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駆け足でマサゴタウンまで戻ってきて思ったけど、私今朝ここを出発したんだよね。早数時間でただいまだ。


「ジュンったら、もう研究所についたのかしら。もう、無駄に足だけ速いんだから!」
「……ハァ……ハァ……ヒカリちゃん……。ちょっと……やす、ませて……」


なんでヒカリちゃんは息一つ乱れてないの!?湖からマサゴタウンまでノンストップで走って、私の体力はもうゼロだ。


「わあユイさん!?大丈夫!?」
「ちょっと休めば平気……ヒカリちゃん、体力あるんだね」
「そんなつもりは無いんですけど、ジュンのせっかちにいつも付き合ってるからかな」


それだ、間違いなくそれだ。ジュン君足速いから、自然とヒカリちゃんも速くなっちゃったんだね。


「あたし中で飲み物貰ってきます!ユイさんはここで休んでてください」


そう言い残しヒカリちゃんは研究所に入っていった。……うん、超良い子。


『あの人間見てニヤニヤしてるの完全に変質者だけど頭大丈夫?』
「ワンブレスでどうもありがとう。私は至って正常だよ」
『ついてくの失敗だったかな……』
「ねえそれ結構ショックだからやめて!」


割とガチトーンだし。だってヒカリちゃん良い子だし可愛いしで文句ナシの女の子なんだもん!私が男だったら惚れちゃうよ。幼馴染の2人が正直羨ましい。


「っきゃあ!」


突如聞こえてきた叫び声。ヒカリちゃんの声だ!

何事かとドアを開けると、本日二回目のごっつんこと対面した。またジュン君かと思ったけどあの時と違い頭が痛くないし、衝撃も少ない。
……というか、柔らかい?


『ぎゃむっ』


ぶつかったのはオレンジのヒヨコみたいなポケモン。
もふもふの毛と鶏冠、つぶらな瞳。涙目になって足をばたつかせてるのが非常に可愛い。抱きしめるとぽかぽかしそうだ。
このポケモンは……


『アチャモ?』
『いっつつ〜!うー、いってぇ』


碧雅がポケモンの名前らしきものを呟いた。ヒカリちゃんは入口付近で身構えるような姿勢で立っていた。このポケモンが入口に勢いよく向かってったから、それに驚いて声を上げたんだ。
アチャモってポケモン、私が研究所にいた時はいなかったよね?ハテナマークが浮かぶ中、奥からジュン君の必死な声が響いた。


「ユイ!そいつ捕まえてくれ!」
『わりぃな姉ちゃん!俺こっから出なきゃいけないんだ!』
「ちょ、踏まないだっ!?」


頭を思い切り踏まれ、ぴょんと飛んだアチャモ。そのまま華麗に着地すると、凄まじいスピードで思い切り駆け抜けた。は、速い……嵐のようなアチャモだな。
悔しそうなジュン君とため息を吐いたナナカマド博士が出てきた。


「逃げられてしまったか……おや、ユイ君?何故ここに?」
「ヒカリちゃんにお礼を言いにフタバタウンに向かって、そのままここまで一緒になったんです」


そうか、と博士は3人とも中に入れ、そこで事情を説明してくれた。


「あのアチャモはコトブキシティで見つけてな、そのまま私が保護して来週くらいにホウエン地方に送り、元の住処に帰してやる予定だったのだが、あの通りやんちゃな子でな……。先ほどジュンが触ろうとした時に暴れ、逃げてしまったというわけだ」
「わ、悪かったよ博士!」


博士はジュン君を呆れたような仕方ないような目で見た。みんなのおじいちゃんみたいだなと関係ないことを考えてしまう。


「この辺では珍しいポケモンだ、ハンターのようなトレーナーに捕まる可能性も高い。その前にアチャモを見つけ、保護してくれないかね」
「はい、もちろんです!」


少しは恩返しできるかもしれない!そうと決まればすぐ動かないと。あのアチャモ凄く速かったし、遠くに行くのも時間の問題だ。
手分けして探すことになり、ジュン君達はフタバタウンに、私はコトブキシティに向かい捜索を開始することになった。私は碧雅をボールから出してアチャモが保護されている間包まれていた毛布を差し出した。


「碧雅、アチャモの匂いたどれる?」
『なんでこんな事に……。辿れないことないけど、あんまりあてにしないでよね』


悪態つきながらも匂いを見つけたのか、北に向かって走り出した。タウンマップで確認すると、この先はコトブキシティだ。
私は軽く屈伸をし、気合を入れた。


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