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トバリシティのジムリーダーは噂に聞いたところまだ若い女の子らしい。しかも天才的な格闘家なんだって。すごーい!格闘家だからか、トバリジムはかくとうタイプのジムで攻めることが得意らしい……って、璃珀が言ってた。
おやつのスコーンを食べながら璃珀の話を聞く。


「元々トバリシティは岩だらけの土地を切り開いた街だからね。かくとうタイプのポケモンも岩を砕いて開拓に協力していたという話もあるから、ちょっとした縁があるのかもしれないね」
「かくとうタイプだと……緋翠と晶が有利だね」
「あと白恵もね」
「?白恵は逆に相性が悪いんじゃないの?」
「えっ」
「へ?違うの?」
「……おいちんちくりん。まさかとは思うがお前……」


晶が呆れた目で私を見てる。晶だけじゃなくて白恵を除くみんなもちょっと驚いた顔をしてる。なんで。


「……ユイ。トゲピーのタイプは?」


碧雅が懐疑心の眼差しで尋ねてくる。ふふん、勿論ちゃんと勉強しましたとも!自信満々に人差し指を立て答えた。


「ノーマル!……間違えたファンシー!」
「貴様ふざけているのか」
「いだだだだ!」


折れる!指力強く押さえないで折れる!緋翠がサイコキネシスで晶と私を離してくれた。


「晶、後でお時間よろしいでしょうか」
「……その笑顔に似つかわしくないオーラが放たれているぞひっつき虫」
「そうでしょうか?マスター、正しくはファンシーではなく“フェアリー”ですよ」
「あ、そうそうフェアリータイプだ」


フェアリータイプはあまり研究が進んでいないタイプみたいで、今まで違うタイプに分類されていたポケモンが実はフェアリータイプだったという事例が多いらしい。トゲピーもその例に漏れず、ノーマルではなく正しくはフェアリータイプなんだって。ちなみにラルトス系統もエスパー単体ではなく、フェアリーとの複合タイプだと判明したらしい。それじゃあこの前のメリッサさんとのジム戦で戦ったゴーストはどくタイプも持っていたから、どく技も持ってたら危なかったんだね。


「白恵。ジム戦デビューも兼ねて、どうかな?」
「……ばとる」
「あまり乗り気じゃなさそうだね」
「ぼく、おいのりするほうがすき」
「お祈り?……ああ、“ねがいごと”ね」


白恵はねがいごとだったりいやしのしずくだったり、どちらかというと仲間を回復させる技を好んで使う。図鑑で調べたら攻撃技も一応覚えているんだけど、あまりバトルは好きじゃないのかな。


「まーまだちっちぇえしな〜。なら、今回俺が出てもいいか?」


紅眞が?確かに前回はお休みだったし、同じかくとうタイプのポケモンと戦うことはいい経験になるかもしれない。白恵も乗り気じゃないみたいだし、無理やり戦わせるのもなんだから今回は紅眞にお願いしよう。


「それじゃあ紅眞、緋翠、晶。このメンバーで行こうか!」
「ラジャ!」
「はい!」
「……仕方ない」
「それじゃ俺たちは応援に回ろうか、2人とも」
「は〜い」
「相性は有利でもジムリーダーはその対策をきちんとしているに違いないから、油断しないように」
「うん!」


そして選出メンバーを決めた後はゆっくりと休み、明日のジム戦に備えるのであった。




◇◆◇




「アサナン、ねんりきです!」
「緋翠、めいそう!」


翌日。受付時間にトバリジムに向かいジムリーダーのスモモちゃんと対面した。桃色の髪に華奢な体格。鼻に着けた絆創膏が特徴的な女の子で、噂通りかなり若いジムリーダーなようだ。同い年か年下くらいの風貌なのにジムリーダーを務めているなんて凄いなぁ。物腰も丁寧で、チャレンジャーに対しても全力でお相手しますと応える姿勢に好感を覚えた。
互いに挨拶を交わし、バトルが始まる。こっちの初手は緋翠、向こうはアサナン。相性は互いにどっちつかずと言ったところで、先ずは能力の上昇を謀る。


「動きを制限しましょう。がんせきふうじです!」
「かげぶんしんで撹乱するよ!」


クロガネジムのように岩がはびこるバトルフィールド。初手のねんりきはどうやら岩をアサナンの元に運ぶため指示したようだ。がんせきふうじの岩が緋翠の分身を次々に壊す。……今回は運良く本体に当たらず済んだようだ。
次に威力が上がったサイコキネシスでアサナンを攻撃する。見えない力に振り回されるアサナンだったが壁に激突する前に体制を整え、壁ジャンプをして緋翠に接近する。その拳はアサナンの身体の色のように淡い水色のオーラを纏っていた。


「避わしてサイケこうせん!」


直線上に飛んできていたので避けることは容易く、クルリとバレリーナのように躱した後虹色の光線がアサナンにクリーンヒット。


『ドレインパンチを喰らわずに済んでよかったね』
「ドレインパンチ?」
『かくとうタイプの技の一つで、攻撃した相手の体力を吸収する技だよ』
「どういうメカニズム!?」
「?あの、ユイさん?」


おっといけない。つい大声で突っ込んじゃったからスモモちゃんが首を傾げてるよ。大丈夫ですと伝えバトルは続行だ。


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