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「さぁて、どうしようか」


本日の宿であるPCの1室でタウンマップを開き、手持ち2匹と一緒ににらめっこ。カード1枚で無料で宿泊、ポケモンの回復もさせてくれるなんて凄すぎるよPC。
ヒカリちゃん達は紅眞の一件のあと、各々の目的のために次の街に向かっていった。去り際にジュン君に次会ったらバトルだライバルって宣言された。何故。


「このまま北に向かえばソノオタウン、東に行けばクロガネシティ、西はミオシティ……。うーん、どこに行こう」


ミオシティはどうやら海を渡らないと行けないらしく、必然的に後になるから残る選択肢は3つ。個人的にはソノオタウンに行ってみたい。マップの説明文の「咲き誇る花の香りに包まれた花を愛する人々の街」って、絶対素敵な場所だと思うし。
温かい笑顔と花畑に囲まれたのどかな街の光景が目に浮かぶ。


『その前に、ユイはもう少しポケモンの知識をつけてもらわないと困るよ。今日やったバトルみたいにずっと図鑑見ながらやるわけにはいかないでしょ』
「そ、それは仰る通りでございます……」


碧雅から痛い一言をいただき一瞬で花畑が消え去った。自分でも痛感していたから尚のこと刺さる。ポケモンという存在自体は知ってはいたけど、この知識不足はなんとかしたい。バトルもまだ1回しか戦えてないけど、これに関しては回数を重ねて慣れていくしかないと思うし、まずは知識だ。


『なーなー、それならさ!ここいいんじゃないか!』


紅眞が足を使い指差したのはクロガネシティ。足の先を見てみると、ポケモンジムという表記があるのが見えた。


『俺聞いたことあるんだ!ジムにはすごく強い奴がいるって!俺そいつと戦いたい!』
「?ジムにポケモンがいるの?」
『……紅眞はもう少し具体的に言えるようにしなよ。ジムっていうのは要はバトルするところ』


そう言う碧雅の説明もなかなかアバウトだぞ。ジムことポケモンジムとは各地方に8つ存在するポケモンリーグという施設から公認された建物のことで、様々なタイプエキスパートのトレーナーがジムリーダーとして、私のようなトレーナーとバトルをするらしい。手に入るジムバッジはトレーナーの実力の証でもあり、リーダーも人気が高い人が多いのだとか。
話を聞いている紅眞の瞳がキラキラと光っている、バトル好きなのかな。


「なんか、楽しそうだねそれ!」
『だろ!だろ!?ジム挑戦しようぜ姉ちゃん!』
「ジムならバトルの経験を積めれるし、ポケモンの知識も付けられるかもしれないし……うん、いいかも!」
『うおっしゃああ!!じゃあ明日からクロガネシティに向かってーー』
『待った』


ストップをかけたのは勿論彼。いい感じに話が進んでたのにどうしたんだろう。


『ジムに挑戦するのは構わないけど、それより前に寄らなきゃいけない場所があるから、まずそっち行ってからね』
『「えー」』
『えーじゃない』
『兄ちゃんのケチ!』
『ケチで大いに結構』


どこ行くのよと聞けば学校と返答が来た。学校?ポケモンの、学校?正式名称はトレーナーズスクールと言うらしく、トレーナーになることを目標にした子どもたちが通う学校らしい。卒業しトレーナーになった人達もたまに訪れることもあるということで、なるほど、私もそこで基礎を学ぼうということか。

そもそも他のトレーナーは私とは違いみんな基礎がわかってる前提でジムに挑んでるだろうし、無知な私が行ってもジムリーダーと戦うどころか他のトレーナーにやられてしまうのがオチに違いない。短パン君に勝てたのは相性と運が良かっただけだろうし。戦いたがってる紅眞には悪いけど、少し待ってもらおう。
なんとか説得して、わかったと了承をもらった。


「じゃあ明日はトレーナーズスクールに行ってからクロガネシティに行くことにしようか!そういえばスクールってどこにあるの?」
『コトブキシティにあるよ。紅眞を探してる時に見つけといた』


あの間に見つけておいたのか、その観察眼の広さに感服しているとお腹すいたと言い人型になった。時計を見るといい感じの晩ご飯の時間。けれど人型になる理由はどこにあるのかなと疑問を抱きながらポケモンブーズを用意しようとすると、人間のご飯がいいと言われた。


「前から興味あったんだよねー。てことで作って」
「唐突過ぎやしませんか」
「僕、このパスタっていうのが食べたい」
「おーい話聞いてますかー!」


部屋に置かれてた料理本から今日のメニューをリクエストする碧雅。マイペースすぎてついてけない。ちなみに部屋にはキッチンもついているので自炊は一応可能だけど、材料は無いから買いに行かないといけない。
すると、紅眞が立ち上がった。


『姉ちゃん、俺作ってみてもいいか?』
「紅眞が?大丈夫?」
『おう、ちょっと食材買ってくる!」


そう言い残し、びゅーんと光の速さで人型になり窓から外に出てしまった。右手に私のお財布を持って。
初めて会った時も思ったけど、本当に紅眞は素早くて身軽だよねえ。そして僅か数分後、袋を下げてまた窓から侵入し帰ってきた。


「ただいまー!よーしやるぞー!」
「速っ!しかもちゃんと買えてる!」
「俺だって買い物くらいできるぞ姉ちゃん」


ちゃんと会計してあるし、この子ほんとに元野生なのか疑わしい。碧雅もそうだけど、人間の文化に詳しい気がする。現に紅眞はそのまま慣れたようにキッチンに向かったし、碧雅は部屋のテレビを普通にリモコン使いながら見てるし。実は君たち本当は人間なんじゃないの。
と邪推しながらテレビを見て時間を潰していると、いい匂いがキッチンから漂った。匂いを嗅いだせいで、私もお腹が減ってきた。


「待たせたな2人とも!できたぞー!」
「遅い」
「わー!待ってましたー!」


私も手伝おうかと声をかけたけど、自分でやりたいからいいと断られてしまった。ちゃんとできてるか不安だったけど……正直に言おう、私が作るより遥かに美味しそう。女子力負けた気分、いや負けてる。ちゃんとサラダとスープまで用意されてるし。美味しそうに盛り付けられたアラビアータを眺めながら、いただきますと手を合わせぱくりとひと口。


「………………。」


お、美味しすぎて言葉が出ない……!なにこれ、今まで食べたことない!コウキ君のお粥といいアイスクリームといい、ポケモン世界の食べ物ってなんでこんな美味しいの!?あまりの美味しさに感動してる様子をみて、紅眞が得意気になった。


「ふっふーん。どうだ、美味いだろ!今回はクラボの実も入れてるからちょっとピリ辛だけど、悪くないだろ?」
「うんうんうんうん!いくらでも食べられちゃう!神!ほんとに美味しいよ、ありがとう!」
「…………辛い」
「このピリ辛が美味しいのに〜」


碧雅にはちょっと辛すぎるみたいだけど、私はとっても美味しいと思う。スープとサラダも美味しいし、毎日ご飯を紅眞に作ってもらいたい気分だ。いやしてもらおう、料理も密かに教えてもらおう。ちなみにキッチンの使い方は研究所に保護されている時、コウキ君が料理をしている所を見たことがありそれで覚えたからだとか。
碧雅は何となくで操作してたみたい。人間の文化に適応できてる君たち凄いね。
改めてポケモンの能力の高さに感服しながら一晩を明かした。


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