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「ということだユイ、バトルだ!」
「どういう事!?」
「コトブキシティでお前は俺のライバルに昇格したからな!それに前言ったろ、バトルするって」


紅眞を見つめながらそう言うジュン君。あの時はたまたま見つけただけだから、ライバルには相応しくないと思うけどなあ。まあでも、ジム戦前にジュン君と戦っておくのはいいかもしれない。いいよと承諾するとよっしゃあ!とジャンプしていた。
ハクタイシティから少し離れた、テンガン山が近い荒野で行う。


「それじゃあ行くぞ!行け、ムクバード!」
「緋翠、お願い!」
『参ります』


ジュン君が繰り出したのはムックルの進化系、頭のくるんとした鶏冠を持つムクバード。一回り以上大きくなった体格に、鋭い目付きが合わさり思わず身震い。


「よし、いかくが効いてるな」


場に出たポケモンの攻撃力を一段階下げる特性。もし紅眞を出してたら結構痛かったかも。ちなみにいかくが効いてるのは私の方だよ。


「先手必勝!ムクバード、つばさでうつ!」
「リフレクターで防御!」


発電所でも見せた透明な壁を展開し、ムクバードの攻撃を防ぐ。畳み掛けるようにリフレクターに攻撃を仕掛けるが壊れることはおろかヒビも入らない。なんだってんだよー!とジュン君が焦る。


(うん。やっぱりこの子は防御主体なんだ)


釣り人さんとのバトルでは披露することはなかったが、緋翠のシールドの硬さには目を見張るものがある。あまり傷をつけることを好まない、彼らしい戦い方だと思う。何度も攻撃を繰り返していたからか、ムクバードに疲れが見え始めた。このチャンスを逃さない!


「ムクバードにねんりき!」
「やべ、避けろ!」
『んな無茶言うな主人!』


緋翠の隠れた目が怪しく光り、ムクバードの周りを覆う。不思議な力に振り回され目を回したムクバードをそのまま地面に叩きつけた。うわ、痛そう……。


『マスターを怖がらせたので、おしおきですよ』


ニッコリという効果音がつくくらい笑っているんだけど、どことなく怖く思うのは私だけかな。おつかれさん、労いの言葉をかけられたムクバードがボールに戻った。


「ありがとうな。……ちぇ、強いなーお前のポケモン」
「うん、ありがとう。本当、私にはもったいないくらいだよ」
「だがコイツはどうだ!行け、モウカザル!」


次に繰り出したのはオレンジの猿に近い姿をしたポケモン。博士に貰ったヒコザルが進化したんだね。ジュン君の相棒なだけに、かなり強いに違いない。緋翠の意志を確認すると、本人はまだやる気がある。よし、このままで行こう。


「あら、ポケモンバトルね」


第2ラウンドが始まろうとしていたところに、一人の女性の声が聞こえた。長いウェーブのかかった金髪に、スタイルの良さを引き立てる黒いコート。頭に付けた雫型の髪飾りを揺らしながら、その人はこちらに近付いてきた。な、なにあのミステリアスな美人さんは。


「突然お邪魔してごめんなさい。楽しそうな声が聞こえたから気になっちゃって」
「今ライバルとポケモンバトル中……ええぇぇ!?チャンピオンのシロナ!?」
「チャンピオン?」
「ポケモンリーグチャンピオンだよ!トレーナーの憧れ、シンオウで一番強いポケモントレーナーって事さ!」


バトルを中断して鼻息を荒くして叫びながら教えてくれるジュン君。とりあえず、物凄く有名で凄い人だと言うことがわかった。
シロナさんは落ち着いた様子で「今のあたしは、ただの神話を調べてる物好きなトレーナーよ」と言った。


「きみ、ポケモン図鑑を貰ってるんだ。なんだか昔を思い出すなぁ」


感慨深く懐かしそうに私の持ってる図鑑を見つめるシロナさん。名前は?と聞かれたので少しどもりながらユイです!と答えた。ジュン君も自分の自己紹介をすると「あれ、きみもしかして……」と思い当たる節があるらしいシロナさん。もしかしてジュン君もすごい人だったりするのだろうか。


「これからが楽しみね。2人とも、頑張ってね」


そう伝え颯爽と立ち去るシロナさん。うーんクールビューティ。シロナさんの去った方向を見つめながらジュン君が小さく「ダディ……」と呟いたのが聞こえた。そしてぐっと口を小さく噛み、マフラーを強く握った。その顔は今までとはまた違った、歯がゆい表情。


「ユイ、悪いけど今日はこれで終了だ!続きはまた今度やろうぜ。お前とのバトル、すげー楽しかった!」
「え?う、うん?」


そう言い唐突にバトルは終わった。じゃーなー!とジュン君は駆け出しどんどんその姿は小さくなって行く。完全に姿が見えなくなった頃には空は既に夕焼けに染まっており、私も慌ててPCに戻るのだった。


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