IB | ナノ

1/4

「いい雰囲気を壊すようで悪いけれど、俺もこの中に入っているのかな?」


あっ、金髪さんのこと忘れてた。流れでここまで来てもらってしまった。女の子はともかく、金髪さんは偶然居合わせただけで関係ないから困るよね。


「すみません!流れでつい!」
「いや、構わないよ。勝手に着いてきたのはこっちだし、予定もないからね。俺で良ければこの子の面倒を見ているけど」


女の子の頭を撫でながら申し出る。それは願ってもない事だ。一人で待つのは退屈だろうし、誰か見ててくれた方がこっちも安心する。あの子も金髪さんにいつの間にか懐いているし、私たちも仲間が十分いるわけではないので、ここは厚意に甘えさせてもらうことにしよう。


「ありがとうございます!えっと……」
「ああ、俺の名前は璃珀(りはく)っていうんだ。よろしく頼むよ」
「璃珀、さん、本当にありがとうございます。私はユイです」


璃珀さんに女の子の面倒を見てもらい、私たちは谷間の発電所に向かった。行く前にラルトス君の様子を見に行ったが、彼は眠っているようだった。

発電所の周りはその土地の特徴故か風が常に吹いている。そのため沢山の風車があった。入口の前にはギンガ団が一人立ち塞がっているのが見えた。よし、ここは正面突破だ。


「たのもー!」
「な、なんだ貴様は!」
「名乗る程の者ではありません!そこをどいてもらいます!」


ボールから碧雅を出してギンガ団の前に出た。ギンガ団はバネのようなしっぽが特徴的なポケモン、ニャルマーを繰り出す。


「碧雅、こおりのつぶて!」
「かわしてひっかく攻撃だ!」


先制攻撃のこおりのつぶてがニャルマーに襲いかかる。当たりどころが悪かったようでニャルマーはすぐに目を回し倒れてしまった。


「なんてことだ!子どもに負けてしまったよ……だからこんなポケモンじゃ勝てるわけないんだよ」
(……どうして)


勝てなかったことをポケモンのせいにしている。自分が悪いなんて微塵も感じてないんだ。握りしめた拳に力が入るのを感じた。


「だがな、中に入って発電所キーを使えばもう入って来れないだろうよ!なぜなら残りのキーはソノオタウンにいる仲間がもってるだけだからよ!」
「え、待っ」
「ハハハ!そういう意味では俺の勝ちだよー!」


ガチャリ


待って、が最後まで言えぬままギンガ団員はさっさと中に入ってしまった。慌ててドアを開けようとするけど鍵がしっかりかかっており、ドアは開かない。


「ちょっと!開けて!卑怯者ー!」


ドアを叩くが中からは何も反応が無い。でもギンガ団は気になることを言い残した。ソノオタウンにいる仲間ってもしかしたら


「紅眞、ソノオタウンにいたギンガ団と戦った時に何か変わったことはなかった?」


合流前に既に一戦交えていた紅眞に尋ねる。するとボールから人型で出てきて私に何かを差し出した。


「そういえば、これ落としてたぜ」
「……鍵」


もしかしたら予備の発電所キーかも。鍵穴に差し込んでみれば予感的中、ドアが開いた。


「何!?お前、鍵を持っているのか!?それでは鍵をかけた意味が無い、つまり俺の負けじゃないかよ……」
『元から勝負にも負けてるけどね』
「はっ!落ち込んでる暇はないよ、幹部様に連絡だ!」


そう言い残し早足で先へと進んで行った。幹部様、という言葉からさっきの団員よりも強い人が待ち構えているに違いない。ここからはより注意が必要だ。ごくりと唾を飲み、先へ進む。

奥に進みながら数人の団員を蹴散らし、発電所の最奥まで来た。そこにいたのは無理やり機械をいじらされている男性と、奥に佇む眼鏡をかけた怪しい雰囲気の小柄なおじいさん。そして、


「ーー……あなたね、侵入者って」


ふふ、と不敵に微笑む赤い髪の女性。他のギンガ団とは明らかにオーラが違う。前に会った水色の髪の男の人と同じような、危険な雰囲気。服装も下っ端のそれとは違っており、幹部はこの人だと直感した。


「へぇ、どんな子かと思ったら女の子だったのね。ウチの下っ端達はこんな子にやられちゃったのね」
「……あの、ここから出ていってくれませんか」
「それはできない相談ね。あたし達も仕事で来てるから」


でも、と高いヒールの音を鳴らしながら女性は提案する。その手にはモンスターボールを持っていた。


「あたしとバトルして、あたしが勝ったらあなたが出ていく。あなたが勝てばあたし達が出ていく。それでどうかしら?」


勿論、あなたが負けたらあなたのポケモンは置いていってもらうけど。

余裕の表情。自分が勝つと信じて疑ってない。ポケモンバトルでケリをつけようということか。
怖い、こわい。けど、大丈夫。私ひとりじゃない。仲間がいる。ふたりと一緒に、信じて戦うんだ。

女の子の顔を連想する。あの笑った顔をもう一度。


「……ええ、やりましょう」


声が震えないよう、自分に言い聞かせる。大丈夫、大丈夫だ。努めて冷静に、幹部の女性を睨んだ。


「ふふっ、いい顔。あたしはギンガ団幹部のマーズ。子どもだからって手加減しないわよ!」


prev / next

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -