「アル、行くぞ。」
いつだってそう。
君は俺の前を颯爽と歩く。
まだまだ小さかった俺は君の後ろを小走りで着いていくことしか出来なくて、
どうしても抜かすことが出来なくて、
立ち止まらせたくて
いつも転んだふりとかして、困らせた。
その度に君は心配してくれて、ただの悪戯だと知ると、呆れたように、でもどこか安心したように笑った。
何年もたった今でも…―
「おい、アル?どうしたんだよ?」
余程考え込んでるように見えたのだろうか。心配そうにこちらを覗くアーサー。
心配かけたくなくて、とりあえず何でもないことを伝える。
「あぁ、ごめんアーサー。何でもないんだ。気にしないでくれ。」
「そうか?ならいいんだが…あんまり考え込むなよ。アルらしくねえからな。」
「…わかってる、ありがとうアーサー。」
アーサーには俺が悩んでいたのなんてお見通しだった。くしゃりと俺の頭を撫で、ちゅっ、とリップ音をたて唇にキスされた。
それがとても心地よかったのか、少しだけ悩みがぶっ飛んだ気がした。
今やアメリカと言えば世界一と言っても過言ではない。
だけど、イギリス…アーサーがいたからこその俺であって、俺が威張れることじゃない。そんなこと重々承知だ。
だけど、まだまだ幼稚な俺はヒーローなんてほざいてる。
みんなはそれをいつも困ったように、呆れたように聞き流してる。アーサーだってそう。その度、
"あぁ…またやってしまった。
また、立ち止まらせるために、アーサーを困らせてしまった。"
そう自己嫌悪するのだ。
やっぱり何年たっても、君は変わらず俺の前を歩いている。
おいてけぼりヒーロー
(俺はいつになったら、君を追い越すことが出来るかな。)
(…君は、そんなくだらないことで悩んでたのか、なんて言って、笑うかな。)
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全俺が啼いた様へ提出。
参加させていただきました!
素敵な企画ありがとうございました!
101013
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