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聞けばこの2人は昨日ポケモンを博士から貰って旅に出た新米トレーナーで、私が研究所で寝てる時にお使いを頼まれたらしい。届けに来た時は私が碧雅を探しに外に出た時と入れ違いになって、今まで会えてなかったみたい。

ジュンくんはヒコザル、ヒカリちゃんはポッチャマをパートナーに選んだとのこと。ちなみにコウキ君も2人と友達、所詮幼馴染みらしく彼はナエトルが手持ちなんだって、すごく仲が良さそうで羨ましい。この世界で友達、できるかな。


「オレはヒコザルといっぱい色んなトレーナーとバトルしまくって、ダディを超える強いトレーナーになるんだ!」
「あたしはバトルよりも、コンテストを極めたいって思ってるんです!ママが昔トップコーディネーターだったので、あたしも憧れてて」
「そうなんだ。2人ともちゃんと目標持っててすごいね!」
「えへへ。でもその前に、博士の役に立ちたいって話になって、シンジ湖に住んでると言われてる伝説のポケモンを捕まえようってことで今向かってるんです。……ほとんどジュンが言い出した事なんですけど」
「オレとヒコザルがいるんだから捕まえるのなんか楽勝だぜ」
「その前に出てくれるかもわからないでしょ」


困ったように笑うヒカリちゃんとふふんと得意げに喋るジュン君。しっかり者のお姉ちゃんとやんちゃな弟って感じだなこの2人。いいコンビかも、見ていて微笑ましい。でも伝説のポケモンって相当強いと思うんだけど、大丈夫なのかな。


「ユイさんはどうしてシンジ湖に?」
「シンジ湖で私のパートナー君に出会えたからね、もう一度見ておきたいなって思って」


ギンガ団の事は伏せとこう。ジュン君がパートナーという言葉に反応して、グレイシアだよと答えればしきりに見せろ見せろと言ってきた。ボールの中でジュン君の様子が見えていたんだろう、出す前からでも分かるくらい碧雅はすごく嫌そうな顔をしてた。
けど私は出すよ、ヒカリちゃんも見たがってるからね。


「うおーー!生グレイシア!!」
「可愛い!こっち向いて!」
「なあユイこいつ抱っこしてもいいか!?」
「あたしも頭撫でてみたい!」
「ぜひぜひ!」
『ユイ、後で覚えときな』


ごめんなさい許してくださいいい!!




そんなやり取りをしているうちにシンジ湖に辿り着いた。昨日の騒動で畔は少し荒れてしまってるけど、湖はいつもの静かな空間を取り戻していた。ちなみに2人にもみくちゃにされた碧雅はため息を吐いてまたボールに引き篭もりました。


「おい、あそこに誰かいるぞ」


ジュン君が指さした方向を見ると、水面を見つめている後姿が見えた。背が高いから、恐らく男性。3人で顔を見合わせながら近づいてみると、男性は声を発した。


「…………流れる時間、広がる空間。いずれ、この私アカギのものにしてやる」


ーー低い、けれどはっきりと耳に残る声。空気が重くなり、私たちに緊張感が走った。


「それまで湖の奥深くで眠っているがいい。伝説のポケモンとやら」


背中にあるGのマークに、空を薄くしたような色の短髪。ギンガ団の、人だ。男性は後ろにいた私たちに驚くこともなく、まるでそこにいたのが分かっていたようだった。「失礼、どいてもらおう」とジュン君に道を譲ってもらい去っていった。


「……な、なんだ、あいつ?」
「変な人……ユイさん、大丈夫です?」
「う、うん……」


無意識に息を止めていたらしく、深く息を吸い込んだ。目を合わせたらいけない気がして、男性がこちらを向いた瞬間視線を逸らしてしまった。
私のポケモンに関する記憶は友人から見せてもらったポケモンの一部だ。それもほぼうろ覚えだからゼロに等しいかも。知識が無くても、あの人はとても危険な人だというのが伝わった。なんというか、雰囲気が。


「ねえジュン、今日はやめておかない?」
「いーや!オレは絶対今日伝説のポケモンを捕まえ…………ってあーーー!!」
「どうしたのジュン君!?」


先程までの空気を壊すようにジュン君の大きな叫び声が湖に響く。驚いたムックルが飛び立った。


「オレ、肝心のモンスターボール持ってねえ!!」
『こいつバカすぎない?』


「こら」という意味を込めてボールを揺らす。ジュン君はボールがないとわかると博士に貰いに行ってくるとそのまま走り出してしまった。


「あーもーまた一人で行っちゃって!ユイさん、あたし達も行きましょ!!」
「ええ、ちょ!?」


有無を言わさず手を引くヒカリちゃん。ちょっと強引なところジュン君と似てる!走り出す前に水面を一瞬見て、ありがとう、とシンジ湖の主に心の中でお礼を述べ獣道を駆けて行った。


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