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フロントガラス


「おーい、名前。」
夕方、買い物の帰りに誰かに声をかけられた。
振り向いてみればそこには…、

「えっ!?金造さん!?」
「よっ、久しぶりやね。」

金造さんは、志摩のお兄さんで、前の京都の遠征で、会った人だ。


「え、どうして…。」
「いや、こっちで仕事あって、時間仰山あったし車で来はったんや。で、仕事終わったことやし名前に会うていこう思てな。」
金造さんは窓から顔を出し爽やかに笑ってそう言った。

「わぁ、ありがとうございます!」
「せや、これからドライブしいひん?」
「ドライブですか?」
「おん。息抜きに付きおうてや。」
「わかりました、良いですよ。」

私がそう言えば、金造さんはふわりと微笑んで、中から助手席のドアを開けてくれた。


「んー、なんやフロントガラス汚れとるな…。悪ぃ、洗車しに行ってええか?」
「あ、はい!拭くの、手伝います!」
「おおきにな。」
そうして車は、洗車場へ向かって発進した。



車体を水で流すと、夕日が車体を照らし、キラキラと輝いていた。
「水滴がキラキラして、きれー…。」
「ほぃ、これで前の方、拭いて?」
「あ、はい。」
金造さんからタオルを受け取り、車の前の方を拭き始める。


「んーっ…!と、どかな…ぃっ…!」
フロントガラスの上を吹こうと思ったのだが、身長があまり無い私は、届かなかった。
「どうしたん?」
「上、届かなくて…。」
「ははっ、ちっこいもんな、名前は。ほら、貸してみ。」
金造さんは私の頭をぽんぽんと撫でて、私からタオルを奪い、軽々と拭いた。

「名前はおなごなんやし、でけへんことがあったら、俺に頼んでええんやで?」
「…ありがとう、ございます。」
金造さんは、こんなことをさらっと言ってしまった。
なんだか、いきなり女の子扱いされて、少し恥ずかしかった。
顔が妙に熱く感じるのは、フロントガラスに夕日が反射したせいなんだと思いたい。






110807


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