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コトブキシティとマサゴタウンを繋ぐ202番道路、ここは旅立ったばかりの新米トレーナー達が沢山いる。
アチャモを目撃した人がいないか聞こうとしたところ、横からおいと声をかけられる。完全に不意打ちだったため肩が揺れた。

話しかけてきたのは短パンを履いた男の子。右手にピカピカのモンスターボールを持って、ジュン君みたいにやんちゃな笑みを私に向けている。


「目と目が合えばポケモン勝負!バトルだ!」


目合ってないよね?そんな心のツッコミを無視し男の子はポケモンを繰り出した。本当にバトル始まってる!唐突すぎない?


「あの、私今それどころじゃなくてむしろ訪ねたいことがあるんだけど!」
「俺とムックルに勝てたら聞いてやるよ!」
『……仕方ないなあ』


至極面倒臭そうにムックルと呼ばれたポケモンと向かい合う碧雅。うん、これは面倒だごめんね碧雅。何気に初めてのバトルだし、折角なら勝ちたいな。

ポケモン図鑑を取り出しグレイシアの項目を開く。身長・体重・生態情報……あった、使用技。
バトルについてはジュン君達から少しだけ教えてもらったけど、碧雅の使える技を知らないから、まずは調べるところから始まる。けれど向こうは時間を与える気は無いらしい。短パン君の指示でムックルは翼をはためかせ突進してくる。


「か、かわしてっ!」


咄嗟に出した指示だけど、碧雅は向かってくる方向を読み避けてくれた。その間に目に付いた技を一つ一つ見ているけど、多すぎてどの技がいいのか悩む!それに碧雅もどの技を使えるかが分からない。

ムックルは羽ばたきを繰り返し、小さな竜巻を作り出した。短パン君がかぜおこしだと技名を告げる。碧雅は吹き飛ばされないように身体に力を張っているけど、見た目より風の力が強い。こっちも指示しないと、じわじわとやられちゃう……!

ふと目に入った一つの技。シンプルな名前だけどその分イメージしやすかった。この技は、見た事がある。考える間もなく、私はその名を口に出した。


「れいとうビーム!」


シンジ湖でも見た水色の光線が放たれ、それは一直線にムックルに向かっていった。当たったと思った瞬間ピキィンという高い音とともに冷やされた空気が流れ、ムックルは氷漬けになって倒れていた。


「負けた!お前のポケモン強いなー。ムックルお疲れ様」


バトル終了?あっさり終わったけど、これでいいの?はいこれ、と短パン君が渡してきたのは80円。賞金だと言っていたからバトルは終わりらしい。
初バトルに勝てたのは嬉しいけど、自分より年下の子からお金をもらうのは心が痛い。けれどこれがルールらしいのでありがたく頂くことにした。


「あの、約束通り質問に答えてね!この辺でアチャモを見なかった?」
「アチャモ?シンオウに?」
「保護しなきゃいけないの、なにか気になったこととかはなかった?」
「うーん……そういえばさっき、オレンジの何かがここを通った気がするな」


あっちに行ったかも。指差した先はコトブキシティの方向と同じだ。最初の匂いをたどった時から目的地は変わってないようだ。ありがとうとお礼を言った後、博士達にもポケギアで連絡をし私も走り出す。


「バトルお疲れ様!碧雅強いんだね」
『別に相性が良かっただけだし』
「ご褒美に何か買ってあげる。あ!そうだ!アチャモ見つけ終わったらフレンドリィショップ寄ろうね!」
『それ、ユイが寄りたいだけでしょ』


バレてる。でも色んなものが売ってるって言ってたから、碧雅のお気に召すものがあるかもしれないよ。そう言うとまあいいけどと許可(?)をいただけた。ちょっとした口約束を交わしコンクリートの道に足を踏み入れた。

コトブキシティは一言で言うと都会のような街だった。マサゴタウンからそこまで離れているわけではないけど、すごい発展の差だなあ。大通りを真っ直ぐ進み、高いビルが連なる街並みに圧倒されながら小さな橙を探す。人がそこまでいないことが幸いだった。

街灯に目をやるとスーツに茶色いコートを羽織った男の人がしきりに周りを警戒しながらまた別の街灯へと移っていた。その行動は如何にも怪しすぎる。しかも隠れきれてない。


『僕の目が正しかったら、前方にすごく胡散臭い奴が動いてるんだけど』
「うん、完全に不審者だよね」


今日はやけに意見が合う日だ。まさか、この人もアチャモを探してるんじゃないの?念の為碧雅をボールから出したままにしておいて、話しかけてみることにした。


「あ、あの〜」
「!なぬー!何故私が国際警察の人間だと分かってしまったのだ!?」
「え、警察?警察の方なんですか!?」
『世も末だね』


警察に見えないです。ごめんなさい不審者とか思って!


「なぜ驚いているのだ。私を只者ではないと見抜いて話しかけてきたのだろう?」
「確かに只者ではないと思いましたけどね?」
「その眼力、恐るべし……!君、できるな!自己紹介をしよう、私の名前……いや、ここではコードネームを教えておこう。コードネームはハンサムだ。みんなそう呼んでいるよ」
「は、はぁ……。私はユイです、よろしくお願いします」


コードネームとか自分が国際警察の人間だとか、そういった情報を簡単にバラしていいんだろうか、というツッコミを与える隙もなく喋るハンサムさん。私苦笑いになってると思う。


「ユイ君か!ところでユイ君、人のものを取ったら泥棒という言葉を」
「あの、聞きたいことがあるんですけど」


自称国際警察ハンサムさんに若干引き気味でいると、碧雅が人型になりハンサムさんに話しかけていた。いつの間に擬人化したの君。しかも敬語なんですけど。ほらハンサムさん驚いてるよ。


「君は一体どこからわいて出てきたのだね!?」
「彼女の隣にいたグレイシアです。この辺でアチャモを見かけませんでしたか」
「なるほど、擬人化か。ははは、久々に擬人化を見たものだ!」
「……どうてもいいので早くしてください」


はははと嬉しそうに笑うハンサムさんと微妙に苛立って静かに睨みつける碧雅。ああ、なんか相性悪そう……。


「だがすまないな。アチャモは見なかったよ」
「そうですか。どうもありがとうございましたそれじゃあ」
「ええええちょっと歩くの速い!……あっ、ハンサムさん、教えてれてありがとうございます!お気をつけて!」


一息で喋ってそのまま早歩きで去っていった碧雅に慌ててついていく。ハンサムさんは呆気に取られた顔をしていたけど、すぐに笑い返してくれた。


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