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朝食の前に、紅眞を筆頭に一体何があったのか説明を要求されたため、璃珀が再度同じ内容を掻い摘んで話してくれた。ちなみにここのホテルでは朝食はデリバリーサービスで、指定した時間に合わせて届けてくれるとの事だったので30分~1時間後くらいで頼んでおいた。
碧雅と晶、白恵は静かに話を聞いていたけど、紅眞は途中から涙ぐんで、話が終わる頃には完全に号泣していた。……晶の時もそうだったけど、紅眞は意外に涙脆い。


「こーちゃん、はなかんで。はい、ちーん」
「ずびーっ」
「不謹慎だけどその絵面、面白いね。カメラで写真撮りたいな」
「この雰囲気を作った張本人が言うな!」
「あははっ、ごめんごめん」


……なんだろう、ちょっと明るくなった?ような。自分の過去を受け入れてくれたからか、前よりも距離が近付けた気がする。紅眞も思うことは同じみたいで、初めは少し呆然としていたけど、すぐにいつも通りの様子に戻った。

届いた朝食をみんなで食べて、エネルギー充電が終わった紅眞が勢い良く立ち上がる。その目はメラメラとやる気に満ち溢れていた。


「よっし!んじゃその璃珀の家族って奴らを探そうぜ!」
「どうやって?」
「…………、どうすんだ?」


ズコー。

しばしの沈黙の後、真顔で悩み出した紅眞に思わずズッコケた。晶がその光景を見て鼻で笑う。


「ハッ!やはりお前は髪型がトサカなら頭の作りもトサカだな」
「……鳥頭って言いたいの?」
「と、鳥頭……」


あ、紅眞が珍しく落ち込んで座り込んだ。


「そう言う晶はどうするべきか分かってるの?」
「無論だ。そのロン毛の仲間はリッシ湖に住んでいるのだろう?ならリッシ湖に行けば会えるじゃないか!」


ドヤ顔でそう答える晶。それはそうなんだけど。


「その考えは誰もが思いつくことだよね」
「な」
「しかも今は研究者の方たちがリッシ湖で調査をしているとの事ですから、リッシ湖に行けるとは限らないですよ」
「に」
「案外お前も紅眞と変わらないね。同じ“鳥”だし」
「がっ……」


あ、今度は碧雅の言葉をトドメに晶が崩れ落ちた。


「鳥頭……俺は鳥頭……」
「僕が……トサカ頭と同じ……だと……」
「そういえば璃珀、ひとつ伺ってもよろしいですか。その家族は一体何のポケモンなのでしょう?」


2人を暫く眺めていた緋翠が向き直って璃珀に話を振る。いやほんと進化して結構変わったね?璃珀も2人を見て、これはスルーしようと判断したみたい、苦笑いの後小さく息をつき質問に答えた。


「あの仲間たちはリッシ湖付近にいるけど、普段は少し離れた泉に住んでいるんだ。リッシ湖から小さな川が流れていて、それに沿って進んでいけば住処には行けると思うよ。ちなみに質問の答えになるけど、種族は“ギャラドス”だ」
「「ギャラドス!?」」
「うるさいよ鳥コンビ」


あれ、塞ぎ込んでた鳥コンビが息を吹き返した。息ピッタリだね。碧雅が淡々と注意するけど2人はそれどころじゃなさそうだ。


「ギャラドスと言えば、まさに破壊の化身のポケモン。一度怒ればその怒りは収まることを知らず、目につく街や森を焼き尽くすと言われているポケモンだ」
「加えてアイツら、超強えって話だぜ。元々コイキングから進化するから数も多いし」
「そ、そうなんだ……」
「よく無事だったね、璃珀」
「いや、彼らは怒りさえしなければそこまで危険じゃないと思うけど」
「ああ、だから」

「「相手にとって不足はない/ねぇ!」」


……はい?
碧雅がテーブルに肘を着きながら呆れた視線を送る。


「……その口振りだとバトルしそうな勢いなんだけど、君たち何しに行くつもり」
「え、バトルしに行くんじゃないのか」
「カチコミじゃないのか」
「私たちはヤクザか!違うよ、話をしに行くんだって!」


晶、カチコミなんて言葉をどこで覚えたの。
けどギャラドスというポケモンは私も気になるので図鑑で調べてみると、表示されたのは青い身体に厳つくも逞しい顔立ちの、青龍を彷彿とさせるポケモンだった。


「え、カッコいい」


ギャラドスを見て感じたままの第一印象を口に出すと、みんなが一斉に私を見た。え、何。


「ユイ、ギャラドス好きなのか?!」
「えっ、と……私の前いた世界にね、四神獣の一つ、東の青龍、青い龍って書いて青龍って読むんだけど、それを連想させるなぁと思ったの」
「龍……なるほどね。確かにギャラドスはタイプの分類こそみず・ひこうだけど、一説ではドラゴンも含まれるんじゃないかって扱われることもあるし」
「あー、そういう……」


みんな納得したようで落ち着いた。なんだったんだ。
……待って、みず・ひこうタイプ?


「紅眞相性最悪じゃん!よくバトルしようって思ったね!?」
「相性がなんだ!気合と根性で乗り切る!」
「無謀過ぎるわ!」


とにかくまぁ、一旦リッシ湖に行ってみようという形で話は収まったのであった。


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