霧野先輩が連絡をくれない。そんなことで俺は機嫌を悪くしていて、そんな俺にまた腹が立って更に機嫌を悪くする、とても悪循環。
 瞳子さんに用意してもらった携帯をむすっとした表情で見ていたら、横からヒロ兄が、そんなに機嫌を悪くしてどうしたんだい、そう声を掛けてきた。何時もならヒロ兄と喋るのは楽しいし好きだったりもするんだけど、今日の俺は当然そんな気分でもなくって、黙りを決め込む。ごめんね、ヒロ兄。悪いのは全部全部霧野先輩だから。
 そもそも、連絡をすると言ったのは、霧野先輩からだった。今日の夜電話するから、出なかったらお仕置きだよ。はあ? 何の冗談ですかそれ。っつーか、俺には俺の都合もあるんですけどね。まあ、そうだろうけど、別にいいじゃん。いやよくないですから。そんな会話をしたのは、部活が終わって部室で着替えている時のことだ。口では不平不満の羅列を並べたが、正直なところ嬉しかったんだ。しょうがないだろ、霧野先輩、俺の彼氏だし。……一応ね。
 携帯のディスプレイは変わらず俺の気に入っている、サッカー系統の待受であるまま変わろうとはしない。あーほんとムカつく、霧野先輩のくせに。そう思っていたら、急に携帯が音を立てて鳴り始めた。――霧野先輩だ。一瞬無視してやろうかな、とか拒否してやろうかな、とかそんな思考が頭を過ったけれど、まあそれでも俺はやっぱり霧野先輩の声が聴きたくて、すごい不本意なんだけど、通話ボタンを押して、携帯を耳に押し当てた。

「……もしもし、狩屋?」

 あ、霧野先輩の声だ。当たり前のことなんだけれど、何だかドキッとして顔が熱くなった。電話でよかったな、霧野先輩がここにいたら絶対からかわれてた、ほんとよかった。

「先輩遅いんですけどー。先輩が電話するって言ったんでしょ、守って下さいよ」
「悪かったよ。神童の相談受けてたら、遅くなっちゃってさ」
「ふぅん」

 携帯の向こうで、霧野先輩が申し訳なさそうにしている。何だか面白くない。面白くなかった。俺は先程の心臓を跳ねさせた時の気持ちは何処へやら、すっかりまた気分を悪くしていた。

「先輩は俺よりキャプテンを優先させるんですね、よく判りました」
「そんな心算はないぞ。……まあ今回は俺に非があるから謝るよ、許して狩屋」
「嫌です、許してなんてあげませーん」
「参ったな。俺、狩屋に嫌われたら生きていけないよ」
「キャプテンがいるでしょ」
「神童と狩屋は違うさ。やっぱり狩屋が一番だよ」

 言っておくけど本当だからな、そんな霧野先輩の言葉にうっかり口元が緩んで、慌てて引き締める。それを横で見ていたヒロ兄がくすくすと笑うものだから、俺は茹で蛸みたいに顔を真っ赤にして(いるんだと思う)、ヒロ兄を横目で睨んでおいた。
 まあでもこのまま喧嘩に発展するのも嫌だから、仕方なく霧野先輩を許してあげることにする。霧野先輩はほっとしたように息を吐いたみたいだった。
 なあ、狩屋。霧野先輩に呼ばれて、はい、と返事をする。俺の機嫌を直せてすっかり安心したのか、霧野先輩の声は先程よりも少し明るかった。当然俺の方も、なんだけども。

「狩屋はさ、嫉妬してくれたんだよな?」
「はあ?」
「俺が神童と仲良くしてるの、そんなに嫌だった?」

 機嫌よさそうに笑う霧野先輩。ちょっとうざい、っていうかすっげーうざいんですけど! ほんとこの人調子乗りすぎ、ムカつく。
 俺は、何馬鹿言ってんですか霧野先輩ってほんとアホですね。それだけ言って即通話を切ってやった。画面に通話時間が表示される。思ったよりそんなに長くはなくて、俺はちょっと勿体無かったかな、なんてほんの少しだけ後悔した。
 メール機能を開いて、カチカチとキーを打つ。宛先は勿論、アホの先輩である。今頃少しは気にしたりしてるんだろうから、まあ仕方なくあのアホの先輩に助け船を出してやるんだ、ああなんて俺、先輩想いなんだろう!
 打ち終わったメールを送信する。ヒロ兄が顔真っ赤だよ、と茶化してきたから、五月蝿いよ! そう怒鳴って携帯をパチン、と勢いよく閉じた。



俺が一番じゃなきゃやなの!
(少しは察しろよ、ばーか)
fin.
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祝! 蘭マサの日!
蘭マサ可愛いですペロペロ
思ったけど私、蘭ちゃんに「許して狩屋」って言わせるの好きかもしれない、否、好きだ。

一応フリーにしますー!
南沢受けじゃないですけど、よかったらどぞ!












2011.12.08-  

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