捧げ物 | ナノ

H.A.T!

それは、ある夜かかってきた一本の電話から始まった。


《やっほーユイ!この前はありがとうね!》
「フユカ!?」


とある街で一泊中、ジョーイさんに「お電話が入ってますよ」と伝えられモニターを開くと、こちらに嬉しそうに手を振るこの世界での数少ない友達の一人、フユカが映りこんだ。後ろではフユカの仲間達が人型を取り各々自由に時間を過ごしている。横から《こんばんは、ユイちゃん》とアレックスさんも顔を出したので、どうやらプラターヌ研究所から連絡をとっているようだ。

何故ここに泊まってると分かったのか疑問を抱いたけどそういえば、この前カロスに遊びに行った時にこれからの予定を大まかに共有し合ったのを思い出した。


《突然連絡してごめんね。ねえ、ユイはアローラ地方って知ってる?》
「あろーら?」
《南にある島国でね。とても自然豊かで有名な観光地なんだ》


聞き慣れない地名に首を傾げるがアレックスさんが大まかに教えてくれた。南、島国、観光地。そのキーワードを聞いて思い浮かぶのは元の世界に存在したハワイ諸島。ああそういえば、なんだかんだ一度も行けてなかったなぁと少し寂しい気持ちを抱きつつ、フユカ達の話の続きを聞いた。

どうやらプラターヌ博士の知人がアローラ地方の旅行券を当てたけれども、生憎その日は予定が既に入っていたらしい。でも使わないのは勿体ないし、折角ならとプラターヌ博士に譲られたんだとか。
ただプラターヌ博士も研究が忙しいので旅行をしている余裕はなく、アレックスさんもその手伝いに追われる身。どうしようか悩んでいたところに丁度研究所に来ていたフユカに白羽の矢が立ったのだ。


《この前のお礼も兼ねて、どうかな?と思って。行く?》
「行く行くー!もっちろん!」
《決まり!ちなみにレイナにも声かけて、即答で行くって返事だった!》


ただナオトは今回予定が合わなかったみたい。

その言葉を聞いて「そっかぁ……」と残念な気持ちを吐露した。でも同じシンオウを旅してるならまたどこかで出会えるはずだし、機会はいくらでもある。そう気持ちを切り替えることにした。


《詳しい日程についてはまた後日知らせるよ。皆で楽しんでおいで》
《それじゃユイ、またね!》
「2人ともありがとう!それじゃあ!」


プツンと電源を落とした後、傍で紅茶を用意してくれていた緋翠にいてもたってもいられず嬉しい気持ちをぶつけた。一瞬驚いた様子だったが、私の嬉しい気持ちをキャッチしたのか穏やかに微笑んでくれた。


「アローラってどんなところなんだろうね?」
「4つの島から構成される地方だと聞いたことがあります。恐らく、一番観光地として有名なメレメレ島に行くのではないでしょうか」
「めれめれ……?アローラ地方に行く前に少し調べておこうかな」
「私で良ければお手伝い致しますよ、マスター」


そう申し出る緋翠にありがとうと伝え、パソコンで簡単に検索してみる。すると、あるサイトにとても興味深い情報があるのを発見した。


(これ……!絶対みんなで行きたい!)
「どうされました?……わぁ、これはいい思い出になりそうですね」
「うん!そうだね!」


まだ行ったことのない新たな世界に胸を躍らせ、当日を楽しみに待った。


そして一週間ほど経った日、私はアローラ地方行きの飛行機に乗るため、一時的にカロス地方のミアレ空港にいた。そこでフユカ達と待ち合わせ、みんなでアローラに向かう算段である。


「まさか交通費まで負担してくれるなんて思ってもみなかったなぁ、プラターヌ博士に感謝しなきゃ」
「研究者って儲かるんだねぇ……その分仕事が大変なんだろうけど」
「レイナ〜!ユイ〜!ミックスオレ買ってきたよ!」


フユカと共通の友達でもあるレイナとは同じシンオウを旅していることもあり、連絡を取りあって一緒にカロスまで来た。気さくな性格のレイナは前に電話した時に呼び捨てで呼んで欲しいなと言われ、そこから呼び捨てで呼ぶようになった。

前にナオトと三人でカロスに来たことがつい昨日のよう。元気にミックスオレを抱えて走ってくる女の子はパチリスの笑理ちゃん、その隣にはランクルスの來夢ちゃんがお姉さんのようにそばに居る。あの二人は本当に仲がいいんだなあとほっこりする。
笑理ちゃんにありがとうと伝えたらあどけない笑顔でえへへと笑ってくれた。私も可愛い女の子の仲間が欲しい!

みんな何だかんだ会うことが多いからか比較的打ち解けていて、紅眞は焔君と勇人君の大食いコンビと、緋翠と碧雅は誠士君とそれぞれの時間を過ごしている。後者はともかく、前者はやんちゃっ子が多いから何かやらかさないか心配だよ、私は。ミックスオレを飲みそんなことを思いながら待ち合わせまでの時間を潰していた。


「そろそろフユカ達がこっちに来る時間だから、ゲートに向かおうか」
「そうだね。みんなー、行くよー」
「僕はここにいる。荷物番もいるでしょ」
「ただ動きたくないだけな気もするけどな、碧雅」
「いや、碧雅の言う事にも一理ある。ただでさえ人が多い中だ、全員で動くと逸れる可能性が高い。私達はここで場所を取り待っているから、レイナ達が迎えに行き、再びここに戻ってくるのはどうだろうか」
「うーん、じゃあ誠士達にはここで待ってもらって、私とユイで向かおうか」


そして空港のゲートの前まで来ると、たくさんの人混みに紛れ、見慣れた黒髪が見えた。


「あ、レイナー!ユイー!」
「フユカ!」
「元気そうだね!プラターヌ博士とアレックスさんも、こんにちは!」
「やあ、2人とも!今回はわざわざすまなかったね」


おそらく見送りに来てくれたであろうプラターヌ博士とアレックスさん。ちなみに水恋さんも一緒に来ている。けれど水恋さんだけは博士達とは違い、私たち(というかフユカ)を見て心配そうな顔をしていた。


「……やっっっぱり女の子だけで行くなんて心配だわ……!ねえフユカ、まだ手持ちの枠は空いてたわよね?私がそこに入って一緒について行ってもいいかしら!?」
「水恋、それはダメだと何度も言っただろう」
「大丈夫だよ水姉さん。今回は緑炎達だけじゃなくて、友達も一緒なんだから」


お土産いっぱい買ってくるからさ、ね?

眉を下げ宥めるようにフユカが伝えると、水恋さんは物凄く悩んでいたけれど、「……分かったわ。でも、本当に気をつけるのよ?」と一応許してくれたようだ。


「水恋じゃないけれど、道中は気をつけて。いい思い出になるといいね」
「アレックスさんもありがとう!」
「それじゃあーー」


いってきまーす!!


三人で手を振り、荷物番をしていた碧雅たちと合流しアローラ行きの飛行機に乗り込んだ。さぁ、本番はここからだ!




無事にアローラ地方に到着した私たち。今いるのはメレメレ島のハウオリシティ。緋翠の予想通り、メレメレ島で過ごすことになりそうだ。
いやーそれにしても、


「青い空!」
「白い雲!」
「綺麗な海!」

「「「アローラ、サイコー!」」」


全員が全員初めて来た場所だからか、テンションが異様に高い。ちなみにレイナ、フユカ、私の順番で叫びました。


「やけに元気だな、アイツら」
「はぁ、暑い……」
「無理はしないでくださいね、碧雅」
「ああ、姫があんなに楽しそうに……!」
「お、おおお……!おいおいおい見てみろよ焔、紅眞!」
「どうしたんだよ勇人?……うお、なんだこの黒いの?」
『ポケモンかなぁ?つついてみようよ』
「わぁーぷにぷにしてるね!って、なんか出た!?」
「來夢、あぶな……ー」
「笑理、何……きゃあ!」
「時すでに遅し、か……」
「あれは、ナマコブシですわね……」
「ううう、レイナ〜!」


私たちがアローラの景色を堪能していると、突然來夢ちゃんがレイナに抱き着いてきた。その目には涙を浮かべていて……って何事!?


「何か、白い変な物が当たってっ……」
「“ナマコブシ なまこポケモン ビーチなど浅い海に棲む。身体から体内器官をだして餌を捕ったり敵と戦う。”……へぇ、こんなポケモンもいるんだ」
「感心してる場合じゃないからユイ。なるほどね、ナマコブシに驚いちゃったわけか」
『焔、勇人、紅眞、悠冬!來夢に謝って!』
「わ、悪かったよ!だから原型で電気を出すなって!」
「おいお前ら、うるせぇぞ!」


痺れを切らしたらしい緑炎さんが怒鳴った。まさに鶴の一声。騒いでいたみんなが静かになった。ため息を一つ吐いた緑炎さんが言葉を続ける。


「まずフユカ、レイナ、ユイ。初めての場所ではしゃぐ気持ちもわかるがお前らはトレーナーだ。できる限りちゃんと仲間の動向を把握しておけ」

「次に焔、勇人、紅眞、悠冬。好奇心旺盛なのは良いが周りを巻き込むな。もしかしたら來夢じゃなく、全く関係の無い奴まで巻き込んでたかもしれねぇぞ。あと來夢にはちゃんと謝っておけ」

「最後に碧雅。空気を凍らせて自分の周りだけ涼しくするのは結構だが他人のフリをして俺たちから離れるな。できれば俺だって離れたいが、誰がコイツらを止められるってんだ!」
「まあ頑張ってよオカン」
「誰がオカンだ!」


矢継ぎ早に一通りお説教を受けた私たち。紅眞たちは來夢ちゃんに謝って、私たちも深呼吸して一先ず落ち着いた。これだけ騒いでいたのに、周りの人たちはあまり気にしていないようだったので幸いだった。ここののどかだけど明るい雰囲気が、普段より私たちを元気にさせたのかな。


「あれ、蒼真は?」


ふと、フユカのその一言で蒼真君がいないことに気づいた。周りを見渡すがそれらしき姿は見えない。まさか迷子!?


「!姫、見つけました。あそこで広告を見ているようです」
「ナイス白刃!蒼真ー!」
「……フユカ」


相変わらずのポーカーフェイス蒼真君。何があったか聞くフユカに対し見ていた広告を指さした。


「“アローラサマーフェスティバル”?」
「あ!」
「ユイ知ってるの?」
「知ってるも何も、アローラに行く前に軽く調べた時にこれがあるのを知って、それでみんなで行けたらなぁって……」


そう、アローラ地方についてパソコンで調べた時にあるHPでこれが開催されることを知ったのだ。年に一度のお祭りで、アローラの夏の名物。夜には花火大会も行うらしい。『ねぇねぇ!これ浴衣のレンタルもやってるみたいだよ!』と笑理ちゃんがレイナの肩に乗り、その箇所を指差す。ほんとだ、ショッピングモールで浴衣もレンタルできちゃうんだ。


(みんなの浴衣姿……見てみたい、かも)


どうやら思ってたことは一緒みたいで、レイナ達と女の子ポケ組は満場一致の意見だった。けど男性陣はあまり気乗りしないみたい。後で着たくなっても知らないもんねー!
祭りは明日の夜開催予定。なので今日はホテルでチェックインを済ませた後、アローラの綺麗なビーチでハワイ気分を堪能したのだった。




そして次の日、時刻は夕方になった頃。この日の昼間はリリィタウンに行き、マハロ山道の先にあるこの島の守り神?らしいポケモンを祀っている遺跡を見学させてもらった。レイナやフユカはこういった歴史を感じさせる物が好きみたいで、とても興味深そうにしていたのを覚えている。私はどちらかというとこの地方のポケモンに興味があって、モクローやニャビーといったこの地方の御三家のポケモンにメロメロだった。

そして男性陣は祭りの広場で待っててもらって、私たちはショッピングモールへ。店内のある一角が丸々浴衣のレンタルスペースになっていて、色とりどりの綺麗な浴衣が並んでいる。

ど、どれにしよう……。ちなみに浴衣を着る時は店員さんが手伝ってくれるらしいんだけど、私たちには雅ちゃんがいるから今回はお世話になることは無さそうだ。


「皆さん、選び終わったら教えてくださいね。僭越ながら手伝わせていただきますわ」
「どれもこれも綺麗だから迷っちゃうなぁ……これはトサキント柄?これは……ラランテス柄」
「人気なのはハクリュー柄、キュウコン柄とかでしょうか」


なるほど、この世界ならではの柄だね。よく見ると、ポケモンのモチーフの柄だけではなく、私のいた世界でもあったような花柄もある。無難な方にしようかと一瞬考えたけど、せっかくの機会だからポケモン柄にチャレンジしてみたいよね。ただポケモン柄は種類がほんとに多くて、私もポケモンのことを完全に覚えきれてないから分からないものが多い……!みんながそれぞれ好みの物を選び始めた中、私はまだあたふたしていた。


(あ、これは見たことあるかも)


目に入った浴衣を手に取りタグを見ると、ケイコウオ柄と書いてあった。確か“海のアゲハント”って呼ばれてるんだっけ。色合いも良いし、これにしようかな。


「雅ちゃーん!決まった!」
「皆決まったね!楽しみー!」
「あれ來夢と笑理、同じ浴衣じゃない?」
「うん、お揃いにしようと思って」
「プラスルとマイナンかー、双子コーデだね!後で写真撮らせて!」
「ふふ、皆さんの変身が楽しみですわね」
「あ、勿論レイナ達もバッチリ撮るからね!」
「「え゛」」


思えばこんなに沢山の友達に囲まれて、こんなに楽しい場所で、こんなに素敵な思い出を作ることができるだなんて前までは想像できなかったな。




『遅いなぁ、ユイ達』
「女性は支度に時間がかかると言うからな」
「おい白刃、何やってんだ?」
「姫にカメラを任されたのだ。姫の美しい浴衣姿を、このカメラのフィルム全てに収めてみせる……!」
「んな事したらフユカに怒られるぞお前」
「一時的に荷物を持って欲しかっただけでしょ」
「だぁぁあ!俺は腹が減った!屋台の飯が食いてぇ!」
「……勇人は完全に色気より食い気だな」
「僕も、そろそろお腹が……」
「そういえば、ポケマメなるものを買ってみました。良かったらいかがでしょうか、皆様」
「……美味しそう……」
『僕この水色のやつ!いっただきまーす!』
「ほぉ、アローラにはこういう食べ物があるんだな」
「おいひー」
「うめぇ!」
「そこの大食いコンビ、量は加減してよね。來夢達がまだ食べてないから少し取っておいて……」
「「あ」」
「……すまない。2人には私から言っておく」


……あ、みんないた。何やらまた騒いでるけど大丈夫かな?


「皆さん、お待たせしました」
『わぁ〜、みんな綺麗だね!』


悠冬君の素直な感想が今はチクチクくる。は、恥ずかしい。


「浴衣は雅が、髪型は笑理ちゃんがセットしてくれたんだよね」
「うん、とっても楽しかった!」
「ありがとうね、笑理」
「來夢に笑理、2人とも同じ浴衣なんだね。お揃いかぁ〜」
「女ってやつはなんでこんなのが好きなんだ?俺には理解できねぇ」

『フユカと雅も、いつもよりキラキラしてて綺麗だね!』
「ありがとう悠冬。たまにはこういうのも悪くないですわね」
「……フユカは、ラプラス……?」
「お、蒼真当たり!ところで白刃、なんで手で顔を覆ってるの?」
「……姫の浴衣姿があまりに眩しく、私には直視できません……!」
「……と、とりあえずカメラ貸して!レイナ達の写真撮りたいから!後で皆も撮るよー!」

「おー!おおー!!ユイも可愛いじゃん!」
「ひい紅眞」
「なんで逃げるんだよ」
「マスター、お似合いですよ?」


いやいやいや、いや!いざ着てみたけど、やっぱ似合ってないって!レイナやフユカは元々綺麗な顔してるし、來夢ちゃん達も可愛いからともかく、私はアカンって。
レイナはイッシュ地方にいるというもふもふしたエルフーンっていうポケモンの柄で、フユカはラプラス柄。恐らく水恋さんの影響が大きいんだろうなと内心思ってる。來夢ちゃんと笑理ちゃんはさっきも言ってた通りプラスルとマイナン。髪型もお揃いにしてるのが尚のこと二人の仲の良さを引き立てている。
雅ちゃんは元々着物を着ているけど、今日はいつもと違うビビヨンの羽の模様の柄を選んだみたい。なんだっけ、はなぞのの模様だったかな。

まぁとにかく、そんな綺麗可愛い子ちゃん達の中に私みたいな普通の子が混ざるのはねぇ。


「……。」
「…………。」


追いかけてくる紅眞達から逃げているところで、面白いのが見れた。わー誠士君と緑炎さん、2人を見て固まってるよ。誠士君に至っては顔真っ赤だし、うんうんでもその気持ちわかるよ。固まってるふたりを見つけたレイナ達が駆け寄ってきた。


「あ、誠士!どう?変かな?」
「……あ、あぁ……に、似合ってると……お、もう」
「だんだん声がちっちゃくなってきてるんだけど?」
「緑炎もここにいたんだ!水姉さんが頭によぎって、ラプラスにしてみたんだよね」
「そうか。まあ、いいんじゃねぇのか……」
「じゃあこっちを見て言いなよ」


ヤバいどうしよう、すごく楽しい。ニマニマが止まらない。あ、白刃君が緑炎さんに対抗意識抱いてる。


「なに気持ち悪い顔してるの」
「…………う、」


このまま野次馬を続けようと思ったら不意に声をかけられた。しかも一番見られたくなかった奴ナンバーワン!一人姿が見えないと思ったらジェラートを買いに行ってたのね、しかもトリプル。けどラッキーだったかも、アイスに夢中なら適当なこと言ってずらかれる。


「あ!そろそろ花火始まる頃だろうし、私場所取りに行ってくるね」
「ユイさ、」


くそぅなんで話しかけてくるんだこんな時に限って。


「今日メイクしてるんだね」
「何故バレた」


そう、折角浴衣を着るんだしと軽くだけどメイクをみんなでしてみたのだ。と言っても本当に軽くなんだけどね。でもいつもより目元はパッチリしてるんじゃないかな。


「ふーん…………そっか」
「何その間」


まあいつもと違って毒舌を吐かれることが無かっただけいいか!
勇人君達が屋台のご飯を求めにフラフラさまよい始めたので、慌ててレイナ達が私を呼ぶ声が聞こえる。あ、行かないと。アイスを食べて機嫌も悪くないので良いだろうと判断した私は碧雅の腕を引っ張りみんなの方に向かっていった。


大きな音をたてて夜空に咲く大輪の花。空気が綺麗だからかアローラの空は星が良く見えて、より一層花火が輝いている。みんな花火を夢中で見ていて、ああここに来れてよかったと心から思う。


「たーまやー!」
「レイナ、なにそれ?」
「花火の掛け声だよ。ちょっと雰囲気あるでしょ」
「たーまやー!……うん、楽しい!」


モンスターボール、ピカチュウ、ニャース……色んな形の花火が上がっている。


「パチリスみーつけた!」
「……ニャスパー、あった……」
『アマルスもある!』
「やっぱり可愛い系のポケモンの花火が多いんだね」


この旅行も今日でおしまい。明日は帰るだけで、レイナとフユカ達ともまたお別れだ。物足りないし寂しくもあるけど、たまに会えるからこそこういう日の思い出はより残ると思うから。ふと両腕に違和感。見ると二人がそれぞれ私の片手を腕で組んでいる。


「また行こうね、ユイ!」
「今度はナオトとアレックスさんや皆で!」
「……うん!」


そして私たちは手を繋ぎながら空を見上げ、こう叫ぶのだ。


「「「またね、アローラ!」」」

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