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前回、意気揚々とマサゴタウンを出発した私と碧雅。コトブキシティを目指していたはずなんですが、現在フタバタウンに向かっております。それは何故か。
「まずヒカリちゃんに服のお礼言わないと!」
『お礼っていうか、君の場合はありがとうよりごめんなさいの方が先に出そうだよね』
「そりゃそうでしょ迷惑かけてるんだから!」
ましてや見ず知らずの人間の服だよ?わざわざ買ってきてもらっちゃったんだよ?しかも下着まで。
というわけで碧雅がなんと言おうとまずはヒカリちゃんっていう女の子を見つけてお礼を言う、はい決定!
「あとは、またシンジ湖にも寄りたいな。博士の話が本当かは分からないけど、エムリットってポケモンにもお礼言っておきたいし!」
それに碧雅と初めて出会えた場所でもあるから、もう一度行ってみたい。あの時はギンガ団に襲われちゃってゆっくりできなかったからね。碧雅はふーんと興味無さげに返事をする。おい。
『別にいいけど、僕基本ボールから出たくないからそこの所よろしくね』
「ちょっとインドア過ぎない?」
『だって外暑いし』
外そんな暑くないし!寧ろ上着着ないと寒いくらいだけど、氷タイプと言うくらいだから極度の暑がりなのかな。
そうそう、と碧雅が思い出したように言い出した。
『一つ言っとくけど、ユイが僕らと話せるってことは、ほかの人にはなるべく言わない方がいいよ』
「え、どうして?」
『……そもそも生き物としての種族が違う言葉を理解出来る方が有り得ないっての。バレたらギンガ団みたいな危険なヤツらに狙われるのがオチだよ』
「は、はーい。それじゃあ、なるべく控えて小声話すようにしとくね」
そうなのか。てっきりみんな分かるんだとばかり思ってたけど、ほかの人がポケモンと会話しているところを見たことがないことを思い出した。ギンガ団みたいな人達に狙われるのは私も勘弁。なるべく気をつけよう。
そうこうしてるうちに道が二手に分かれ、看板が出ていた。左に曲がればフタバタウン、真っ直ぐ進めばシンジ湖。まずはヒカリちゃんに会わないとということで、フタバタウンに向かう。
どんっ!!
「ぎゃあ!」
「あだっ!」
目的地に向かい道を曲がった瞬間、凄い速さでこちらに向かってきた黄色い何かと顔がぶつかり思い切り尻餅をついた。女の子らしくない声が出たのはご愛敬。
「いっててて……。なんだよなんだよなんだってんだよ!お前いきなりぶつかるなよ罰金だぞ!」
「うえ!?ご、ごめんなさい!?」
ぶつかったのはぴょんとハネた金髪とオレンジボーダー服が特徴のやんちゃそうな男の子。怒鳴られたからまた咄嗟に謝ってしまった。
「ジュンー!置いてかないでよー!」
「ヒカリ!おせーよ、オレが一足先にシンジ湖行っちまうところだったぜ!」
「ジュンの足が速すぎるの!……この人は?」
「今日ぶつかった奴だ!」
ニッと笑うジュンと呼ばれた男の子の頭を素早く押さえながら「ごめんなさいい!」と一緒にお辞儀をする女の子。おおおなんと無駄のない動き、手慣れてらっしゃる。ジュン君、毎日誰かとぶつかってるのね、頭部鍛えられてるね。
って、今ジュン君あの女の子のことヒカリって呼んだ!?
「あなた、ヒカリちゃん!?」
「え?あたしのこと知ってるんですか?」
「ナナカマド博士から話を聞いて。えっと私、洋服とかを届けてもらったユイです。お礼を言いに来たの」
白いニット帽を被った美少女ことヒカリちゃん。どうやら2人はシンジ湖に向かってる途中らしく、私も同行する事にした。
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