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雲ひとつない青空。木々が生い茂る森。存在感が大きい一際大きな湖。そして草むらで寝ていた私。周りには誰もいないし何も無い。


(何、これ?私、どうしてこんなところにいるの)


どくどくと心臓が嫌な音を立てているのを感じながら、昨日の出来事を振り返る。……うん、普段と変わらない学校生活を送っていたはずだ。夢かと思い頬を抓ったり両手で叩いてみたりしたけれど、ヒリヒリじんじんとダメージが残っただけで何も変わらない。冷たい風が頬を撫でた。


(もしかして、このまま……)


最悪の事態を想像して、鼻の奥がツンとして目が潤むのを感じた。即我に返りいやいやと首を振る。


(まずは落ち着いて私、泣いたってどうしようもない)


自分を叱咤しながら、ひとまず落ち着こうと思い、先程から気になっていた湖に向かった。想定していたよりも歩いたので、思ったより遠い位置にあったらしい。


(……うわぁ……綺麗……)


水面に映る青空と木々の緑のコントラストがとても綺麗で、見事な水鏡だった。人気の無い静寂な空気も合わさり、とても神聖なオーラを感じさせる。

湖畔に近づくと、“何か”がいた。後ろ姿しか確認できないけど、その“何か”は猫みたいな四足歩行の動物のように見えた。けどトラやライオンまで大きくないし、何よりあんな綺麗な青色はしていない。神秘的な、綺麗な色。

先程の怖さは何処へやら、もうちょっと見てみたいと好奇心で1歩踏み出した時だった、


「!?……わっ」


青い動物の姿がいつの間にか消えていて、次の瞬間何かに押されて思い切り後ろに倒れ込んだ。芝生がクッションになってくれて助かった。


『僕の後ろに立つなんていい度胸してるね、人間』


押したのは先程の動物らしい。青い動物は、仰向けに倒れた私を前足で抑えながらこちらをじっと睨むように見つめていた。雪みたいな冷たい雰囲気を纏っていて、思わずその神秘さに息を飲んだ。可愛いと綺麗が合わさった子だなあ……。そんな感想を抱いてからふと思った。

…………?待って、私の耳が正しかったら、今…………、


「しゃ、べっ……た……?」


この動物、日本語話した!?え、超怖いんだけど、新種!?妖怪!?


『は?お前何言って……』
「また喋った!やっぱり君が喋ってるの?え、なんでなの!?」
『うるさい』


ぐえっ。

足で思い切り踏まれた。でも、やっぱりこの子が喋ってるんだ……。


『……ほんとに僕の言葉がわかるの?』
「はい、何故か、えっとその、ここ、どこ、ですか」
『少し落ち着きなよ』


呆れられた目線を向けられながら足をどけてくれた。湖の水で顔を洗って深呼吸をして……落ち着けた、と思う。


『とりあえず害はなさそうだね。……なんか馬鹿っぽいし』
「初対面から失礼じゃない妖怪さん」
『妖怪?僕はグレイシアだよ』
「グレイ、シア……」


どこかで聞いたことあるような、ないような。記憶のタンスを引っ張り出して思い出そうとするが、なかなか思い出せない。


「うーん……?」
『まさかポケモン知らないってわけじゃないよね』
「!ポケモン!!」


“ポケモン ”というキーワードで思い出した。友達にゲームで見せてもらった覚えがある。グレイシアもその友達が仲間に入れていたのを見たのだ。

ということは、ここは、ポケモンの……世界?

と、そこまで考えて我に返った。いやいやまさか、そんなはずない。現実的に考えてありえないでしょ。でも今目の前にいるグレイシアはどう見ても生きていて、本物だと感じられる。

仮に、本当に私がポケモンの世界にいるんだとしたら。一体どうやってここに来て、どうして私が来ることになったのか。わからないことだらけで眩暈が起きそうな錯覚を覚えた。


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