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「みんな、今日はどうする?」


PCで一泊した次の日の朝。私は今日の予定を立てるため仲間にそれぞれの要望を募った。昨日は甘い香りに誘われるままポフィン作りの体験会に参加で終わってしまったので、今日はとことんヨスガシティを堪能するつもりだ。
ヨスガシティはナタネさんの言う通り楽しそうな場所が目白押し。一人では決めかねるのでみんなの行きたいところを聞いてスケジュールを立てたいところ。紅眞は昨日のポフィン教室で満足しているようで、どこでも構わないという回答だった。ちなみにジム戦は観光が終わった後にと昨日決めてある。ソファに腰掛けテレビを見ていた璃珀も続けて答えた。


「俺も何処でもいいよ。ヨスガシティには以前来たことがあるからね」
「そうなの?」
「これでも色んな所を回って来たからね」


聞けば璃珀はシンオウは勿論他の地方も巡って旅をしてきたんだとか。移動は基本人型で、水辺での移動も原型に戻ればいいだけだから特に苦労は無かったらしい。だとしても他の地方に移動するのは相当な距離を泳いだんじゃないかな……。


「碧雅と緋翠はどこか行きたいところある?」
「……特には。ここの本が気になるから僕は残りたい」


そう言う碧雅の視線は今読んでいる本に釘付けだ。昨日も読んでたから余程続きが気になるんだろうな。タイトルを見る限り読んでいる本は小説みたいでまだまだ先が長そうだ。というわけで残るは緋翠だけなんだけど。
朝食の後片付けを手伝ってる緋翠に声をかける。


「私、ですか?」


若干遠慮しがちだったけれど、いつも周りに合わせてくれてるからたまにはわがままを言っていいんだよと伝えると少し考える素振りを見せた後「それでは、ふれあい広場に行ってみたいです」とはにかんだ。
ふれあい広場はポケモンと一緒に過ごせる公園のような場所で、美しい景色も堪能できるスポットなんだとか。


「マスターもここ最近、色々と大変なことがあってお疲れでしょうから、少しでも疲れが取れたらと思いまして」
「それ結局自分の行きたいところじゃないような……嬉しいけど」
「てことは、昼はふれあい広場でピクニックだな!なら簡単に軽食作るわ」
「僕は残ってる」
「外に出ても本は読めるよ碧雅くん」


何はともあれ予定は決まった。今日はふれあい広場でピクニックだ!




「はい、それでは!ふれあい広場での時間を楽しくお過ごし下さいね、いってらっしゃーい!」


受付のお姉さんに見送られ、璃珀を除いたみんなが原型に戻り一緒に広場を見て回る。歩き回る中たくさんの人たちとすれ違い、どの人たちも自分のボケモンたちと楽しそうに遊んでいた。女の子とミミロルが互いに飛び跳ねて遊んでいたり、パチリスの静電気で男の子の髪が跳ね上がる光景を見て笑ったり。見ているこっちも楽しくなってくる。
みんなも例外ではなく楽しんでいるようだ。


『なぁ碧雅見てみろよ!あのヘンテコな建物なんだ?』
『遺跡みたいだよ。何のために建てられたかは知らないけど……って引っ張らないでくれる』
『別にいいじゃん!面白い発見があるかもだぜ?』
『僕は興味無いんだけど』
『あちこちに点在していますね。何か意味があるんでしょうか』
「みんなー。動き回るのはいいけど迷子にならないでねー」
『ユイこそキョロキョロしないでね』


噴水の近くまでやって来ると丁度広めのスペースがあり、そこでご飯を食べることにした。レジャーシートを広げていると璃珀が手伝うよと反対側を持ち広げてくれた。いつもこういう事は緋翠が率先して来てくれるんだけど、今日は珍しくはしゃいでいたから一人でやろうと思ってたのに……ほんとに周りをよく見てるんだな。お礼を伝えランチの準備が終わり、みんなを呼ぼうとする前に聞きたいことがあると言われた。
シートを敷いた芝生に座ると隣に足を広げ腰掛けた。そして唐突に話しかけられる。


「ご主人は、この世界に来てどう思ってるんだい」


周りの楽しんでる人たちを見つめながらそう言う璃珀。何を聞きたいんだろう。意図がわからず言葉を濁していると「あの時の言葉、聞こえてしまったんだろう」と少し眉を下げていた。
それが指すことは恐らく、昨日のアカギの最後の言葉だろう。私にも聞こえたくらいだから、みんなも聞こえていたと思っていたけどそれは杞憂ではなかったようだ。頷くとやっぱりねと乾いた笑いを浮かべた。


「なんで分かったの?私にも聞こえてたって」
「だってご主人、あからさまに空元気だったから。勿論みんな気づいてたよ」
「嘘……」


私そんなに分かりやすかったのか。それじゃあ気を遣わせちゃったんだなあ。そこでもう一度、先程聞かれたことを再度聞かれる。それに対して今度は自分なりの言葉で答えようと思った。拙いボキャブラリーだけどえっとね、と言葉を少しづつ紡ぐ。


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