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ゾロゾロとリッシ湖の入口に進む傍ら、一人その集団の後ろ姿を見据える白。その双眼に映す先にあるのは、果たしてどのような未来か。
いやそもそも、何も映していないのかもしれない。何故なら彼は止めることができなかったからだ。
とはいえ、止められた先の未来が分からない以上、これから先起こることは避けることはできないのだろうが。所詮自分は紛い物だ。

上を見上げると鬱蒼とした薄暗い曇り空、はてはて、まるで空がこれからの運命を予言しているかのようだ、と彼は思う。

クスクス、と脳内で声が響く。


《止められなかったねぇ、白恵》
「……ぼく、やっぱりだめ?」
《ダメなわけじゃないさ。適材適所というやつだよ。今回は“彼”が関わっているのだから、ボクがいく。それだけのことだよ》
「でも、ぼく、いなくなっちゃうよ」
《うん、でもそういう約束だろう?ボクの体を“借りてる”のはキミなんだから、持ち主に返さないと。ちゃーあんと正規のルートで生まれてくればよかったのにねぇ?》


嘲るように笑うその声に、二色の双眼から雫がこぼれ落ちた。


「……やだよぉ、ぐすっ」
《えっキミ、いつの間に泣けるようになったのさ》
「……ひぐ、……おかあちゃん……」
《うっ、流石のボクも子どもに泣かれるのはちょっと。……うーん、ならこうしよう。ボクが出るのは今回のような非常時のみに限定してあげようじゃないか》
「…………。」


ごしごし。服の袖で擦った目元が赤くなっていた。


「ほんとー?」
《うんうん、本当だとも。ボクは優しいからね。それにボクが中にいた方が、色々都合は良さそうだ》
「あやしーなぁー」
《えー信用ないなぁ。やっぱりこの喋り方だと信じられなくなっちゃうか。さっすが胡散臭いことで有名な天下の“みーちゃん”様の喋り方だ!》


嬉々として喜ぶ声を他所に、「やくそくだよ」と運び屋は合図を出した。胸の前で手を組み、神に祈るように、縋るように。


「おねがいします、“しえ”」
《チッチッチッ。一つ違っているよ、白恵》


こてん。


無垢な白は小首を傾げる。その刹那、彼の瞳の色が一瞬だけ薄紫に変わる。


「今のボクは“イヴ”だよ、坊や」


幼さの残る顔立ちに似合わぬ大人びた笑みは、これまでユイと共に過ごしてきた白恵では無いことを示していた。


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