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「突然すまないね、こんにちは」
「へっ……?こ、こんにちは、?」


その容姿に目を奪われていると、見下ろされたまま微笑を向けられる。戸惑いつつも、ぎこちなく挨拶を返した。金髪さんは女の子にも同じように声をかけたけれど、女の子は顔を赤くして私を隠れ蓑にしてしまった。「おや」と気にしてないらしいその人は話を続ける。


「お嬢さん、あの子たちは知り合いかい」


そう言い金髪さんが向いた顔の先にいたのは、木陰に隠れてこちらを見つめているビッパ達。そのうちの一匹はオレンのみを食べている。もしかして、私から木の実をもらったことを知った他のビッパ達が来たのかな。まだまだいっぱいあるし、あげるのは構わない。手招きしてオレンのみを差し出すと走り寄ってきた。


『ありがとう〜お腹ペコペコだったんだ〜』
『おねえちゃん、また木の実くれてありがとう〜』


ビッパ可愛いなあ。女の子がビッパに木の実をあげたそうにしてたので一つ渡してみると、ビッパは今度は女の子の元に集まってきた。


「わっ!……あはっ、くすぐったいよぉ」


ビッパと戯れたおかげか、女の子に笑顔が戻ってきた。やっぱり子どもは笑顔が一番だよね!


「良かったね、元気になって」
「あっ、教えてくれてありがとうございます」
「いや、お礼を言われる程のことはしてないよ」


これも良かったらと金髪さんは羊羹をあげていた。よ、羊羹?
“もりのヨウカン”と呼ばれる、ハクタイシティの名物おやつらしい。女の子はお腹が減ってたみたいでもぐもぐと食べている。凄い。一本丸ごと食べてる。


「おにいちゃん、ありがとう!」
「ああ、どういたしまして」


にぱっと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。ああ、早くお父さんに会わせてあげたい。
それにしてもこの人、外見だけじゃなくて中身も優しいだなんて、非の打ち所が見られない。こんな完璧な人がいるんだなあ。
川を流れる水のように落ち着く声色で、穏やかな大人の雰囲気を感じさせる。ふわりと風に流れてマリンの香りがした。


「ところで、2人はどうしてこんな所にいるのかな?」


女の子の頭を撫でる金髪さんに事情を説明する。ずっとここにいるわけにも行かないので、ビッパ達にお別れを告げソノオタウンのPCに向かいながら話をした。


「そうか、父親と離れてしまったんだね」
「ギンガ団っていう悪い人たちに捕まってるみたいで、これから仲間と合流して助けに行こうと思うんです」


ほんとは今日はゆっくりしようと思ってたんだけど、困ってる人がいるのは流石に見過ごせない。元々ギンガ団を追いかけてここに来たしね。


「そうなんだね、偉い偉い」


よしよしと私も頭を撫でられた。この人の方が明らかに歳上なのはわかるんだけど、私も一応義務教育は終えた年齢になってるので、子ども扱いされるのは少し複雑。

説明をしている内にソノオタウンに到着した。PCの前に着けば買い物終わりの紅眞と鉢合わせた。紅眞は興奮した様子で私に話しかけてきた。


「姉ちゃん!大変だ!一大事だー!」
「どうしたの!?」
「あまいミツを買いに花畑の奥に行ったんだけど、そこにギンガ団がいたんだ!あまいミツを寄越せって」


あまいミツを木に塗ると、匂いに釣られてポケモンが寄ってくる効果があるらしい。ポケモンの捕獲のためにミツを奪おうとしていたところに紅眞が鉢合わせて、結果的に戦うことになったと。
これ、お礼にってお店の人からいっぱい貰ったんだ、と抱えてた紙袋の中は沢山のあまいミツが。

それはいいけど、


「1人でギンガ団に挑むなんて危ないよ、何かあったらどうするの」


紅眞の性格上、放っておけなくて挑んだんだろう。よく見ると所々汚れている。本人も指摘されることはわかっていたみたいで、ごめんと謝られた。無事ならそれでいいんだけどね。
そして金髪さんと女の子の存在にようやく気づいた紅眞。ギンガ団のことで頭がいっぱいで気づかなかったな?


「2人とも、入口前で何やってるの…………ってまたなんか増えてるし」


部屋の窓から私たちが帰ってきたことに気づいた碧雅もやって来た。その口にはソーダ味の棒アイス。なんだかんだ全員集合だ。
一応紅眞を回復させて、金髪さん達も部屋に通して説明をした。


「というわけなの。今日はおやすみって言ったけど、発電所に行きたいんだ」
「俺はいいぜ!」
「反対はしないよ、この子のためなんでしょ」


思うことは皆同じ。
目指すは谷間の発電所だ。


「……うん、ありがとう!」


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