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あれから数日後。やはりと言うべきか、ハクタイビルの爆発はちょっとしたニュースになっていた。けれど機械の故障による爆発ということで処理されたらしく、幸い被害者も出ていなかったのでそれ以上公になることは無かった。


「よー。今日も起きねぇの、碧雅?」
「うん。まだ眠ってるみたい」


碧雅はあの時を最後にベッドで静かに眠っている。ジョーイさんに診てもらった限りでは命に別状はなく、疲労によるものだろうと言われていたけど……。栄養を摂るため打たれている点滴のチューブ、定期的になる機械音。大丈夫と言われていてもなんともいえない不安に襲われる。
でもトレーナーの私がしっかりしなくては。溢れそうになる気持ちを押さえつけるように胸の前で手を握り、今日も碧雅の傍で目が覚めるのを待つ。
ただ待つだけなのも時間が勿体ないと思いポケモンジャーナルを読んでいるが、ただ文字の羅列を読んでいるだけで頭に内容は入らなかった。

コンコンと心地よいノック音が鳴る。


「こんにちは。彼はまだ起きそうにないかい?」
「あ……こんにちは」
「よ、璃珀ー……さん?」
「別に呼び捨てでも構わないのに」


この前から色々お世話になりっぱなしの璃珀さん。私たちのことを心配してくれていて、こうして碧雅のお見舞いにも来てくれる。更には紅眞や緋翠のトレーニングにも付き合ってくれるので、私は本当に頭が上がらない。
お土産にと今日はフエンせんべいをくれた。そしてタイミング良く緋翠がお茶を淹れ戻ってきた。

みんなで椅子に座りしばしのティータイムだ。紅茶におせんべいっていう和洋折衷みたいなセレクトもたまには良いだろう。しばしの歓談の後、あの、とティーカップを置いた紅眞がポツリと話し始める。


「今回は完全に俺のせいだよな。本当にごめん」
「そんなことないよ。気にしないで」
「俺が向こうみずなこと言って、碧雅だって反対していたのに、なんかムキになっちゃってさ。結局緋翠まで巻き込んでギンガ団に捕まって、最後まで何も出来なかった。……本当に、バカだよな」


ギンガ団に捕まるまでの経緯は緋翠から聞いた。公園でステラに襲われたところを偶然見つけ、テレポートで二人の間に入り防御したはいいものの、その後は彼に圧倒されあっという間に捕まってしまったらしい。
ステラ。人型の碧雅と同じ顔をした恐らくポケモンであろう人物。彼は一体何者なのか、どうして碧雅と同じ顔をしてるのか、二人には何か関係があるのか。考えることは沢山あるけれど、今は仲間のことが最優先だ。

ここまで落ち込んでいる紅眞を見るのは初めてで、どう慰めたものか考えあぐねていた。確かに今回危険な目に遭ったのは事実だけど、話を聞く限りでは紅眞から進んでギンガ団に関わった訳では無いし、碧雅も言い過ぎた部分はある。運が悪かった場面も多かったように思う。紅眞一人が責任を感じる必要はない。


「ひとつ聞いてもいいかな」


話を傾聴していた璃珀さんが挙手した。


「そもそもきみ達、ギンガ団と何か因縁でもあったのかい?発電所の時ではなく、前にも遭遇していたらしいことを下っ端から聞いたけど」
「あ、それは……」


十中八九、シンジ湖の事だろう。それは私と碧雅、博士たちしか知らないこと。けどそれを話すと付いてくるのは私が違う世界から来たという話。三人とも不思議そうな顔で私を見ている。
……話そうとは思っていたんだ。時期が、来たのかもしれない。


「信じられないかもしれないけど、聞いてください」


私は意を決して最初の出来事を話すことにした。




「……と言う訳なんだ」


我ながら話が長かった。喉が渇いたので温くなった紅茶を飲む。紅眞は私を見ながら目をぱちくり、緋翠はなにやら考え事を、璃珀さんも考えあぐねるように話を消化していた。


「え、てことは、ユイって宇宙人?」
「ちゃんと人間です」
「紅眞くんの謎解釈は面白いね。にしても、ポケモンが存在しない世界か。正直想像つかないなぁ」
「で、ですよね……」
「……マスター。私から1つお詫びしたいことがあります」


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