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コトブキシティに戻るためクロガネゲートを抜けると、昨日とは違うトレーナーに勝負を挑まれた。自己紹介で私がジムバッジを持ってると分かると、俺もあたしもと沢山のトレーナーに囲まれてしまった。挑まれた勝負に応じ続けた結果、お昼前に到着予定だったのが今はおやつの時間だ。お昼ご飯食べそびれちゃったな。


『っはー!楽しかった〜!!』
「お疲れ様!PCでひと休みしてから出発しようね」
『じゃあPCについたらアイスね』


昨日ジム戦ができなかった紅眞にバトルをしてもらってたのに、指示出してただけの私の方がくたくたになってる。本当にバトルが好きなんだなあと実感する。そして碧雅にアイスを催促されたけど、朝も食べてたよね?お腹壊さない?


『主食だから壊さないよ』
「さりげなく心を読まないで!真顔でアイスが主食って言ってる人初めて見たよ!?」
『そうだぞー!バランスよく栄養取らないと体に良くない!』
「え、そっち?」
『僕のエネルギー源だからいいの。今日は豆乳から作ったアイスね、バニラ味で』
「女の子みたいなこと言うね」


ついでに私も食べたい。ちなみに紅眞はまだ食べてないけどアイスクリームも作れる。

小声で会話しながら街を歩いていると、十字路のど真ん中に立っている2人の人影が目に入った。あの水色の髪、宇宙人を思わせるような服。

……ま、まさか、


「ギンガ団!?」
『げっ』
『ん?あれが?』


そうか。紅眞はギンガ団に会ったことないんだっけ。


「スクールで先生が言ってたでしょ、悪い人達だって。碧雅のことも無理やり捕まえようともしたんだから」
『そうなのか?あんなカッコイイ格好してるのに!』
「かっこいい?宇宙人のコスプレイヤーにしか見えないけど!?」
『うわ……何その美的センス……』


カッコイイ、かはともかく、目立つ出で立ちをした2人の大人が道のど真ん中で立っているのはなかなかシュールだ。丁度人気がなくて良かったと思う。シンジ湖での出来事があるから、目をつけられてるかもしれない。なので姿が見えなくなるまで建物の影に隠れることにした。様子を伺っていると、話し声が微かに聞こえてきた。息を潜めて耳に意識を集中させた。


「どうだ、連絡はあったか?」
「……いや、まだだ。アイツ、どこに隠れているんだ」


誰かを探してるらしい。そういえばコトブキシティにはハンサムさんがいたはず、今この場にいてくれたら頼りになるのに、と心の中で国際警察官の名を呼ぶ。


「それより、なんで俺たちが支給ポケモンを探さなきゃならないんだよ?そのまま逃がしとくか逃がしたやつが探せばいい話だろ」


団員のひとりが不服そうな表情をしながら不満を述べている。ポケモンを探しているんだ。それよりも“支給ポケモン”という言葉に、建物の角を掴む力が強くなる。ポケモンを、生き物をなんだと思ってるんだろう。


「そいつがワケありみたいだぜ。なんでも元実験台だとかなんとか」


……実験?
なんでもないかのように口から出てきたその単語に眉を潜めた。ボールの中の2匹もじっと話を聞くように黙っている。


「実験?」
「聞いたことあるだろ。組織の戦力を増やすために、うちの研究員共が野生のポケモン使って実験を繰り返してるんだよ。通常覚えない技を習得させたり、まあ色々な」


何、それ。ポケモンを無理矢理捕まえて、通常では有り得ないポケモンを創る。
まるで映画やフィクション作品のような話。碧雅と最初に会った時のあのギンガ団員も、自分の昇進のことしか頭になかった。ポケモンの気持ちなんてお構い無し。なんて自分勝手な人達なんだろう。


「へー。でも研究するにも金がいるよな、その金はどこから出してんだよ」
「知らねえ。俺たちが気にしても仕方ないだろ。とにかく早く見つけるぞ。シンジ湖で変な子どもに邪魔されたっていう報告もあるしな」
「子ども?」
「ああ、そいつのせいで例の実験台に逃げられたんだと」


話を続けながらこっちに向かってきた。その話には思い当たる節がある。シンジ湖で邪魔をした子どもで該当するのは、十中八九私だろう。
心臓の鼓動が大きくなった。団員に見つからないように後ろに下がり込む。

すると機械音が鳴り、団員の一人が通信機らしき機械を取り出し立ち止まった。


「ーー……はい。E-2……はまだ見つか……ません。え、ソノ…………の……ですか?分か……ました、直ち……向……ます。」


小声で話されてるため途切れ途切れに声が聞こえる。
通信を切った団員達はすぐにコウモリのようなポケモン(確かゴルバットだ)を出し、そのまま空に飛んでいってしまった。方角的にソノオタウンに向かっているのだとわかった。

静寂な時間が戻り、路地から出た私は2匹をそっと出した。


「紅眞、悪いけどPC後でもいいかな。ソノオタウンに今すぐ行きたい。ちょっと同じ人間としてギンガ団許せなくなった」
『全然いいぜ姉ちゃん。寧ろ俺が言いたかった!』
「流石紅眞!よっ正義の味方!ヒーロー!」
『へっへっへ!よっしゃあソノオタウンまで一直線に走るぞー!』
「おー!首洗って待ってろギンガ団!」
『……物騒だな』


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