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「食材は璃珀たちが買ってるだろうから、私は当初の目的通り本屋に行こうかな。白恵、本屋まで行こー」
「ほんや……?わかった」


しゅっぱつ、ぽっぽー。さっきまで元気に走ってたのに今度は電車ごっこ……子どもって不思議。白恵もトバリデパートには初めて来たはずなんだけど、本屋がどこにあるのか分かるのかな?迷うことなく前を見据え自分が汽車になった様に真っ直ぐ進む白恵に続いてデパート内をうろつく。


「とうちゃーく」


しばらくフロアを歩いているととあるお店の前で白恵が止まった。たくさんの本が陳列されているそこは紛れもなく本屋さん。


「すご、ほんとに着いちゃった」
「ここでいいことがあるよ」
「……白恵は本を読むの好き?良かったら好きなの買ってあげるよ」
「ほんと?」


そういい子ども向け絵本のコーナーへ向かった。こういうところは見た目相応だなと可愛く思える。おっと、私も参考書を探さないと。次のジムがある街はここから近い所だとノモセシティとナギサシティ。距離的にはどちらも変わらないから両方の街の特色を調べて興味のある方に行きたいなと考えている。
ガイドブックを探している折他の本も気になり、それなりに広いこの本屋をぐるりと巡っていると、とある一冊の本が目に止まった。黒表紙でイラストも無い、ただこの本のタイトルらしき文字が金色で羅列されている。手に取ってみると意外に分厚く、ズッシリとしていた。


【幻のポケモンの存在意義とは】


(幻のポケモン?)


ディアルガやパルキアのような、伝説のポケモンとはまた違うカテゴリーなのかな。“幻”という好奇心を擽られる単語に興味が湧き、試しにページをはらりとめくってみた。


【“幻のポケモン”と聞き、諸君はどのようなポケモンを思い浮かべるだろうか。おそらく“しんしゅポケモン”のミュウや“ときわたりポケモン”のセレビィといったポケモン達だと思われる。彼らの力は我々の人智を超えたものであり、正に“奇跡”を模した力と言わん他無い。

例を一つ挙げるとすれば昔神隠しにあったと言われているウバメの森の子供の事件だ。その子供は10年前に突如行方知れずとなり懸命の捜索も虚しく生死不明とされた。だが10年後、行方不明になったままの姿でウバメの森の中で眠っているところをヒワダタウンの地元民が見つけたのである。外傷もなく身体に問題は無し、カウンセラーに診てもらった際も心理的外傷も負ってはいないという診断だった。後々に話を聞くと「セレビィが亡くなったおばあちゃんに会わせてくれた」と答えたのだという。
この子供の言うことを信じるのなら、正にこれは時を超え故人と再会したという“奇跡”である。

ここで気になったことは無いだろうか、“何故彼らはこの世界に存在しているのだろうか”?】


(セレビィ、ミュウ……)


時間や空間の神、以前教えてもらった天候を司るポケモンだったりとスケールがかなり大きいなと感じてはいたけど、“神隠し”紛いのことも起こっていたなんて……。私もこの世界の住人ではないからかもしれないけど、著者と疑問は同じだ。彼らは何のためにこの世界に存在しているのだろう。


【歴史の史料から読み取れる伝承や記録にはその土地に根ずいたポケモンへの敬意や畏怖を込めた文面がほとんどだ。それは時に未来の我々への警告も含まれ、物語性があるものは絵本として今の子供達へ語り継がれている。俗に言う伝説のポケモンと称されている彼らは、その土地特有の環境故か理由は未だ解明されていないが、生息が確認される場所は伝承で伝えられた地方のみであり同個体は存在しない。

だが幻のポケモンは少し異なり、母数は少ないがその存在は世界中で確認されている。そして興味深いことに目撃された地点を点として示していくと、必ずどのポケモンも特定の地方に目撃数の偏りが生じるのだ。一般のポケモンに比べると明らかに人智を超えた力を有しているが、伝説のポケモンに比べると必ずその土地に存在しなければならない謂れは無い(近年ではディアンシーと呼ばれるメレシーが突然変異で誕生したと言われるポケモンが存在することが確認されたが、ポケモンという常に進化し続ける生物上、一部例外が存在することも念頭に置いていただきたい)。ならば彼らは何故存在するのか?

私はここで一つの説を提唱したい。そもそもの前提として、この世界を創り出したのは通説では「アルセウス」であり、アルセウスが時間と空間の神ーーディアルガとパルキアを生みだした(一説によるともう一体、隠された神が存在すると言われているが、今回この件について深くは触れないでおくことにする)。そして次に知識・感情・意志の神としてユクシー、エムリット、アグノムを生み出し、「心」という概念を与えた。】


(もう一体の神?)


世界創造とか、心とか、もうポケモンはなんでもありだなぁ。元々ゲームの話なんだから、壮大なのは致し方ないのかもしれないけど。それにしても、ディアルガやパルキアに並ぶもう一体の神というポケモンが少し気になる。時間と空間に並ぶ、隠された神が司るものは……何なんだろう?


【この内容で分かる通り、アルセウスは全ポケモン、引いては生物の中で最高位に位置し、神とされる。続くのはディアルガとパルキア、更にその下にユクシー達となっている。このように伝説のポケモンの中にもある種の格付けのようなものが存在していることは想像に固くない。
そしてアルセウスが宇宙を創った際に結晶化した自身の力の欠片を世界に散りばめ、始まりのポケモンとして世界に落としたのが全てのポケモンの遺伝子を持つと言われるミュウだ。そして次々にポケモンが生まれ……紆余曲折を経て現在に至る。

話を元に戻すが私が幻のポケモンの存在する理由として示す一つの説とは、──】


「ユイちゃん」


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