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間違いなくここに碧雅がいたら私を指さして「これを?」とか言いそう。てか言ってくれ。
それにしても璃珀さんは本当に私のことを……その……好き、なのかな。表情はいつもと変わらないからちっともそんな気がしないんだけど。普通もう少し照れたりしない?


「あの、ちなみに……どこが好き、とか聞いてもいいですか」
「聞きたいの?そうだね、まずはー」
「うわあぁぁやっぱいいです!」


ぶっちゃけ気になるけど興味より羞恥が勝った。
そしてはっと気づく。ちょっと待って。私、この人に返事をしなければいけない……?顔から今度は血の気が引くのを感じた。この人、ポケモンだよね?いくらさっきの話が本当とはいえ、昔話って言ってたし……いやでもせっかくの好意を無下にするのも……。
そんな私の百面相を見て璃珀さんは細い人差し指を立て「ひとつ提案があるんだけど」と言った。その内容は、自分を連れて行って欲しいというもの。


「だって俺たち、知り合いとはいえまだ何も知らないんだから。ユイさんは事情が事情なだけに複雑だろうけど……許してもらえないかな」


事情。それはきっと私が他の世界から来て、いつか帰ることを指しているのだろうか。いつか離れる身なのを承知で、私を好いてくれているということなのかな。申し訳なさそうに眉を下げてくるその顔は、私には効果てきめんだ。こくりとうなづいた。


「よろしく……お願い、します」


顔を直接見るのはやっぱり恥ずかしいから、少し下を向きながらだけど。それも面白かったのか小さく笑いながらうんと返事をしてくれた。
そして人気がないことを確認して、モンスターボールを手に軽く当てた。光に吸い込まれていく姿を見て、改めてこの人はポケモンだったのだと実感する。揺れが完全に収まった後高くボールを投げ出てきたのは、ハクタイビルで見た麗しいポケモンの姿。


『よろしくね、ご主人』
「は、……うん、璃珀」


こうして、無事世にも珍しい色違いのミロカロスが仲間になったのであった。
…………待って、そういえばなんで“璃珀”って名前があるわけ。もしかして、他のトレーナーさんがいるとか?ポケモン泥棒しちゃった!?と慌てたのも束の間、璃珀が事情をざっと説明してくれた。その前に既に誰かのポケモンになっていた場合は、登録されたボールを破壊するか登録解除しない限りは別のボールに入ることは出来ないよと苦笑いで説明される。


『この名前は昔大切な人から貰ったものでね。あ、恋人とかじゃないから安心してねご主人』
「あっはい」
『あとこれも、“しんぴのしずく”と言って、みずタイプの技の威力が上がるんだ』
「あ!人型の時も付けてるやつ。へぇ〜きれ〜」


青い雫型の宝石は太陽の光にかざされて海の水のようにキラキラと輝いている。その、要は名前とこのしんぴのしずくは大切な誰かから貰ったものだからそのままにして欲しいって事かな?そう伝えれば読みは当たってたみたいで『よく出来ました』と頭を撫でられる。これは人型でも原型でも変わらないなぁ。


『さて後は、ご主人の仲間たちに認められるかどうかだね』
「紅眞と緋翠は歓迎しそうだけど、碧雅はどうかなぁ」
『そこはご主人が泣き落としで頑張ってね』
「いや効かないって。……ていうか、なんでご主人呼び?」
『なんとなく呼びやすいなーって。それとも名前で呼ばれたい?』
「そのままでお願いしますね」


2人でどうやって紹介しようかPCまでの道のりを歩きながら話している空の上には、新たな仲間の加入を祝福するように虹がかかっていた。


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