IB | ナノ

1/4

「あら、ユイさん。どうなさいました?」
「おはようございます、ジョーイさん。あの、紅眞.......バシャーモの様子はどうですか?」


ジム戦から次の日の朝。私はティナちゃんとPCの受付で紅眞の様子を伺いに来た。
流石の紅眞も相性不利のポケモンと連戦を繰り広げたからか回復に時間がかかるとの事で、進化おめでとう&ジム戦勝利パーティーは翌日に持ち越されることになった。
宿泊した部屋でみんながパーティーの準備をしてくれる中、私たちがお迎えと準備ができるまでの時間稼ぎ係というわけだ。


「あのバシャーモなら、一晩経ってすっかり元気になってるわよ。これから食事の時間になるところだけど」
「わ、それじゃあ急がないと」
「メインがお腹いっぱいでご馳走が食べられない、じゃ話にならないものね」


ジョーイさんに紅眞のいる部屋を教えてもらい、廊下を走らない程度に早足で向かった。
どうやら紅眞は他のポケモンたちと相部屋になっていたみたいで、着いた部屋に掛けられてるプレートには紅眞以外のポケモンの名前が書かれていた。
ノックをしそーっと部屋に入ると、4つのベッドの内3つにコリンクとブビィ、あとグレッグルがそれぞれのベッドに座り食事をとっていた。


「あれ、紅眞がいない……?」


部屋を見渡しても、あの人型に近いスマートな体型のバシャーモの姿は無かった。ティナちゃんが食事をとっていたポケモンたちに話しかけた。


「あなたたち、ここにいたバシャーモがどこに行ったか知らないかしら?」
『アイツなら“足がなまっちまうから散歩行ってくる”っつって外に出てるはずだぜ』
『ここのごはんおいしーから一緒に食べよーって言ったんだけどねー?』
『なんだか楽しみがあるからいいんだって言ってたよ?』
「あら、バレてたのね」
「まぁ毎回ジム戦勝利する度にお祝いしてたからなぁ……」


流石の紅眞もパーティーあるのは予想してたか。驚かせようと思ってたのになぁ。ていうか散歩って、元気になるの早いね。
探しに行こうにもどこを歩いているのか分からないし、本人が戻るのを待つしかないかな。

と思っていた矢先、後ろのドアが音を立て開き、誰かが入ってきた。


「たーだいまぁー!」
(だ、誰だこのイケメン)


現れたのは蜂蜜を溶かしたような金髪が眩しい、背の高いモデル体型のイケメンさんだった。背中には何故かお爺さんを背負ってるけど、その重さをものともせずに軽やかに室内に入る。
背負われてたお爺さんが「おお、迎えに来たぞコリンクや」とヨボヨボしながら紅眞から降りてコリンクを撫でていた。コリンクも『おじいー!』とスリスリしているし、どうやらコリンクのトレーナーさんらしい。


(孫とおじいちゃんって感じ……いやいや和んでる場合ではなく)
「あれ、ユイに師匠じゃん。どうしたんだこんな所で?」
「な、ななななんで私の名前を!?」
「えぇえ何言ってんだよお前……」


若干引かれてる気もしなくないけど、私にこんなイケメンの知り合いはいない。
ただ、私はともかくティナちゃんを“師匠”と呼ぶのは私の記憶が正しければ一人しかいないし、消去法で考えればこの人が進化した紅眞なのは分かるんだけど……いや、進化して見た目変わりすぎでしょ。何この劇的ビフォーアフター。茶髪だった髪は金髪に、赤い瞳は空を映したような青に。元々彼のトレードマークだったチャイナ服も進化したことで華やかな装飾が増えたように思う。

ティナちゃんの方を見ると嫌そうな目で紅眞を見ている。え、なんで。


「……ナギサシティのジムリーダーに似てるわね」
「おおそうじゃ!誰かに似てると思ったが、お前さんはジムリーダーのデンジに似ておるのぉ」
「マジで!?俺ジムリーダー!?」
「いや、紅眞“が”じゃないからね」


うん、この思わずツッコミを入れたくなる感じ。間違いなく紅眞だ。そういえばナギサシティは電気が多くて苦手ってティナちゃんが言ってたっけ。もしかしてそのジムリーダーがでんきタイプを得意としているから、街も電気が頻繁に使われているのかも。

私が名前を呼んだことに気づいた紅眞がやっぱり分かってたのかよとほっぺを膨らませた。なんかあざといぞ!


「いやー、あまりの変貌っぷりにびっくりしちゃって。……おっきくなったね」
「まーなー。目に入るもの全部ちっちゃくなった感じするなー」
「碧雅が聞いたら機嫌悪くしそう……」


碧雅は自分の身長を気にしてるみたいで、最近はモーモーアイスをよく食べてる。いくらモーモーミルクが栄養満点でもアイスじゃ意味無い気がするんだけどね。

その後準備が終わったらしい緋翠が迎えにやって来て、やっぱり大学デビューしたかのような変貌っぷりの紅眞に驚いていた。
同じ病室だったポケモンたちに別れを告げみんなの待つ部屋に帰ると、乾いた音と共に沢山のクラッカーが紅眞の頭上を覆った。
サプライズがあることは予想していたけど、やっぱりいざ祝われると込み上げてくるものがあるのか紅眞が言葉に詰まっていた。


「──……っ、サンキューみんな!」
「なっ!……貴様は、ジムリーダーのデンジ!?」
「だからちげーっての!」


……なんだか、進化したことで紅眞にとっての新たな悩みの種ができそうだ。


prev / next

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -