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(……あ、朝だ)


ムックルの鳴き声と、朝特有のひんやりとした寒さで目が覚めた。変な姿勢で寝てたせいで体がじんわりと地味に痛む。いつの間にか毛布がかけられていて、紅眞が中で眠っていた。ぽかぽかと温かい。碧雅も原型になって床で眠っていて、2人ともいつの間にか出てきてたのかとぼんやり認識した。
ボールに戻し、手ぐしで髪を整える。

治療室を確認すると、ライトは既に消えていた。ラルトスは助かったのか、それとも──


「あら、目が覚めたのね」


おはようございます、と挨拶をしてくれたジョーイさんの後ろでは、治療器具らしきものを持つラッキーがいた。私も挨拶を返し、眠ってしまったことに申し訳なさを感じつつもラルトスについて伺った。不安が顔に出ていたのか、安心させるように柔らかい表情でジョーイさんは伝えてくれた。


「大丈夫よ。治療は無事終わりました、今は別の部屋で休んでいるわ」
「!ありがとうございます……!」


助かったんだ。ああ、本当に良かった。
嬉しさと安堵で涙が出そうになるのをこらえ、お辞儀をしてお礼を伝えた。


「あなたもずっとここにいて疲れたでしょう?はい、これ」


そう言い渡してきたのはPCの宿泊部屋のカギだった。


「あなたが早くラルトスを運んだくれたおかげで、助かったのよ。これはせめてものお礼。休んだ後でも、良かったらラルトスに会ってあげて」


ジョーイさんも夜間から働いて疲れてるだろうに、ちっともそんな素振りを見せない。プロのジョーイさんってすごいなあと感動していたところ、どうやら昨晩のジョーイさんは夜勤の人らしい。顔立ちが瓜二つで同一人物だと思ったのは私だけじゃ無いと思う。


「ありがとうございます。少し休んで、朝食を食べたら伺おうと思います」


寝てたとはいえ椅子だったから身体が変に固いし、シャワーを浴びてスッキリしたい。仲間の回復もしなきゃいけないから、ひとまずはそっち優先かな。


「あら!せっかくなら朝食はラルトスと一緒に食べればいいのに」


えっ?




「……とは言われたけど」


そして諸々の用事を済ませた私は今、ナンバープレートがかけたれた扉の前にいる。ラルトスがいる部屋だ。
碧雅達は回復のためジョーイさんに預けているので、私一人。朝食にと渡されたサンドイッチ入りのバケットを持ちながら、ドアを眺めていた。


(本当に入って大丈夫かな。ラルトス、私が入って怖がったりしないかな)


サンドイッチを持ちながら部屋の前を行ったり来たりを繰り返す。考えがグルグル巡り、身体を動かさないと落ち着かない。

首元に付けられていたプレート、コトブキシティでのギンガ団の話からあのラルトスは実験に使われたポケモンで間違いないと思う。
私の事は意識を失う前に認識してると思うけど、印象がなあ……臭いって言われたしなあ……。


(今はまだそっとしておいた方がいいよね)


会うにしても同じポケモンがいた方が安心すると思うし、手持ちの回復が終わったあとにしよう。2人もラルトスのことは心配だろうし。

そう思い引き返そうと歩き出した瞬間、ドアがゆっくりとひとりでに開いた。えっ、と心の中で驚くと同時に頭の中に聞き覚えのある声が流れてきた。


〈どうぞ〉


声変わりしていない少年の声。あのラルトスの声だ。ラルトスはエスパータイプらしいから、ねんりきで開けてくれたのかな。声に従い部屋に入ると、白い大きなベッドに見合わない小柄な体躯のラルトスが上半身だけ起きあがっていた。


〈トレーナーさん、おはようございます〉


目は隠れていて見えないけれど、穏やかにこちらを見ているのがわかった。


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