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正直拒否されると思っていたので、予想外の返答に反応が一瞬遅れた。目を大きく開いたまま、呆然とチルタリスを見た。


「いい、の?私の話、信じてくれるの……?」
『信じるも何も、原型の僕と話せていることが只者ではない何よりの証拠だろう。お前には一応、恩がある。それを返すために着いて行ってやる』
「……ふふっ」
『笑うなちんちくりん女』
「ちょっ、そのちんちくりんってなんとかならない……?」
『断る。気が向いたら変えてやる』


うん、その顔は変える気はないみたいだね!横暴キャラは碧雅だけで十分なんだけどな!まあでも、少しでもチルタリスと近付けられるなら、全然構わないけど。待っててねと部屋にボールを取りに行き、再び屋根に上がる。それじゃあとボールを当てようとすると、待てと翼で止められた。


『その前に、やることがある』
「……?」
『見届けてくれ』


そう言い置いたのはあのボロボロボール。チルタリスは深呼吸をした後、つつくでボールを壊した。彼の心を表したようなボールは、粉々に砕け散った。


「……壊しちゃって、良かったの?前のトレーナーとの、大事な思い出じゃ……」
『僕なりのケジメだ。それに、思い出はなくなりはしない』
「……分かった、それじゃあ改めて。私はユイ。よろしくね、チルタリス」


頷いた額にボールを当て、私の手の中で揺れたボールはゲットの音を立て止まった。出ておいでとボールを投げ、ふわふわの翼が舞い上がる。そよ風が私の髪とチルタリスの翼を靡かせた。


『精々失望させるなよ』
「勿論!…………決めた。あなたの名前は、晶」
『あきら?』
「この星空の下、仲間になることを約束したから。絶対にあなたを裏切らない証として。あとはね、あなたの声がとっても透き通って綺麗な声をしてるから、かな」
『…………。』
「嫌なら違うのを考えるけど」
『……いや、それでいい』


ふわりと私の手を柔らかい羽が包んだ。それはまるで、天使の羽根のように真っ白で、優しい柔らかさ。顔を見れば、チルタリスーー晶は初めて微笑んでるように見えた。


『……よろしく頼む、主』


これがきっと、彼の本当の顔なんだ。私は嬉しくなって、何故か涙が込み上げてきて、涙がこぼれないよう精一杯笑った。
これからあなたと、沢山いい思い出を作り上げていこうね。

……ていうかそれよりも、


「チルタリスの羽、超気持ち良い……!これが天に昇る心地……!!」
『お、おい!顔を埋めるんじゃない!』
「もっふもふ!ふっわふわ!晶と一緒に寝たら良い睡眠取れそう!」
『誰が一緒に寝るかこのちんちくりん女ァァ!!』


おお、いいツッコミだ。




そして翌朝。晶が仲間になったことを朝食時発表すると、これまたみんなポカン顔。ただ璃珀は予想していたのか、「また賑やかになりそうだね」と何事も無かったように晶に挨拶していた。けど晶は璃珀の全身を観察するように見て一言。


『お前は……ロン毛の女たらしか』
「え」
『そしてトサカ頭』
「俺!?」
『ちんちくりんのひっつき虫』
「む、虫……」
『天の邪鬼な雪うさぎ』
「氷像にしてあげようか」
「碧雅ストップ。……それってみんなのあだ名?」
『あだ名じゃない。僕が抱いた第一印象だ』


それにしてはみんな酷いラインナップだな。ていうかみんなからの第一印象も悪くなっちゃうよ晶。碧雅に至っては今にも技を放ちそうだし。晶に絶対零度と言わんばかりの冷たい視線を向ける碧雅を宥めていると紅眞が肩を震わせ笑い出した。


「ぶっはは!みんなおもしれェあだ名だな!」
「マスターをちんちくりんと呼ぶことだけは見逃せないのですが……ええ、コミュニケーションの一環ということで……私、耐えてください」
「俺としては天の邪鬼は寧ろ、きみに当てはまりそうな気がしたけど……詮索は止めようか。よろしく頼むよ、晶くん」
「……はぁ。何はともあれ、今日からよろしく」
『…………こちらこそ、よろしく頼む。失礼な物言いをしてすまなかった』
「自覚あったんだ!?」
『お前に対しては微塵も失礼と思わないがなちんちくりん』
「なんで!」


前途多難な予感はあれど、旅のお供に新しい仲間が増えました。


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