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ハンサムさんと別れ、私達は十字路の真ん中まで来た。碧雅の早歩きが速くて追いつくの大変だったんだけど!息切れしながら恨めしい目で碧雅を睨みつけるけど、涼し気な顔でスルーされた。
ムカつく。


「もうちょっとゆっくり歩いてよね!」
「ユイに体力がないのが悪い。あのまま自称国際警察に捕まって話を聞いてるよりはマシだったでしょ」
「こらそんなこと言うんじゃありません!助かったのは認めるけど」
「そっちも大概だよね」


いや、あの人はいい人なんだろうけど、どことなく不審者臭がするからどうにもね!?次からは普通に接することが出来ると思う、多分。


「それよりアチャモの匂い感じない?コトブキシティに向かってたはずだけど」
「一応探ってはいるけど、色んな人間の匂いが混ざってるから、見つけるのは難しいね。僕の鼻はそこまで利かないから」
「うーん、あの子が行きそうなところとか、無いかなあ」


今はおやつの時間だし、あの子逃げ出したままだからお腹すいてるんじゃないかな。ほら、ちょうどアイス屋さんがあるし、美味しそうな見本も飾ってあるし、気になって寄ってきたりしないかな!うーん、流石にないか。

…………って、待って、なんで君がふらふら近寄ってるの碧雅君。慌てて追いかけると碧雅は物珍しそうに見本を眺めてる。


「ねぇ、これ何」
「これはね、アイスクリームって言って冷たくて甘い食べ物のことだよ。バニラやチョコ、抹茶とか色んな味があるんだけど、ここにはバニラしかないのかな?」
「いらっしゃいお客様!ウチではモーモーミルクから作ったアイスを売ってるんですよ!」
「モーモーミルク……へぇ!美味しそうですね!」
「アイス……」
「まさか、食べてみたい、とか?」
「…………。」


こくんと頷く氷少年。まじか。心なしか瞳がキラキラしてるのは気のせいか。元が野生だったからかもしれないけど、アイスの存在を知らないなんて……!時間も丁度いいし、休憩がてら買ってしまおう!

店員さんに頼み受け取ったアイスはひんやりしていてとても美味しそうだ。ご丁寧にスプーンもついてる。2つのうち大きめのアイスを碧雅に渡すと、クンクンと匂いを嗅いでいた。ちょっと可愛いと思ったのは内緒。


「こうやって、スプーンでアイスを掬って食べるの」
「………………。」
(無言で食べてらっしゃる)


碧雅がこんなにアイスに興味を持つとは思わなかった。面白いの見れたなあ。溶けないうちに私も食べようと程よく溶けてきた部分を食べる。

ミルクの自然な甘さと冷たさがたまらなく美味しい。ちらりと碧雅を見てみたら、もうコーンの部分にまで到達していた。食べるの早いなおい。
その様子を見てくすりと笑いながら声をかけてみた。


「美味しいね!」


これは私が元の世界で食べていた色んなアイスの中でも上位に入るくらいの美味しさだ。こんな素晴らしい物があっただなんて、恐るべしポケモン世界。碧雅は集中して食べてるから、聞こえてないだろうなと思っていたけれど


「……うん、美味しい」


小さくだけどそう笑って応えてくれた。すごく優しい顔になってる。買って良かったなあ。食べ終わったらしい碧雅はじーと私のアイスを見つめてくる。何、まだ足りないと?バトルに勝ったご褒美ということで、財布からまたお金を取り出した。


「ほら。それでもう1個買ってきなさい」
「へえ、物分りいいんだね」
「素直にありがとうと言おう?」


今はアイス食べて機嫌がいいから別にいいけどね!碧雅がどことなく嬉しそうにお代わりを買いに行く。さて、これを食べ終えたらまたアチャモを探さないと。




『うーまそー!』
「………………。」


いましたよアチャモ。私の食べてるアイスをキラキラとした眼差しで見てる。さっき寄ってこないかなとは言ったけど、ほんとに食べ物で釣れると思わなかった。


『走りまくって疲れて腹減ったんだよな。なぁなぁ姉ちゃん!一口くれよ!』
「うぐっ……か、可愛い……」


ぴょんぴょん跳ねてアピールするアチャモ。うわああ可愛い!あげる!あげちゃう!メロメロになった私はしゃがみこんでまだ手をつけてない部分のアイスを差し出す。アチャモが小さな嘴を大きく開けて器用に食べ始めた。


『うんま!!これ、モーモーミルクだな!』
「そうだよ。よく分かったねアチャモ」
『へへーん。俺、舌には自信あるんだぜ!』


えっへんと自慢げなポーズをとるアチャモ。腕がないけど胸を張っているのはなんとなく分かる。おいしそうに食べる様子をまだ見ていたくて、残りの分もあげていると碧雅がお代わりのモーモーアイスを片手に戻ってきた。流石にアチャモがいるのには驚いたみたい。


「……何やってるの」
「アチャモと親睦を深めてる」
『姉ちゃんからアイスをもらってる!』
「ああ、そう……」


何ですかその目は。アチャモは食べ終わったらしく、ごちそうさまでしたと元気よく言っていた。アイスも食べれたし、アチャモも無事見つけられたし、一石二鳥!あとは博士達が来てくれるのを待つだけ!折角だから、もう少し話してみることにしよう。


「アチャモ、どうしてシンオウに来たの?君ってホウエン地方のポケモンって聞いたけど」
『んえ?えーっと、俺はな、武者修行の旅に出たんだ!』
「修行?」


どうやら彼はホウエンの他にも色んな土地を巡り、自分を鍛えたいという思いでここまで来たとのこと。すごい行動力だね。その小さな身体に秘めた真っ直ぐな意志が眩しい。


『でもよー、シンオウまで来たはいいんだけど、みんな俺を見かけたらポケモンけしかけて追いかけてくるし、攻撃もしてくるし、疲れちゃったんだ!そんでこの前、昼寝してるところをあの白ひげじーさんに捕まっちまったってわけだ』
「博士はアチャモを保護しようとしてただけだよ。もうしばらく経ったら、君をホウエンに送り返そうとしてくれてるみたいだけど」
『やだ!!』


キッと瞳を尖らせるアチャモ。送り返されるのが嫌で逃げ出したの?


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