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さっきの親子を見て、もしかしたらグレイシア君は擬人化しているのかもしれないと閃いた。珍しい髪色と目をしていたけど、人の姿をしていた方が人混みに紛れて安全なんじゃないかと考えたから。

青い髪をした男の子を見なかったかと聞けば案の定、南のマサゴの浜にそのような男の子を見かけたと教えてもらった。向かえば潮風の香りと共に砂浜に腰掛けるあの青い後姿が見えた。まだ日は沈んでない。
グレイシア君と名前を呼ぶと、彼はこちらを振り向いてくれた。うん、やっぱり雪みたいに綺麗な男の子だ。


「なに」
「グレイシア君に、最後にこれだけ言っておきたくて、ごめんなさい!」
「……何で謝ってるの」
「これの、ことで」


そう言ってグレイシア君の前に差し出したモンスターボール。言わずもがなあの時グレイシア君を閉じ込めたボールだ。


「無理矢理ボールに入れちゃって、私守るって言ったのに、結局何もできなかったから」


あの時は偶然何とかなったけど、もしあのままギンガ団の攻撃を受け続けていたら私もグレイシア君も無事ではいられなかった。ズバットから受けたちょうおんぱの気持ち悪い感覚が、まだ頭に残っている。改めて、この世界のリアルを痛感した。


「それだけ?」
「へ?」
「それを言うために探してたの?」
「う、うん。だって、迷惑かけたし、グレイシア君もうちょっとでギンガ団に捕まりそうになってたし」


元々臆病な性分だから、ちょっとしたことで謝りやすいけど、それを贔屓目にしても今回は謝るべきだと思うよ?


「ふーん」
「それだけ!?必死に探してやっと見つけて謝ったのに、それだけ!?」
「誰も見つけてなんて頼んでないし」


それもそうだ。私が謝りたかっただけで、グレイシア君はそんなこと一言も言ってない。


「あの時の行動が正しいかなんて誰にも分からないよ。まあ、君が考え無しの無鉄砲なのは分かったけど」


砂を払い立ち上がるグレイシア君。サラっと刺さる言葉を言う。


「終わりよければすべてよしって訳では無いけど、結果僕らは無事だったんだから、今回はもういいんじゃない」


夕陽色の海を見つめながらそう言うグレイシア君。
つまり、気にしてないってこと?
私が顔をあげたのを確認したグレイシア君が、何故かほっぺを引っ張り出した。


「!?いひゃい!」
「勝手に行動して勝手に反省して勝手に謝って忙しいね、君って」
「ふふひゃい!ほっへ!いひゃい!」


至近距離に美少年がいるから目の保養にはなるけど、本人の引っ張る力が思った以上に強くてめっちゃ痛い!涙出てる!酷い顔になってるよ私!ていうか無表情で引っ張らないで怖いわ!そして止めと言わんばかりのデコピンを食らわした。勿論もろにそれを受けた私の額は大ダメージ。


「ぐわぁぁあぁ!い゛だいいぃぃ!」


女の子らしからぬ声を出しながらゴロゴロ地面を転がる。ああ、今ここに人がいなくてほんとよかった……!


「転がってるとこ悪いんだけど、君これからどうするつもり」
「誰が転がしたと思って……これから?」
「別の世界から来たんでしょ、帰ろうとは思わないわけ」


マイペースに話を進めるグレイシア君。君が転がせた元凶なんですけどね。痛みが落ち着いたところで砂浜に座る。今更ながらあんな内容をまともに話してしまったのが恥ずかしくなってきた。


「グレイシア君は、どう思った?博士たちみたいに、信じれないよね」
「……あの時言ったよね、有り得ない事じゃないって。それに、シンジ湖であった現象は本当にエムリットが起こしたものかは不明だけど、起きたことは事実だし。まあ、信じてあげなくもない」
「……。」


すごく分かりにくいな!要は信じるって事かな?そういえば最初にディアルガ達の可能性を示唆したのはグレイシア君だった気がする。なんだかんだ、やっぱりこの子は優しい気がする。 私はこのあと博士たちに話そうとしている考えを話す。


「ありがとう。ちょっとこれからを考えてみたんだけど、私、旅に出てみようかなって思うんだ」


どうして私がここに来たのか。博士たちの仮説通りディアルガとパルキアが関係しているのならば、自分で情報を集めたい。ゲームでも主人公達は旅をしていたし、それに習う形だが私も旅をしてみたい。


「帰る方法を探す旅に出るよ」
「そう」
「グレイシア君はどうするの?」
「元の場所に帰るよ。君をマサゴまで送ったらそうするつもりだったしね」
「そうなんだ……じゃあ、ここでお別れになるんだね」


折角ちょっと仲良くなれたと思ったのに、残念だなあ。


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