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楽しそうにくるくると回っているチェリム。可愛い顔して使う技は結構えげつなかった。あの技には気をつけないと、喰らったらこっちがジワジワとやられてアウトだ。


「チェリム、もう一度やどりぎのたねよ!」
「でんこうせっかで撹乱して!」


今度は警戒していたおかげで避けることが出来た。そのままの勢いでこごえるかぜを当てるが、効果抜群にも関わらずチェリムは差程ダメージを負ってないように見えた。


「チェリムの特性はね、“フラワーギフト”」


ナタネさんが静かに説明をする。技の衝撃でバトルフィールドは砂埃が舞うが、日差しは変わらず強くフィールドを照らしていた。


「日差しが強いフィールドの間、チェリムのフォルムがポジフォルムになり、攻撃と特防が1.5倍になるの。どう?くさタイプって結構面白いでしょ!」


そんな特性があったんだ。初めて知った、勉強になるなぁ。実践で戦ってみてこそこういったことは自分の経験になる。
それなら接近攻撃に気をつけて……特防が高くなっているのなら、物理技でどうだ。


「こおりのつぶて!」
「マジカルリーフで撃ち落として!」


やっぱり効果抜群技はすぐに対応されちゃう。けれど、それが狙いだった。どうやら碧雅も意図はわかってたみたい。こおりのつぶてを放った後、でんこうせっかで隠れるようにチェリムの後ろに回り込み、気付かれないようしっぽを振りかざす。その尾は銀色に光り輝き、重みを増す。


「アイアンテール!」
『ふっ飛んでもらうよ』
「!避け、」


ナタネさんの回避の指示が入る前に鋼の尾は命中し、チェリムは壁まで飛ばされた。ヒビの入った壁から力なく倒れるチェリムは紛れもなく、戦闘不能だった。


「ありがとうチェリム。……やるね、ユイちゃん」
「いえ。あの、壁大丈夫ですか……?」
「まあよくある事だから気にしないで!」
(よくあるんだ)


弁償しなきゃ行けないかと思ったけど、やはりバトルがメインなだけあってこういうことは結構起こるらしい。審判の人も、怪我をしないかヒヤヒヤしちゃうね。ナタネさんは最後のボールを大事そうに包み込み、思い切り上に向かって投げた。


「それじゃ、わたしの最後のポケモンよ。行くよ、ロズレイド!」
『ハァーイ!アナタがお相手ね、ボーイ?』
『残念だけど、僕じゃないと思うよ』


出てきたのは両手に薔薇のような手を持つロズレイド。くさタイプというだけあって、どの子も植物の要素が顕著に現れているのが面白いと思った。
ダンサーのように華麗な身のこなしでボールから現れたロズレイドについ一瞬見とれてしまった。
チェリムはもう戦闘不能。それならば、私は碧雅をボールに戻し、再び紅眞をボールから出した。


『もうバッチリだぜ!』
「……よし、行こう!」


やどりぎのたねの影響はなくなり、元気な紅眞が出てきた。


『元気なボーイね。さっきのクール君によろしく伝えといてクダサイな』
『いいぜ、けどあんたに勝った後にな!』
「ロズレイド、マジカルリーフ!」


様々な色に変化する不思議な葉っぱを薔薇の手から出し、紅眞に襲い掛かる。ひのこで相殺しようとしたが、全部捌くことは出来ず、いくつかは紅眞に当ってしまった。ナタネさんはその隙を逃がさないように、くさむすびで紅眞の足を縛り付ける。


「さあロズレイド、とっておきを見せてあげて!」
『えぇ!』


両手を上に掲げ、そこから放たれたのは白い光の玉。玉は放たれた直後、炎を身に纏って赤い玉となり紅眞に向かっていく。


「ウェザーボール!」


天気の玉。なるほど、そういうことか……って、冷静に考えてる場合じゃない。


『ぎゃー!姉ちゃーん!』
「あわわわ!ええと紅眞、くさむすびの蔓にひっかく!」


まさに間一髪。ひっかくのツメで蔓を切り、なんとか直撃することは免れた。というか紅眞、姉ちゃん呼び卒業できてないし。
まあ、それは置いといて、今はジム戦に集中だ。


「ほのおのうず!」


炎がロズレイドの周りを囲い、逃げ場を失った。日差しの効果で威力も上がっているので、正面突破はくさタイプにはかなりきついだろう。天気が変わらないうちに、ケリをつける!


「とどめ!特大のひのこお見舞いしちゃえー!」
『おう!!』


日差しとほのおのうずの威力も合わさったひのこがロズレイドを襲う。ロズレイドに当たった瞬間に爆発が起こり、煙が納まったフィールドには切り傷が目立つがまだ立っている紅眞と、火傷のあとが残ったロズレイドが倒れていた。


「ロズレイド、戦闘不能。ワカシャモの勝ち。よって勝者、チャレンジャーのユイ!」


審判の大きな声がフィールドに良く響いた。勝てたんだ!


「やったぁー!」
『姉ちゃん!やったな!』
『おめでとうございますマスター!』
「うん、ありがとう2人とも!」


イェーイと元気よく戻ってきた紅眞とハイタッチをする。碧雅にも声をかけると『はいはい、お疲れ様』と返事が返ってきた。相変わらず素っ気ないなぁ。

ユイちゃん、といつの間にかこちらにやって来ていたナタネさんに名前を呼ばれた。ナタネさんはスッキリしたような、清々しい表情をしていた。その手にはヒョウタさんの時と同様、ある物を持っている。


「楽しいバトルをありがとう、そしておめでとう。これがハクタイジムを勝ち抜いた証、フォレストバッジよ」
「……ありがとうございます!」


渡されたぴかぴかのバッジをケースにしまう。これで、2つ目。初めはバトルの経験とポケモンの勉強のために行っていたが、いつの間にかジム戦が楽しくなってワクワクしていた自分がいたのを感じた。


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