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緋翠が神妙な面持ちで私を見つめる。どうしたのか尋ねると「実は、シンジ湖の出来事を私は知っていたのです」と告白された。


「あのギンガ団の手持ちとして私は所属していました。と言ってもほとんど戦闘に出ることはなく、あの時もボールの中で待機していただけですが」


衝撃のカミングアウトを喰らった。待機していたと言っても、最初に出会った緋翠はかなり弱っていたから、仮に覚えていたとしても記憶はあやふやだったんじゃ。そう思っていたところに緋翠は「あと、エムリットと少々話をしました」と更にカミングアウト。この子、爆弾発言が多いぞ。


「は!?」
「と言っても一言言われただけです。“君の心の赴くままに進むといい”と。その言葉に導かれるように気づけばテレポートで移動しててあの洞窟に……という訳です」


そ、そうだったのか。とにかく緋翠は私と碧雅の出会いを知っていたんだね。そうか、あのギンガ団の手持ちだったんだ。その可能性は考えてなかったなあ。
緋翠は私の前に跪き恭しく頭を下げる。


「マスター、ご安心ください。例えマスターが違う世界の人間であったとしても、私のお慕いするマスターであることに変わりはありません。どうぞこれからも、貴女に仕えさせてください」
「いやいやいやそんなことしなくていいから頭上げてぇぇ!?」


クスリと笑い返事をしながら頭を上げた。あ、こいつ確信犯だ。
碧雅の眠るベッドを見つめながら、紅眞が私の方に寄ってきた。


「……碧雅は、知ってるんだよな。知っててついてきてるんだよな」
「う、うん」
「そっか〜。……俺、全然ダメだな」


そう言ったかと思うと突然自分の顔半分目掛けて思い切り拳を振るう紅眞。バキッと鈍い音が鳴り響く。気づいた時には既に拳は振るわれていて、ほっぺが赤く痛そうに腫れていた。


「……うん、良し」
「ぜんっぜんよくないんだけど!!?」
「いやいてぇわこれ」
「そりゃ痛いだろうね!?」


後でジョーイさんに診てもらわないと。頬に手を伸ばした私の手を握り、自分の方に引き寄せる。紅眞はいつものニカッとした笑顔ではなく、固い意思を持った落ち着いた目をしていた。紅い目が私を射抜く。


「俺、絶対強くなる。あの時の言葉を嘘で終わらせない」


一瞬違う人に見えた気がして、目を見開いた。あの、時?その言葉はまるで自分に立てる誓いのように感じられた。そう思ったのも束の間、紅眞はすぐに手を離し、「いてぇ〜」といつもの様子に戻った。気のせいだった、?というか、私の話はどうなったの?


「ん?信じるに決まってるじゃん!なんで?」
「いや、信じられないんじゃないかなって……。仮に信じても、気持ち悪くない?」
「なんで気持ち悪いって話になるのかが俺は分からない」


心底分からないと言いたげな顔だった。あれ、私がおかしいのかな。でも結論二人は信じてくれて、これからも一緒にいてくれると言うことだ。その事実を今更実感しだし、じんわりと心に温かく溶け込んでくる。涙声になりながらありがとうとお礼を告げた。ああ今、すっごく変な顔になってる。

ぽんぽんと頭を優しく撫でられた。この感触は、あの人だ。


「うん、良い仲間を持てて良かったねユイさん」
「…………はっ、私また璃珀さん巻き込んでましたね!?」
「元々俺から聞いたことだから気にしなくていいんだよ。……とはいえ話しにくい事だったね、申し訳なかった」
「いえ、いつか話さなきゃいけなかったことなので」


それにいい方向に話が進んだから結果オーライというやつだ。璃珀さんも話を信じてくれるらしいけど、ほんとにこの世界の人もといポケモンたちは人が良すぎやしないか。と言えば璃珀さんは面白そうにあははと笑って教えてくれた。


「だってユイさん、俺が原型の時でも普通に話してたじゃないか。普通の子じゃないってことはすぐに分かったよ」
「あ」
「……ほんと、面白い子だね」


何やら温かい目で私を見ているような気がするけど、気の所為だろう。
さて、残りはとベッドの方を見つめる。


(あとは、碧雅が目覚めてくれれば良いんだけど)


まだその瞳は眠っている。


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