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その後遠距離技で攻めたことでアサナンの高い攻撃技を受けることを極力避け、サイコキネシスを再び決めまずは一勝を獲得した。スモモちゃんは本当に一戦一戦を全力で挑むんだろう、ボールを見つめる表情が悔しそうな、ポケモンに申し訳ないという歯がゆい表情をしていた。な、なんか罪悪感が……。


「あたしの次のポケモンです、ゴーリキー!」
「緋翠、ここは交代しよう」
『かしこまりました』


緋翠に労いの言葉をかけボールに戻し、晶を繰り出した。柔らかい真っ白な羽根を羽ばたかせ飛翔する。


「きあいだめ!」
「りゅうのいぶき!」


鍛え抜かれた両腕をクロスさせ集中している間に攻撃を仕掛ける。紫色の炎がゴーリキーを襲うが既のところで耐え抜き、きあいだめが終わったの雄叫びを上げた。


『……ふむ。急所を狙いに来るか』
「かいりきです!」


フィールドに配置されている大きな岩を持ち上げ空中にいる晶に投げつけるゴーリキー。躱す指示を出し岩に当たることは無かったが、ジムリーダーはその隙を見逃さない。


「今です!がんせきふうじ!」
「っ晶!」
『ぐっ……』


かいりきの岩は囮。避ける軌道を読んでがんせきふうじで攻めるのが狙いだったんだ。効果抜群技を受けた晶はまだなんとか羽ばたいているが急所に当たってしまったらしくよろめきながら飛んでいる。


「畳み掛けますよ!もう一度かいりきです!」
「晶、りゅうのまいで避けるよ!」
「その速さなら……当たります!」


スモモちゃんは迷うことなくそう言い放ち、その言葉通り再び投げ飛ばされた岩は晶に命中する。そっか、がんせきふうじは素早さを下げる効果がある……だからりゅうのまいも普段より動きが遅くなって当たっちゃったんだ。


『……っ、やむを得ないか』
「大丈夫?」
『問題無い、と言いたいが素早さが下がっている分少々こちらが不利だ』
「晶フラフラ飛んでるもんね」
『お前をぶっ飛ばすだけの力は残ってるからなちんちくりん』
「やめてやめて!……次に繋げるよ、フェザーダンス!」


ダンスという名の通り踊っているようにゴーリキーの周りを飛び交い、抜け落ちた雲のような羽がゴーリキーを包み込む。晶も体力がかなり落ちていたみたいで技を放ったあと力無く地面に着き、ボールに戻って行った。


「緋翠、行くよ!」
『参ります』
「なるほど。フェザーダンスでゴーリキーの攻撃力を下げ、素早さの下がったチルタリスを下げ戦力を残しつつキルリアの防御の脆さをカバーする……良い戦法です」


ゴーリキーとスモモちゃんが呼びかけチルタリスの羽の心地良さに微睡んでいたゴーリキーがハッと我に返る。緋翠も先程のバトルで体力を削られているから、早めに決着を着けなければ。


「からてチョップ!」
「サイコキネシス!」


からてチョップが決まるところで緋翠がサイコキネシスを当て、ゴーリキーが宙へ浮く。


『チェックメイトです』


エスパーの高火力技は伊達ではない。地面に叩きつけられたゴーリキーは重力の重さも相まって目を回し戦闘不能になっていた。審判の声がフィールドに響く。


「ご苦労さまです、ゴーリキー。……やりますね、ユイさん」


スモモちゃんが闘志を燃やした目で私を見つめる。その顔は最初の時とは違い、好敵手を見るような好戦的な顔になっていた。褒めてくれるのは嬉しいけど、正しくは私じゃなくてポケモンたちが強いんだけどね。スモモちゃんは最後の一匹が入ったボールを持ち、構えた。


「ですがこの子は一味違いますよ。あたしの相棒、ルカリオ!お願いします!」
「わぁ……」


ルカリオと呼ばれるポケモンが現れた瞬間、思わず感嘆の声が出てしまった。凛々しい顔立ちに青と黒を基調とした獣人と形容されそうな体格。頭の後ろについてる四つの房のような部分が犬の耳のようにも見えた。不思議と人目を引くオーラを放っているルカリオというポケモンに、私は一瞬見とれてしまった。
スモモちゃんは惚けている私に小さく笑い「ルカリオを見るのは初めてですか」と聞いてきた。


「は、はい。カッコいいポケモンですね!」
「歳が近いので敬語は無しで大丈夫ですよ。この子はあたしが小さい頃から一緒に育った、兄弟のような存在なんです」


兄弟のような存在……その言葉がとても優しい響きで、肩越しにスモモちゃんを見つめるルカリオの眼差しが嬉しそうに細まった。またちょっと意味が違うけど、私の世界でも犬やネコをペットとして飼って家族のように育った家庭もあるもんね。時々テレビで心あたたまるエピソードを沢山見てきた。

図鑑をかざしルカリオのタイプを調べる。かくとう、はがねタイプ。はがねタイプも持っているんだ。


『ルカリオ……。如何なさいますか、マスター』
「……緋翠は今日大活躍だったからね。あとはこっちに任せてゆっくり休んで」
『かしこまりました』


結果として2体を制する活躍を見せてくれた。一礼する緋翠をボールに戻し、私も最後の一匹をボールから出した。今回トリを務めるのは彼になる。


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