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「ほう、ではその謎の声がした途端ズバットが吹き飛ばされ、君はそのまま意識を失ったということか」


簡単な自己紹介の後、私はこれまでの経緯を説明した。と言っても、先に目覚めたグレイシア君が色々伝えてくれてたみたいだから、私は博士たちが気になったことを質問されて答えるだけだったんだけど。

どうやらここはマサゴタウンと呼ばれる町にある研究所で、私たちはシンジ湖の調査に来た博士たちに保護されたらしい。私の記憶では湖の中で意識を失ったと思ってたんだけど、博士たちが見つけた時は畔でボールを握りしめて眠っていたと教えてくれた。

ちなみにギンガ団の姿は見当たらなかったそうだ。一足先に目が覚めて逃げたのだろうと思っておこう。


「……そして、他の世界から来た、か」


いくつか質問された中で私の出身地について尋ねられた。言うのは内心怖かったけど、嘘をついても得はないので正直に告白することにした。ポケモンが私のいた世界では空想の存在で、ゲームやアニメとして存在していたこと。


「うーん……なんか信じられないですね」


難しい顔でコウキ君が言う。いきなり初対面の人間がこんなこと言い出して、信じる方が難しいと思う。グレイシア君も人の姿で話を聞いていたようで、腑に落ちたような様子だった。


「道理で僕のことや、あそこがシンジ湖だったことも知らないわけだね。君が言ってたほかの世界から来たって話だけど、あながち有り得ない事ではないかもよ」
「え、そうなの?」
「グレイシアの言うとおりだ。ユイ君、シンオウ地方には時間と空間を司る神がいるという伝説がある。それは、君も知っているかね?」
「えっと、宝石っぽい名前でしたっけ。ディヤなんとか」
「ディアルガ、パルキアね」


グレイシア君が訂正してくれた、ありがとう。


「うむ。少なくともエムリットが君に関わったのだ、彼らともなにか関係があると思うぞ」
「エムリット?」
「感情の神と呼ばれ、シンジ湖で眠っていると言われているポケモンだ。君が聞いたというその声は、エムリットではないかとわしは考えている。君のギンガ団からグレイシアを守ろうとする心がエムリットに届き、助けてくれたのかもしれん」


(君の心の清らかさに免じ、ここは助けてあげる)


意識を失う前に聞こえた声。もし本当にエムリットだったのなら有難いけど、できればもっと前に助けて欲しかったかな!


「話が逸れましたけど、つまり博士はユイがディアルガとパルキアの力によりこの世界に来てしまったのではないかと考えているってことですか?」
「うむ。他にも原因があるとも考えられるが、彼らの力が作用していると考えた方が辻褄が合うのでな」
「あ、あのー……私の話、博士たちは信じてくださるんですか?」


話がトントン拍子に進んでるけど、普通に考えたらいきなり別世界から来ました、なんて話をされても信じられないし、むしろ精神状態心配されて病院送りにされそうだけど。


「君がこの状況で嘘を話すとは信じ難い。それに何より、君が必死にグレイシアを守っていたという事実は、グレイシア本人の話からも君の状態からも伝わった。わしは君の話を信じよう」
「ボクも信じるよ!ユイは悪い人には見えないからね」
「……っ」


いい人だ、紛れもなくいい人たちだ!この世界で会ったことのある人は、グレイシア君を除けばギンガ団員だけだったから、2人の心の温かさに胸がじわりと温かくなるのを感じる。


「そうと決まれば、ユイのこれからはどうします?なんとか帰る方法を探さないといけませんよね、博士?」
「うむ、それなのだが……おや?グレイシアがいないようだが」


そういえばさっきからグレイシア君の姿が見当たらない。いつの間にかいなくなっていた。


「研究所の出入口、鍵閉めてなかったからもしかしてそこから出たのかも……」
「嘘……私、探してきます!」
「え!?ユイ!?」


コウキ君の制止の声も無視して、私は研究所を飛び出した。


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