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『姉ちゃん、寝ちゃったのか?』


兄ちゃん、と仲間の声でうっすら目を開ける。ボール越しにユイを見ると、器用に椅子で横になって寝ているようだ。人型になり軽く小突くが、反応無し。


「うん、寝てるね」
「マジかぁ〜って寒っ!」


同じく出てきた紅眞だが、予想より外が冷えているようで身震いしている。


「なんでケロっとしてんだ兄ちゃん!外寒いぞ!」
「僕こおりタイプだしね。ていうか鼻水が出てる、拭きなよ」
「お、おーありがとう……。てことでマフラー貸してくれ兄ちゃん!」


何が“てことで”だ、と突っ込む前にマフラーを取られ、自分と僕の2人の首に巻き付けるこのヒヨコ。おい。お前ほのおタイプだろ。


「気持ち悪いんだけど」
「あったけー!」
「はぁ……」


手のかかる弟ができた気分。うるさい。目の前の主人は目覚める気配が無いから、良しとしようか。治療中のライトは未だ点灯中だった。椅子はユイが占領しているので、床に座る。


「…………。」


しばしの沈黙が続く。僕はあまり話すのは好きじゃないし、時間も遅いため起きているのは僕達くらいのものだ。流石に寒そうだったので、ユイには毛布をかけて原型に戻した紅眞を押し込んだ。初めは驚いてたけどすぐに馴染み、目をとろんとさせている。よし、これで解放された。

さすがに眠気が襲ってきたのだろう、今にも眠りそうな声で話しかけてくる。やはりあのラルトスが気になってそっちも眠れてなかったようだ。


『だいじょうぶだよなぁ、アイツ』
「…………。」
『ねえちゃん、すごくつらそうなかおしてたよな。ことぶきでもおこってた』
「……うん」
『にいちゃんも、つかまりかけたんだろ?』
「厳密に言えばユイに捕まったけどね」
『へ?』


そういえば話してなかったか。とはいえ、ユイの経緯も話さなきゃいけないし、本人が起きている時が良いだろうとそれとなく話を終わらす。


「その話はまた今度、本人が起きてた方がいいでしょ」
『んーそうだなぁ……ふわぁ……』


たどたどしたかった口調は更にゆっくりに、今にも寝そうに目をつぶってうつ伏せになっている。

そして独り言のように、小さく、小さく呟いた。


『……きめたぞ〜……おれ、が……ふたり……まも……るか…………』


ぐぅ〜


「あ、寝た」


今のところ猪突猛進で幼いちびヒヨコだけど、どうやって守ろうというのか。そこまで僕も弱くはないつもりだけど。紅眞の種族はアチャモ。これから経験を積んで進化する事だってある。潜在能力は高いんだから、ゆっくりと強くなればいい。


「……ちゃんと鼻拭いて寝ろっての」




ユイは大丈夫。僕が守るのだから。


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