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クロガネジムの中は専門タイプは岩と言うだけあり、大きな岩がたくさん配置されていた。奥に進むと整地され線が引かれた、所詮バトルフィールドと呼ばれるステージが姿を現した。事情を説明されたらしい審判さんに指示された場所に立ち、ヒョウタさんと向かい合う。
「さっき言った通り使用ポケモンは1体。どちらかが戦闘不能になった時点でバトルはおしまいだ。準備はいいかい?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
使用ポケモンは1体。今回は碧雅か紅眞のどちらかがお休みしなきゃいけない。
どちらかを出すかは私の判断に委ねられている。
「それではこれより、ヒョウタ対チャレンジャーユイとのポケモンバトルを始めます!」
笛の音と共に審判の旗が切って落とされた。
バトル……スタート!
「頼んだよ、ズガイドス!」
『おうおうおう!任せとけヒョウタぁ!』
向こうが繰り出したのはズガイドスと呼ばれたポケモン。小さな恐竜のような見た目をしていて、あの丸くて青い頭が目に入る。頭突きのようなモーションを行っているあたり、あれがズガイドスの武器なんだろう。分かりやすい分だけ強力に違いない。
緊張で鼓動が大きくなってるのを感じた。落ち着け、深く深呼吸をして、いざ、
「お願いね……碧雅!」
今回は碧雅を出すことにした。紅眞の残念そうな顔が頭に浮かぶけど、うううごめんね……!
最初のポケモンだからこそ、最初のジムで戦ってみたいから!
こおり対いわ。
相性は決して良くないけど、きっと、大丈夫!
「へえ、グレイシアか、珍しいポケモンを持ってるんだね」
「一番最初に仲間になってくれたんです。相性は悪いですが、負けませんよ!こごえるかぜ!」
見るからに危なそうな頭部からの攻撃を避けるため、遠距離で攻めるのが得策だろう。霙を纏った冷たい冷気がズガイドスに降り注ぐ。
「ズガイドス、耐えてロックカットだ!」
光の筋がズガイドスの周りを覆い、まるで宝石の原石が磨かれているように光り輝く。雄叫びをあげたズガイドスが小柄な体格に合わない重い足音を響かせながら突進してきた。こごえるかぜを受けたはずなのにものともしてないなんて……流石ジムリーダーのポケモン。けど、ダメージは確実に与えているはず。
「でんこうせっかで避けて!」
『分かってるよ……っと!』
……肉眼で捉えるのが難しいレベルのスピードにも関わらず、ズガイドスはこっちの動きを正確に読み突撃してきた。あと一歩碧雅が遅かったら……。ごくりと唾を飲む。
「こちらもそろそろ動こうか。ズガイドス、がんせきふうじでグレイシアを止めろ!」
『あーらー……よっと!』
大きく頭を地面にぶつけたと同時に無数の岩が碧雅に降り掛かってきた。避けてはいるもののその動きは徐々に制限され、ついには岩に囲まれ身動きが取れなくなってしまった。
「ズガイドス、しねんのずつきだ!」
「!碧雅、バリアー!」
『ぐっ……』
咄嗟にバリアーを展開したおかげでダメージは多少減っただろうけど、それでもダメージが大きいことに変わりはない。
「碧雅……!」
『……まだ平気、さっさと片付けるよ』
彼の闘志は消えていない。真っ直ぐな目が私を見つめる。自然と私も頷き、ズガイドスを見つめる。
負けたく、ない!
「あられ!」
室温が一段階下がり、氷の粒がズガイドスを襲う。トレーナーのいる地点まではあられの影響が来ないのが碧雅のコントロールの上手さを物語っていた。あられを避けながらずつきを仕掛けてくるものの、碧雅は軽々とそれを避ける。グレイシアについて調べといてよかった……!
「……なるほど、“ゆきがくれ”だね。命中率を下げに来たか」
「それもありますが、本命はこっちですよ。碧雅!とどめのーー」
ズガイドスから十分距離をとって、口を大きく開いた。
そこから放たれるのは、こおりタイプ最強の技。
「“ふぶき”!」
れいとうビームとは威力が桁違いの氷の息吹がズガイドスに直撃する。白い煙が晴れた先には、ズガイドスが倒れている姿と、堂々と立っている碧雅の姿があった。
「ズガイドス戦闘不能、グレイシアの勝ち!よって勝者、チャレンジャーのユイ!」
「ーー勝っ、た?」
『……しっかりしなよ』
プツンと緊張の糸が切れ、足の力が抜けて地面にぺたりと座り込んでしまった。呆れたように戻ってきた碧雅には泥や砂埃の汚れがついている。お疲れという意味を込めて体を撫でてやればそっぽを向かれた。照れてるな、これは!
「ズガイドス、ありがとう。ゆっくり休んでくれ。
…………立てるかい、ユイちゃん?」
ヒョウタさんもこっちに来てくれて、心配そうに笑いながら手を差し伸べてくれた。慌てて大丈夫ですと勢いよく立ち上がれば面白そうに笑ってくれた。
「君たちの強さと絆、しかと見させてもらったよ。おめでとう!さ、勝利の証としてポケモンリーグ公認のジムバッジ、コールバッジを君に渡すよ」
ピカピカに磨かれた綺麗なバッジがトレーの中て輝いている。ようやく、勝てたんだという実感が湧いてくる。
私たち、ジムリーダーに勝てたんだ……!
「ありがとうございます……!」
コールバッジ、ゲットだぜ!
その後炭鉱に押しかけたお詫びも言い、ジムを後にした。
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