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「パパー!!」


碧雅が女の子を呼びに行き、発電所についた女の子が白衣を着た男性を見た途端、大きな声を出しながら抱き着いた。やっぱりお父さんだったんだね。感動の再会だと一人思っていると女の子はお父さんからすぐに離れた。


「あっ、臭い!シャワーしなさい!」


それはお父さんのハートに刺さるよ……。けれど彼はもう慣れてるようで苦笑いをしていた。


「いやー、無理やり働かされていたからね。君のおかげでこうして娘と会えたよ、本当にありがとう」
「おねえちゃん、ありがとう!」
「いえ、頑張ったのは私じゃなくて、この子たちですから」


紅眞の入ったボールと碧雅、そしてラルトス君を見つめる。PCに戻ったらたくさん休もうね。そして彼にもお礼を言わないと。
と思ったけど、あの琥珀のような金髪が見えない。


「碧雅、璃珀さん来てないの?」
「“用事を思い出した”って言って、僕にあの子を任せて先に行ったよ」
「そっか……元々こっちが巻き込んじゃったんだし、仕方ないか」


予定は無いって言ってたけれど、もしかしたら急用ができたのかもしれないし。
次に会えたら、その時にお礼を言おう。

親子に別れを告げて発電所を出ると再びハンサムさんに出会い、私たちがギンガ団を追い出したことを知って驚いた様子だった。そして、彼らのアジトらしき建物がハクタイシティにあるらしいと情報を残し、ハンサムさんはその場を後にした。

私たちもソノオタウンに戻り、夜ご飯まで暫しの休息に入った。




◇◆◇




『俺!完・全・復・活!』


ジャジャーンという効果音が似合うポーズを決め、紅眞が元気に戻ってきた。かなりのダメージを負っていたのに、この数時間で全快できるなんてジョーイさんが凄いのか、ポケモンの回復力が凄いのか。
紅眞はワカシャモに進化したことで立派な四肢になった。体格も一回り以上大きくなっている。


「おかえりー!」
「帰ってきた途端喧しいよ」
『なんだよ兄ちゃん〜いいじゃん!』
「はぁ……」
『ため息つかれた……』
「ま、まあまあ」


碧雅の事だから素直になれないだけだよ、多分!それに紅眞なら大丈夫だろうという信頼もあっただろうしね。
紅眞の料理には敵わないけど、今日は僭越ながら私がご飯を作らせてもらった。


「おー!うまそー!」


嬉しそうに人型になる紅眞。やはりというべきか、進化したことで擬人化の姿にも少し影響が出るみたいだ。背が少し伸びて、見た目の年齢も私たちに近くなったんじゃないかな。


(と、それは置いといて)


ジュワーという音とともに泡が吹き出し、サイコソーダをコップに注ぐ。3人分目一杯注いで、冷蔵庫に冷やしておいたケーキを出して、準備OK!


「では!無事ギンガ団に勝ったこと&紅眞の進化を祝して!」


「「かんぱーい!!」」
「……かんぱい」


今日は2つのお祝いを兼ねたプチパーティーだ。と言ってもご馳走は作れないからサイコソーダとケーキだけなんだけどね。ソノオタウンならではの、花を模したケーキでとても綺麗だ。


「食べるのもったいないなあ」
「そう?食べないなら僕が食べる」
「お気に召したようで何よりだけど一人一個までね」


あとケーキはデザートなんだから最後に食べようよ……一応頑張って作ったんだぞカレー。そんな私の気持ちが顔に表れていたらしい。


「大丈夫だよ、ちゃんと食べるから」
「え、ホント?」
「あのねぇ……一体僕をなんだと思ってるの」
「甘党な脳内アイス100%の辛口氷少年」
『なるほど、よし』


そう言って原型になり口を開ける碧雅。その口からは水色の光が……ってちょっと待って。


「ちょ、れいとうビームは待って!すみません少し口が滑りましたごめんなさい凍え死んじゃいますうう!!」
『撃たせるようなこと言うそっちが悪いしそう思ってたんだね、へえ。いい度胸してるね』
「たふぁいねえふぁんばはぶぁぶぉば」
「なんて言ったか全然わかんない」


カレーをこれでもかと頬張ってる紅眞。ほっぺがすごいことになってる。


『あ、あの〜……』
「“たまに姉ちゃんバカだよな”って言った」
「なっ!紅眞が反抗期になったぁ……!?」
「いや、思ったことを言ったまでなんだけどな」


紅眞にもバカと言われる日がくるなんて……あのアチャモ時代が帰ってきてほしい。
ていうか、誰かの声がしたような?


『す、すみません……』
「あ、でもカレー作ってくれてありがとうな姉ちゃん!やっぱ誰かに作ってもらうご飯ってうまいな!」
「うわあぁんやっぱいい子だァァ!」
『……2人とも、さっきから声掛けられてるの気づいてる?』
「「え」」

『あのっ!すみません!』


一際大きな声がしたので、その方向を見てみると、そこには部屋のドアのすき間からこちらを伺うあの緑の子の姿があった。




『お楽しみのところ失礼します、お話があって参りました』


ちまりと床に正座するラルトス君、可愛いぞ。来るのは全然構わないけど体は大丈夫なのかな。PCに帰ってきた時もジョーイさんに少し怒られてたけど。
先程まで騒がしかった空気は消え、私含め全員が彼に注目している。

ラルトス君は意を決した表情で私の前で恭しく頭を下げ、こう言ったのだ。


『あの、トレーナーさん……いえ、ユイ様』


へ、様?


『もし私の体調が回復したら、私を皆様の旅のお供に連れて行っていただけないでしょうか?』


そう言い私を見つめてくる赤い瞳には、彼の決意が滲み出ていた。


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