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次の朝、私たちは当初の予定通りトレーナーズスクールに向かった。朝ごはんも勿論紅眞お手製、でも私も少し手伝うことができた。といっても盛り付けが主だったけどね。
さてスクールはどこにあったのかというと、なんと大通りを挟んだPCの向かい側。こんな近くにあったんだ。


「ええどうぞ。中の物は自由にご覧になってください。わからないことがあったら質問してくださいね」


先生らしき女性に許可を貰い図書室に通される。生徒達は丁度実習に行っているらしく、道中誰にも遭遇しなかった。


「ねえ、折角だから2人も勉強してみようよ」
『紅眞はともかく僕はそんな馬鹿じゃないし』
『それどういう意味だ碧雅兄ちゃん!?』


とはいえボールからは出てくるようで各々図書室を見て回っている。外には出ないように釘を刺し、私は目に付いた本を取る。これはどうやらポケモンのタイプについて記述された本みたいだ。隣を見れば木の実についての本やシンオウ以外の地方のポケモンについての本もある。
……これ、どのくらい読めばいいんだろう。




◇◆◇




「ーーー……っあー!疲れたー!もう無理!寝る!」


2時間くらいざっくりとだけど読みまくった。一気に頭に叩き込ませたから糖分が欲しい。ポケモンの生態やタイプと使用技は図鑑にも載っているから、とりあえず木の実の効果やタイプ相性、状態異常について重点的に調べたつもり。内容は頭からぶっ飛んでるけど、やらないよりはマシでしょうと言い聞かせる。机に突っ伏して倒れてる私を見て様子を見に来た先生が心配していた。


「あなた、大丈夫?随分たくさん読んでいたのね。少し休んでから出発していきなさい」
「ありがとうございます……」


疲れている私を気遣ってか先生はそのままいなくなった。それを見計らって、碧雅が人型で本を読みながらこっちにやって来た。


「ごめん、ちょっと休ませて……」
「……仕方ないな。じゃあ30分休んだら行くよ」


そう言いつつも彼の目は手元の本に向いているから、本の内容が気になって時間を引き延ばしたんじゃないかなと予想する。紅眞は流石に暇らしく、日当たりのいい机で寝そべってる。

そういえば、紅眞の異常なスピードがどうしても気になったからアチャモについても調べてみたんだけど、どうも納得のいく記述は見られなかった。一体原因は何なんだろうとうつ伏せになりながら紅眞を凝視してると、視界を本の頁が覆った。


「これ、みてご覧」


読んでいた本を私の前に出しある単語を指していた。
読めと彼の目が告げている。先程まで山のような文字を見ていたからとても嫌だったけど、逆らうのはもっと嫌というか怖いから文字に立ち向かった。書かれていたのは、「隠れ特性」という言葉。なにそれ。


「詳しいことは明らかにされてないけど、ごく希に通常の特性とは違う特性を持ったポケモンが生まれることがあるみたいだよ」


ちなみにアチャモの隠れ特性は「かそく」
時間が経過することに素早さが増していく特性だから紅眞の特徴とぴったり合うと思うけど。


隠れ特性か、そんなものもあるんだね。ポケモンって奥が深い……。特性についても勿論調べたけど、それは知らなかった。調べが足りなかったのかもしれない。少しずつ覚えていくしかないな。


「よく分かったね、私が紅眞について調べてたの」
「……別に、目に付いただけだし」


そう言いまた本に目を移しこちらから離れていく。もしかしたら、碧雅も紅眞のことが気になって調べていたのかも。お礼を言ったら怪訝な顔をされたけど、彼なりに仲間を気にかけているんだなと自己完結することにした。さて、そろそろ本を片付けなきゃ。



紅眞も手伝ってくれたこともあり、片付けはすぐに終わった。なお碧雅はあのまま読書に夢中になってた模様。昨日もPCに置かれてる雑誌とかも読んでたし、またこういう施設があったら寄ってあげよう。

改めて先生にお礼を言うと、これからについて聞かれたので当面の目的を言う。


「そう、クロガネシティに行くのね。あそこは岩タイプのポケモンを使ってくるから苦戦するでしょうけど、応援してるわ!」
「はい、ありがとうございます!勝てるように頑張ります!」
「ふふ、あなたなら大丈夫そうね。それと、最近変な人たちが彷徨いているから、あなたも注意してね」
「……変な人、ですか?」
「ええ、水色の髪に変な服を着た人達よ。ギンガ団と名乗って各地に現れてるみたいなの」


浮かんだのはシンジ湖で遭遇したあの人。これから先、対峙することがまたあるのだろうか。


「それに昨日は茶色のコートを着た男性がこの辺を彷徨いてたって聞くし、生徒達に何か起こらないか心配だわ」
「……あ、あはは……」


その人はおそらくハンサムさんだ。やっぱりあの人の挙動は他の人にも不審者にしか見えないんだろう。心の中で気をつけてくださいねと警告をしながら苦笑い。いつか間違って逮捕されないか真面目に心配だ。


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