな。」
そう言って志摩が、名残惜しそうに私の頭を優しく撫でた。
なんだか、ドキドキと鼓動が速まるのを、自分では抑えきれなかった。
110817
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