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──ひとりか?


だれ?


──う……、あ……ま………、よ……。


ねえ、だぁれ?


──……に………。


……わからないよ。




◇◆◇




「ん……」


まず目に入ったのは照明の白い光。起き上がればシンプルながら清潔感が感じられる部屋のベッドで寝ていたことがわかった。起き上がると一瞬頭痛が出たが、すぐに治まった。

……変な夢を見た。何も見えない真っ白な空間で、声が聞こえただけの夢。徐々に記憶から薄れてしまうはずなのに、何故か胸がざわついた。


「あ!目が覚めたんだね!」


数回のノックの後にドアが開き、オレンジの帽子をかぶった男の子が入ってきた。おぼんを持っており、小さなお鍋から湯気が出ている。


「良かった、ちょうどできたところだったんだよ。ご飯食べれる?」
「は、はい」
「今博士呼んでくるから、それまでこれ食べてなよ!あ、ボクはコウキって言うんだ、君の名前教えてくれる?」
「ユイ、です」
「ユイか!よろしくね!遠慮しないで沢山食べててねー!」
「え、あのー!?……行っちゃった」


色々と聞きたかったのに、コウキと名乗った男の子は食事を置いてあっという間に出てしまった。あの帽子にマフラー、主人公がそんな特徴をしていたっけとふと思う。
仕方ないと目の前に置かれたお鍋の蓋を開けてみると、湯気とともに美味しそうな匂いが漂った。卵がゆだ。この世界に来てから何も食べてなかったので、匂いにつられてお腹が鳴った。いただきますと手を合わせ、一口。


「お、おいしー!」


あまりの美味しさに思わず笑顔になってしまった。……私、どうしてここのベッドで寝てたんだっけ。お粥を食べるスピードを緩めないまま頭これまでの状況を整理する。
昨日は普通に夜寝て、変な夢を見て、朝起きたら変な場所にいて、そこでグレイシア君に会って……


「グレイシア君どこ!?」


そうだ、そしてギンガ団に襲われて、何故か意識を失ってここにいた。私があの時持ってたボールは今手元にない。呑気にお粥を食べてる場合じゃない。


「僕ならここだけど」
「…………はい?」


突如ドアにもたれ掛かるように現れた青色の髪とマフラーが特徴的な男の子。うわ、美少年……!歳おなじくらいかな?
いやそんな事考えてる場合ではなくて。


「どちら様でしょうか!?」
「君が探してるグレイシアだって言ってるでしょ。もしかして擬人化まで知らないの?」
「ぎ、じんか?」


何それ。呆れたように息を一つ吐いた男の子が突如光だし、その光は男の子を包み込んでしまった。何事?!光がおさまるとそこに男の子の姿はなく、代わりにいたのは、


『ほら、これでわかったろ』
「グレイシア、君……?えぇ!?どういうこと!?」
『ちょっと静かにしな』


尻尾で頭を叩かれた。地味に痛い。要はこれ、さっきの男の子の正体はグレイシア君ってことだよね?これが擬人化?


『僕達は一時的に人間の姿になることが出来るんだよ。それを世間では擬人化って呼ばれてるの、分かった?』
「は、はい……たぶん。って、グレイシア君、あの後ケガとかない!?大丈夫?」
『どこかの誰かさんと違って、僕はこんな時間まで眠るほどやられてないし弱くないよ』


そう言われ外を見れば空は夕焼け色に染まっていた。
私が来た頃はまだ青空だったから、結構な時間が経ったのか。グレイシア君には特に怪我も見られない。良かった〜。
何笑ってるの気持ち悪いという声が聞こえたけど聞かなかったことにするよ。


「ところでグレイシア君、私たち今どうなってるの?」


ていうかここはどこなの。


『ああ、それは……』
「そこから先はわしが説明しよう」


グレイシア君が説明しようとした瞬間、威厳のあるおじいさんの声がした。白衣を着た一見すると厳しそうなおじいさん。隣にはひとっ走りしてきたらしい疲れた様子のコウキ君がいた。


「自己紹介からしよう、わしはナナカマドだ」


さっきから思ってたんだけど、なんでこの世界の人たちは突然現れるの?


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