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あの後無事にハクタイの森を抜け、ハクタイシティに到着した私たち。なんだかんだ移動で一日を費やしてしまったので、今日はこのまま休むことになった。
のどかな雰囲気の街並みを歩くと、幸いなことにPCを直ぐに見つけることが出来た。部屋を確保し、ふかふかのベッドにそのままダイブする。ぼふんと音が鳴りベッドがきしんだ。


「疲れたー!」
『お疲れ様です、マスター。お茶でもお入れしましょうか?』
「うん、おねがーい」


そう伝えるとかしこまりました、と人型になり冷蔵庫に内蔵されてる麦茶を用意してくれた。氷も入れてあるので冷たくて美味しい。みんなの分も用意してくれてるその気遣いは流石である。

森を抜けた先で川で釣りをしていた釣り人さんに勝負を挑まれ、緋翠の初陣も兼ねてバトルを何戦か行った。疲れてるだろうし、ジョーイさんに回復をお願いしなきゃ。釣り人さんのポケモン、軒並みコイキングっていう赤い魚のポケモンだけで、技もはねてしか使ってこなかったのが印象的だったな……。


「一休みしたら、ハクタイシティを見て回ろうかな〜。みんなはどうする?」
「私はマスターにお供致します」
「俺も今日はついて行こっかな!ポケモンの像ってやつが気になるし」


ポケモンの像?この街のシンボルなのかな、後で聞いてみることにしよう。


「僕も行こうかな」
「な」
「ん」
「「だと……!」」


外が暑くて出たくないって言ってほとんど自宅(PC)警備員してる引きこもり碧雅が外に行くだと?思わず紅眞とシンクロしてしまったよ。


「2人して何?文句あるの」
「いやいや、そんな訳じゃないよ!寧ろ嬉しい!」
「兄ちゃ……げふん。碧雅が着いてくるのが珍しいからな!」
「……まあ、気分で」


そう言い窓の縁に腰掛け外を見つめる碧雅。なにか気になったことでもあったのかな。何はともあれ、一緒に来てくれるのは素直に嬉しい。


「わぁ、ということはみなさんと一緒に散歩ですね!楽しみです」


両手を合わせ花が綻ぶように笑う緋翠。話し方もそうなんだけど、この子はどこか育ちの良さを感じさせる雰囲気を醸し出す。とても元ギンガ団の手持ちだったとは思えない。
私も緋翠の言葉に賛同し、どう回ろうか紅眞も交えて話し合っていた。


「…………。」


一人外を見ていた碧雅が真意の読めない目で窓越しから私を見つめていたのを、私は知る由もなかった。




ハクタイシティでオススメの場所はどこか。回復のため仲間を預けた時にジョーイさんに聞いてみたところ、紅眞も言っていた町外れにあるポケモンの像がそれに当たるらしい。なんでも昔の人が造ったという伝説のポケモンの像なんだとか。もしかしたら、ディアルガ達に関係があるのかもしれない。まずはそこに行くことにしよう。
みんなの回復も終わったし、準備は万端だ。


(ええとここは……自転車屋さんか)


タウンマップを見ながら道を歩いていたけれど、どうやら反対の方向に向かっていたらしい。来た道をUターンして石像に向かう。『迷子か?』『ちゃんとしてね方向音痴』『迷われましたかマスター!』と次々に言われたので「大丈夫です!!」と言い張った。緋翠に至っては嬉しそうだったんだけど、何故。
タウンマップに意識が集中していたので、後ろから近づく足音に私は気づかなかった。


「うぉーい!どいたどいたどいたー!!」
「へ!?……ぎゃあ!」


どんっ!!


この世界に来てから何度頭をぶつけただろう。しかも今回は後ろから。奇襲と言っても差し支えない。というか、この賑やかな声は、


「ジュン君!」
「お?誰かと思えばユイじゃねーか!久しぶりだな!」


そこまで頭にダメージがあまり行ってないらしいやんちゃ少年、ジュン君と再会した。ヒカリちゃんとはお互い別れて旅をしているらしい。


「お前もポケモン像を見に来たのか?」
「うん。ジュン君も?」
「おう!なら一緒に行こーぜ!」


そう言い早足で進むジュン君。うん、少し落ち着こうかな?石像は逃げないからね?
落ち着くよう伝えても彼の足のスピードは減ることを知らず、諦めて小走りで進むと、四足歩行の獣みたいなシルエットが見えてきた。見上げるくらい距離が近づいてくると、その精巧な造りがよく分かる。躍動感溢れるその存在に感動していた。昔の人はどんな思いでこの像を造ったのだろう。
一番見たがっていた紅眞をボールから出して近くで見せてあげることにした。


「これが伝説のポケモンか〜。やっぱり強そうだな」
『うおー!すげー!』
「こんなポケモンが本当にいるのかな……」
「いるだろ!いや、ぜってーいるに決まってる!」


すると突然ジュン君が「あ!!」と大きな声で叫んだ。


「俺すごいこと閃いちゃった!」
「え、何?」
「最強のトレーナーになる簡単な方法だよ!いいか……」


得意気に人差し指をピンと立てるジュン君。どんな方法だろうと続きの言葉を待つ。


「自分の技は全部当てる!相手の技は全部かわす!」
「……ん?」
「そうすりゃ負けるわけない!無敵のトレーナーだぜ!」
「……アーソウダネ……」


なんと言えばいいか……できるようになるといいね、うん。


『それができたら苦労しないよ天パ』
「ん?なんか言ったか?」
「ううん何も!」


ジュン君がポケモンの言葉が聞こえなくて良かったとこの時ばかりは思った。


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