なぁ、それだけ?
 そう言って自分に馬乗りになって、物足りなさそうにする南沢さんは、たまらなかった。薄暗い部屋の中なのに、何故か南沢さんのことだけはよく見えて、俺の心臓が早鐘を打つ。
 付き合って三ヶ月目だから、お前の家に泊まりたい。そんな南沢さんの言葉に歓喜して、俺は笑顔でそれを了承していた。一緒にご飯を食べて、風呂に入って、喋って、笑って。三ヶ月記念に相応しい、楽しい一日だったと俺は思う。そんな一日は過ぎるのもあっという間で、もう寝ましょうか、そんな俺の提案に南沢さんは渋々頷いて、二人で寝るにはあまりにも狭い俺のベッドに入り、あとは本当にただ一緒に寝るだけの予定だったのだ。南沢さんが、俺に馬乗りになるまでは。
 何が、と口にすれば判ってんだろ、の一言。

「俺、自信無くしちゃうよ?」
「……何で、」
「だって彼氏に手も出してもらえないとか、そんなに魅力ねぇのかなって」

 人並み以上だとは思ってたんだけどな、南沢さんは苦笑いをした。それを慌てて否定するが、南沢さんはどうにも納得いかないらしい。
 別に南沢さんは悪くないんだ。ただ、俺は南沢さんを大事にしたいだけで、本当なら好きな人の裸とか、エロい顔とか、興味はあるんだ。でも、だからと言って自分勝手に事を進めるわけにもいかないじゃないか。万一にでも、南沢さんを傷つけたらと思うと、やっぱり胸が痛くなるわけで。

「お前さ、そんな俺を割れ物に触れるような扱いすんなよ」
「え?」
「いやさ、優しい霧野のことだから、何となくは想像つくんだよな。言っとくけど、俺だって健全な男の子なんだぜ?」

 南沢さんはそう言って、ちゅ、と俺の額にキスを落としてくるものだからくすぐったい。よく見ると南沢さんの頬は先程よりも朱に染まっていた。その先を期待するような視線を向けられて、俺の心臓は今までにないくらいバクバクと慌ただしく動き始める。

「な、だから、しよ」
「でも、俺っ」
「いいんだよ、痛くたって。お前と一つになれない方が、ずっと痛い」
「南沢さん……」

 ここまで南沢さんが自分の気持ちを伝えてくれるのも珍しいかもしれない。と同時に、ここまで言わせてしまったのだから、俺も覚悟を決めないといけないのだと悟った。
 南沢さんの頬に手を伸ばす。南沢さんもそれに抵抗することなく寧ろ自分から身を屈めてくれた。
そうして一回、軽くキスをして、もう一回。

「っ……んぅ……ふぁ」

 今度は深いキスを贈った。舌を絡ませ合い角度を変えながら何度も、何度も。南沢さんの鼻から抜ける甘ったるい声に脳が痺れていくのを感じた。やばい、何も考えられなくなりそうだ。
 たっぷりと堪能したところで唇を離せば、二人を繋ぐ糸が雫となり落ちる。

「きりのぉ……」

 俺の名を呼びながら、蕩けたような表情をする南沢さんを見たのを最後に、俺の理性はぷっつりと切れた。



イチャイチャ記念日
fin.
------
蘭南の日ということで、一日遅れたけど蘭南の心算!
あれ、蘭ちゃん全然喋ってないおかしいな。












2011.12.08-  

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -