sweets! | ナノ

01


【これまでのあらすじ】

工藤〇一に赤ちゃんに転生させられた先で出会った見た目はツナギ美女中身はオバチャンなベリーママが母親になって早15年の月日が経った。

……え、簡略すぎる?月日が経ち過ぎる?最後の文からどうしてここまで飛躍したんだって?
あのねえ、ご存知の通り人生っていうのはなっがーいんだよ。24時間365日×15倍の時間に何があったかいちいち綴っていかなきゃならないのが面倒だっての。日記だって小学生の夏休みのしおりに書くのすら出来なかった人間だからな!舐めるなどやぁ。


(あ、ツツケラの群れだ)


道を歩いている中ふと空を見上げると羽ばたいている沢山のツツケラ。今日も市場でエサを貰えたようだね。ひーふーみいと運んでいる木の実を数えている内に分かれ道まで着いたらしい。隣を歩いていたおさげとメガネがチャームポイントのサラが控えめに手を振った。


「それじゃあココ、また明日ね」
「うん、またね!」


サラと別れてアローラの陽気な日差しが燦々と差し込む道を教科書の入ったカバンを持ちながら歩く。キマワリ印の日焼け止め塗っといてよかった。

15年経って大体16歳くらいになった私はただの赤ちゃんからトレーナーズスクール生(高等部)にレベルアップした。どうやらこの世界でも義務教育然りスクール制度が導入されてるみたいで、10歳になるとトレーナーになるかそのままスクールに通って元いた世界のように就職するかの二択ルートに分かれるみたい。まぁあくまで“その時”はなので途中からトレーナーを始めたりスクールに戻ったり、色々あるみたいだけど。

アローラ地方でトレーナーズスクールがあるといえばメレメレ島の一番発展しているあの街。SMやUSUMの主人公たちの住む始まりの街。そう、私はあの赤ちゃんの頃からずっとこのハウオリシティに住んでいるのだ。

緑のレンガで造られた屋根が目印の一軒家が今の私の家。そこ主人公の家なんじゃと突っ込んではいけない。私は断じて主人公ポジではない。キャラじゃないし。そもそも外見が全く違う。

“ココのいえ”と書かれた南国のドアプレートが掛けられたドアを開ければ、エアコンの涼しい風が吹き抜ける。


「きもちーい!」
「おかえり、ココ」
「ただいまベリーママ!」


はいよとアローラの太陽に負けないくらい眩しい笑顔の私のママ。名前はベリー。
聞いて驚け、なんとこのツナギ美人のベリーママは実はポケモンで、ニドクインなんだ!!
……え、知ってる?前回本人がそう言ってたって?擬人化要素があるのは承知の上だ、それより“ベリーママ”ってなんだよって?
よく聞いてくれました!ベリーママは私命名のママの異名!ただ名前がベリーだからママと合わせたわけじゃないのだよ、ふふん。私のママはね、ベリーストロングでベリーキュート&ビューティで、ベリーマザーオブマザー。母の中の母なの。だからベリーママなの。分かんなくても本能で感じて、感じろ。


「今日のおやつはなーに?」
「冷たいモモンシャーベット。早く手を洗ってくるんだよ」
「はーい!」
「は〜い」


言われた通りカバンを部屋に置き、洗面台で手を洗い…………、


(ん?)


今、ものすごく不愉快な声が聞こえたような。


「ベリーママのモモンシャーベット楽しみだなぁ」
「出たなこの似非キツネ野郎がぁぁぁぁあ!!!」


私の渾身の蹴りをヒラリとかわしあっははと笑うこの外ハネ黒髪眼鏡オシャレ胡散臭小僧。小僧って言ったけど、見た目は私より上、大学生くらい。だけど精神年齢は私の方が上だから、前世の年齢+現在の年齢だから。はい私の方が上ー!
ババアとか思ったそこのお前、後で覚えてろよ。


「ココのパターン見え見えの蹴りは飽きたって。まだまだガキだなぁ」
「黙れや伊達メガネ」
「あっはは〜。威嚇してるチョロネコみたいでちっとも怖くねぇや」
「ふんぎおらぁぁあ」
「何その叫び声ヤバすぎでしょ獣過ぎて」


あーその人を小馬鹿したような態度!狐みたいにほくそ笑むその笑い方!ああムカつくあの工藤〇一神を彷彿とさせる。


「おやノエル、いつの間に来たんだい」
「バイト早めに上がれたからさ。はいこれ、今日はあまマラサダ」


今日“も”の間違いだろ。

この男の名前はノエル。こいつもベリーママと同様人の姿を取ってるけどポケモンで、種族はゾロア。由来は私がクリスマスの日に買ってきたブッシュドノエルから。何故かウチのおやつやご飯の匂いを嗅ぎつけていつもふらりとやって来るはた迷惑な奴。ハウオリシティのマラサダ屋でバイトしていて看板息子らしいけど私は一度も行ったことないから知らん。
お土産はいつもマラサダ。あとたまにお客さんから貰った差し入れ。「お菓子よりお金が欲しー」って言ってる、失礼。
ていうかママ、ダメだよこんな不審者に知らぬ間に入られちゃあ!ママに何かあったらどうすんの!


「何言ってんだいココ。ノエルはウチの大事な家族だろう?」
「……え、家族?」
「うわ、如何にも嫌そうな顔。露骨すぎてウケるわー」


お兄ちゃん傷付いちゃうよぉ〜なんて言いながらシクシク泣いたフリしてるけどお前さっき“ウケる”って自分で言ってただろうが。ココちゃんのお耳はちゃんと聞いていますのよ。

そしてまた、ドアが音を立てて開いた。ドアを開けた主は玄関に入りピシッと敬礼のポーズを構える。


「ただいま戻りましたであります!ベリーママ殿、買い物の任務、無事完了したであります」
「おやロン、ありがとうねぇ。シフォンも付き添いご苦労さま」
「……べ、別に。私も用事があっただけだし」


“であります”口調で喋る短パンから見えるお膝が眩しいこのショタっ子はイワンコのロン。ツンデレ気味の白髪ツインの女の子はアローラロコンのシフォン。2人とも我が家の中では常識があるしいい子に分類されると思う。
シフォンの発言を聞いたロンが大きな青い目を丸くさせた。


「ずっと自分のそばにいたのはそういう事だったのでありますか!?では急いでハウオリシティに戻ってシフォン殿の用事を済ませに行きましょう!」
「え?あ、いや……」


いやいやシフォンがロンと一緒に買い物に行ったのは君の為だよロン。用事なんて無いのよこの子ツンデレだから素直に言えないだけなのよ。おい今私のことおばちゃんとか思ったやつ表出ろ。
仲がいいねえなんてベリーママは微笑ましく見ている。ママ止めてあげなよ。


「ココとノエルもこれくらい仲良くなってくれると有難いんだけどねぇ」
「ホントだよねぇ、完全に矢印一方通行。昔は発音下手くそで“ぶっしゅどのえー”って言ってて可愛かったのに」
「人の恥ずかしいエピソードを話すな。だが断る」


まだ発音が上手く出来なかった頃なんだよ。腐ってもこいつと10年以上の付き合いになるとか反吐が出そう。


「ビターよりはノエルの方がマシでしょ。……遅くなったけどおかえり、ココ」
「ココ殿に兄者!おかえりなさいであります」
「あ、ありがとう。2人もお使いお疲れ様」
「えー2人ともずるーい。俺もココに“お疲れ様”ってハート付けてやって欲し」
「絶対に嫌。誰がやるか」


フラれちゃったーってノエルはまたヘラヘラ笑う。またやってるとシフォンは息を吐き買い物の荷物を片付け、ロンは「今日も兄者はめげないであります」と目をキラキラさせてノエルを憧れの眼差しで見ている。ちょっと意味が分からない。

パン!と乾いた音がリビングに響く。ベリーママが手を叩いた音だ。


「はいはいアンタたち、早いとこみんな手を洗ってくるんだよ。シャーベットが溶けちまうじゃないか」
「あっそうだ!おやつ!」
「ほーひゃほー。ほへひゃひぇんぶひゃべひゃうひょ」
「ノエル何言ってるかわかんない」
「“そーだよー。俺が全部食べちゃうよ”……ママー!こいつフライングで食べてるけどいいの!?」
「ノエルは仕事終わりだからねぇ。いいじゃないのさ」
「良くない!アローラの掟はみんなで喜びを分かち合うべしでしょ!」
「お疲れなのですか兄者!?自分肩を揉むであります!」
「いいからロンも早く手洗ってきなよ」


あ、今更だけどこのメンツが今の私の家族たちです。かっこ約一名いや一匹の黒キツネを除くかっことじ。


「俺だけ扱い酷くない?」
「……どんまい、ノエル」


出会い編なんてものは無い。

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