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「お願い、紅眞!」
『っしゃあ!』


元気良く紅眞がフィールドに姿を現した。紅眞を見たスモモちゃんの目が輝く。


「ワカシャモですか!初めて相対します!」
〈スモモ。だからと言って直接手合わせするのは控えるように〉
「わ、分かっています……」
(テレパシーなのかな)


緋翠のようなエスパータイプのポケモンしか使えないと思っていたけど、ルカリオも使えるんだ。


『よろしく頼むぜ、ルカリオ!』
『ワカシャモか、相手にとって不足はない。私とて戦士の端くれ、そなたと戦えることを光栄に思おう』
(……このルカリオ、擬人化したら間違いなくイケメンな気がする)


めちゃめちゃイケメンオーラ放ってるよルカリオ。そうこうしているうちに審判のバトルスタートの掛け声が告げられ、最終戦の幕が上がる。
先に動いたのはルカリオ。素早い動きで紅眞に接近し両腕の爪が鈍く銀色に光り輝く。


「メタルクローです!」
「にどげり!」


メタルクローの殴りとにどげりの蹴り。拳と脚の攻撃がぶつかり合い衝撃波が生まれる。続けてボーンラッシュの指示を受けたルカリオが青く光る細長い骨棒を生み出し棍棒のように振り回す。軌道が読めず数発喰らってしまった。


「本来はガラガラ等の骨を扱うポケモンが使用する技ですが、ルカリオは波導を操ることでこの技を再現可能にしているんです」


ボーンラッシュはじめんタイプの技。ほのお対策はバッチリということか。そして、紅眞の特性が発動する。一段階上がった素早さでフィールドを駆け、ルカリオに接近する。突然スピードアップした紅眞にスモモちゃんもルカリオも驚きを隠せないようだ。


「ブレイズキック!」
「!ボーンラッシュで牽制します!」
『当たらねぇよ!』


その言葉通りボーンラッシュを躱しブレイズキックがルカリオに命中する。


「はっけい!」
『……はぁ!』


抜群技を受けても怯むことなく果敢に挑むのは流石ジムリーダーのポケモンと言うべきか。炎を振り払いはっけいが紅眞の身体を突く。人間で言うみぞおちに近い部分に命中してしまいくぐもった声を上げ紅眞が膝を着いた。


『いってて……身体も動かねぇ……』
「まひ効果が出ましたね」
「そんな……!」


それじゃあ得意のスピード勝負に持ち越すことが出来ない。他のメンバーに変えようと思ったけど晶は体力がギリギリで、緋翠は決定打がない。どうするか頭でグルグルと考えている間にも時間は刻々と過ぎていき、スモモちゃんもずっと待ってくれるほど優しくない。ルカリオに再度ボーンラッシュの指示を出し襲いかかってくる。
思考中で判断が遅れた私に対して紅眞が痺れる身体をゆっくりと起こし立ち上がった。


『……まだ、やれる……!ユイ!』


そうだ……紅眞は諦めてない。私が信じなくてどうするんだ!


「!ほのおのうずを真下に!」
『何か仕掛けてくるようだな』
「あなたたちがバッジを渡すに相応しいか、この目で見定めさせてもらいます!ルカリオ、ボーンラッシュでほのおのうずを打ち消します!」


真下に放ったほのおのうずが紅眞を覆い、炎の壁になる。ルカリオがボーンラッシュでほのおのうずを打ち消し、紅眞の姿が顕になるのに時間は大してかからなかった。


「これでおしまいです!」
『覚悟!』
『……へへ、見え見えだっつーの!』


痺れている身体が動き、ボーンラッシュの追撃を難なく躱した。偶然かと更に追撃を入れるけど、それも爪を使ったり脚で飛び交ったり多様に、器用に躱していく。私は特に指示を出てないのに、どうしてあんなに動けるんだろう?
疑問が浮かぶと同時に図鑑の音が鳴り、見てみると紅眞が新しい技を覚えたようだった。その技の名前は“みきり”、使うと相手の技を全て躱し受けないようにする技。


「みきり……」
『ハァ……ハァ……ぐっ、動かねぇ……!』


技の効果が切れたか、受けたダメージと身体の痺れで紅眞は再び膝を着いてしまった。スモモちゃんはその隙を見逃さずルカリオに指示を出した。


「トドメは格闘家らしくかくとう技で決めましょう、ドレインパンチ!」


……まひで痺れてしまっているとしても、かそくの効果は現れている。速さは……まだある!


「もう一度みきり!」
『……おう!』
『まだ動けるというのか!?』
「ルカリオ!」
「こっちもトドメ!ブレイズキック!」


なんとか身体が動きはっけいを避ける。ルカリオが体勢を整える前にブレイズキックが命中し、フィールドに爆発が生じた。煙が晴れ、ルカリオは力無く地面に伏していた。
私が戦っていた訳じゃないけど、心臓がまだバクバク言ってる。か、勝てた……!審判のバトル終了の声と共に紅眞に駆け寄った。


「紅眞!大丈夫!?」
『ビリビリしてっけど、なんとかな。やったな、へへ』
「……うん、うん、ありがとう。緋翠も晶もありがとう」
『はい!お疲れ様でした、マスター』
『元々相性の利はこちらにあったんだ。勝って当然だろうちんちくりん』


相変わらず素直じゃない……。晶のコメントに苦笑いしているとスモモちゃんがルカリオを労いつつ、一緒に私の方に寄ってきた。持っていたトレーを差し出し、ひとつのバッジを渡してきた。


「お見事でした。これがトバリジムを勝ち抜いた証、コボルバッジです」
「……ありがとう、スモモちゃん」


これでバッジは4つ目。いつの間にかもう半分まで行ってたんだ。今回バトルを頑張ってくれた残りのメンバーも外に出し、喜びを分かち合う。まあ晶は下らんと乗り気じゃなかったけど。




「…………、」
〈スモモ〉
「分かっていますよ、ルカリオ。彼らの課題は彼ら自身で気づいていかなければ」
〈……ああ。だが私たちもまだまだ鍛錬が足りぬな、後で修行するとしよう〉
「そうですね。お昼ご飯の後で手合わせしましょう!」


2人がこんな会話を繰り広げているとも露知らず、こうしてトバリジムでのバトルは幕を閉じたのであった。


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