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「ユイちゃん、次のジムはどこに行くか決めたの?」
「いえ、特には……」
「それならヨスガシティをオススメするわ!ポケモンコンテストもあるし、楽しいところが沢山あるから」


ジムからの帰り際にナタネさんに声をかけられ、次の目的地について尋ねられた。特に考えていなかったのでありのまま答えると、冒頭のようにヨスガシティという街を勧められた。
コンテストといえば、ヒカリちゃんがそれを極めたいと言っていたっけ。元気にしてるかなあ。
サイクリングロードを使えばそこまで行くのも苦ではないと聞いた。ここまでオススメされてるし、折角なら行ってみることにしよう。

PCで仲間を回復させ、次の目的地の話をする。


「ーーってことなんだけど、みんなはどうかな?」
『私は構いませんよ』
『おう、俺もー!』


うん、ここまでは大方予想通り。この二人はあんまり反対することは無いからね。碧雅も反対してないみたいだけど、呆れた視線を私に向けている。


『……で、肝心の自転車は?』
「はっ、そうでした!」


サイクリングロードでは自分の自転車が必要らしくて、PCに帰る前に自転車屋さんに寄ったところ生憎休みだった。なので、必然的に行けるのは明日以降になる。
忘れてたと伝えるとやっぱりと言わんばかりにため息を吐かれた。


『……まあ、いいか……』
「何か言った?」
『何も。とりあえず目的は達成したんだし、長居する必要は無いでしょ。明日にはここを出よう』


普段より急かしてくるなあ。もしかして、ヨスガシティに早く行きたかったりするのかな。ヨスガシティはコトブキシティと同じくらいシンオウの中では発展した街らしいから、私もとても楽しみではある。


(はっ、もしかして)


さては碧雅、コトブキシティの時みたいに美味しいアイス屋さんがないか気になってるんだね?なーんだそういうことか!確かに次の街は都会みたいだしね、きっと美味しいアイスは沢山あると思うよ!


(なんかユイの顔がすごくムカつく)


私が早合点をして碧雅を温かい目で見ていて碧雅がそれに若干苛立ってる中、紅眞が何気なくそういえばと言葉を零した。


『なんだっけ、あの、ハムさんってオッサンだったか?』
「もしかしなくてもハンサムさん?」
『おーそれ!その人が言ってたじゃん、ここにギンガ団のアジトっぽい建物があるって!』
「確かに、チラッと言ってたような気が……」


谷間の発電所で遭遇したギンガ団。そのうちの幹部の一人、マーズと名乗った赤い髪の女の人。あの冷たい視線とブニャットの強さは今でも思い出すとよく勝てたなと我ながら思う。
ハンサムさんも私たちが戦って勝ったことにかなり驚いていた様子だったし、アジトの情報を教えてくれたのも興奮してつい口から出てしまったという感じだった。

紅眞はワカシャモに進化しても変わらない真っ直ぐな意志を抱き、私に向けてくる。そこまで長くいるわけではないけど、旅を共にしてきたからか次に彼が言おうとしていることはなんとなく予測ができた。


『もしまたアイツらがなにかしてるんなら、俺たちでー』
『別に僕らが行かなくても良いと思う』


紅眞の言葉を遮るような形で碧雅が止めた。猫のように前脚を揃えて座り紅眞を見つめる。その目はあくまで冷静で、悪くいえば冷淡にも捉えられそうだった。


『僕達の目的はあくまで“旅”で、ジムを回ってるのもユイの知識不足を補うためのはずだけど。いつからギンガ団に対抗することが当たり前になったの』


正義感の強い紅眞はそれに対して眉を顰めた。


『なんだよ、悪いことしてるヤツらがいたら放っておけないだろ』
『だからといって毎回僕らが関わってたらキリがない。こういう時のために人間の公共機関があるんだから、それを使えばいい話でしょ』


確かこの世界では警察としてジュンサーさんなる人達が治安を守るため働いていると聞いた。それに、今だってハンサムさん……いや、国際警察が動いている。要はそれくらい危険な組織なのだ。
逆に言えば今無事でいる私たちはある意味運が良いのだろう。

ところが納得のいってない紅眞は更に食ってかかる。


『そんなのアテになるかよ。俺たちで動いた方が絶対早いって!』
『かもしれないね。けれど無策で挑んだところで僕達が勝てる勝算は低い。向こうは目的を持って動いてる組織なんだ。戦力も量、質共に明らかに向こうの方が上。目をつけられる前に早いとこ、ここを出て行ったほうがいいと思うけど』


どちらの言い分も、その理由も理解出来る。紅眞もそれは分かってるみたいだけど、自分でなんとかしたい気持ちが強いのだろう。でも気持ちだけでは論破はできない。碧雅の理論建てた物言いにタジタジで、反論が難しくなっていた。


『でも……でもさ!』
『……熱くなるのは構わない。けれど発電所の時だって、お前が進化しなかったらどうなってたと思う?勇気と無謀は違うんだ。……身の程を弁えなよ』
『っお前!』
「ス、ストップ!2人ともストーップ!」


一触即発。慌てて私が2人の間に入る。このままだと技を出してのバトルに発展しそうだった。というか、2人がここまでの言い合いをしたことなんて初めてで、私もどうしたらいいか分からない。
原型だとそのまま勢いで技を出しかねないからか、紅眞が人型になった。そっちはそっちで殴りかかってきそうで怖いんだけど!?


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