※南沢が小学生、倉間が高校生








「いっしょにねてくんなきゃ、やだ」

 そう言って小さなお姫様は俺の服を指先で摘んで、くいっと引っ張った。



俺の小さな小さなお姫様



 小さい時は弟や妹の存在に憧れたものだ。よく友達の家に行っては、いいなー、なんて言っていたような気がする。母さんに下が欲しいって駄々を捏ねたのも今ではいい思い出だろうか。その時母さんに、サッカー頑張ったらお兄ちゃんになれるかもね、なんて言われて張り切ってサッカーに打ち込んだんだっけ。まあすぐに“サッカーに打ち込んだところで、弟妹は出来ない”と悟りはしたけどね。
 そんな俺だが、実は高校二年生半ばで、いきなり小学生の弟が出来た。
 なんて言ってしまうと、どういうことだと思われるだろうけれど、説明するのは簡単だ。ただの母親の再婚。めでたく俺の父となった人には息子がいて、その子は小学一年生の可愛らしい男の子だった。

「あつしです」

 そう言ってペコリと頭を下げる礼儀正しい姿に、母さんがアンタよりよっぽど確りした子でしょ、なんて随分と失礼なことを言ってきたのだが、内心俺もそう思っていた。艶かな紫の髪を揺らして、長い睫毛を伏せるその姿は、それはもう美少年と呼ぶのに相応しい。否、寧ろ本当に俺と同じ男なのかと疑ってかかりたい程だ。それでいて礼儀も弁えているだなんて。つまり篤志は、出会った瞬間から俺の自慢の弟となったのだ。



 そして冒頭に至る。
 篤志はお気に入りのピンクのパジャマ(本人曰く、ピンクが一番かっこいいらしい)を着て、腕にはお気に入りのくま(名前はまーくんというらしい。くま、だからまーくんなんだそうだ)を抱いていた。
 とんでもなく可愛い弟からのとんでもなく可愛いおねだりに正直俺はクラクラとしたわけだけども、生憎と俺は風呂がまだだったわけで、寝る準備なんてこれっぽっちもしていなかった。

「俺まだ寝るまで時間かかっちゃうけど……篤志眠いんじゃねーの?」
「ねむくないから、まってる」

 そう言いながらも、篤志は眠たそうに目を擦っている。意外と頑固な奴なので、起きていると言ったら、うつらうつらしながらも頑張って起きているんじゃないだろうか。俺はその姿を想像して苦笑した。

「まーくんも、のりとねるっていってるんだよ」

 判ったと頷かない俺を、篤志なりに説得しようとしているのだろうか、くまのまーくんと、ねー? って首を傾げながらやり取りする様は正直言って可愛い、携帯のムービーに納めたいくらいだ。
 俺はそんな自分の欲望を抑えつつ紫を右手でぽんぽんと撫でてやった。一緒に寝てやるよ、そう告げると、篤志はぱあっと花を咲かせて嬉しそうに俺の手を引いて自分の部屋までとてとてと歩いていく。因みに篤志の部屋は俺の部屋でもあったりする。兄弟仲良く、ということで両親が部屋に二段ベッドを入れたのだ。上が俺で、下が篤志。
 まあつまり、一緒に寝ようと言わずとも実質的には一緒に寝ているわけだが、篤志の一緒に寝る、はこの意味ではなく、一緒の布団に入って寝る、と解釈するのが正しかった。

「着替えるから待ってろよー」
「ん」

 よっぽど眠いのか殆ど聞こえていないようだった。俺はその辺に脱ぎ散らかした寝間着にさっさと着替えて、篤志と一緒に布団に入る。おっと、くまのまーくんも一緒に、だ。
 もう少しで睡魔に意識を奪われそうな篤志の頭を撫でながら、俺はどうしても訊きたいことを口にした。

「な、兄ちゃんのこと好き?」

 同居生活も今は一ヶ月経った。随分となついてくれているとは思うけども、好きかそうでないかをはっきりと言葉で聞きたい、というのが男心だと思うんだ!
 篤志はまた目をを擦ってとろん、とした眼を覗かせる。

「ん……のりのこと、すきだよ」

 そう言って笑う篤志にドキッとした。こんなにときめいたのは、彼女だった女の子にもなかったかもしれない。やばい。
 俺は顔を赤くしながら、顔が赤いと指摘する篤志を必死に寝かしつけ、妙に元気になった自分自身に俺は溜め息を吐くのだった。






「ってことが昨日あってさー。マジ可愛くね、俺の弟!」
「倉間くんブラコンすぎて気持ち悪いですよ……」
「ちゅーかどーやったらそんななれんの?」
「うっせ! マジで可愛いんだから仕方ねーだろ!」



俺の小さな小さなお姫様
fin.
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芽衣子様に捧げます!
リクの高校生倉間くんと小学生南沢でした!
憧れの芽衣子様にということで、緊張しすぎて実は三、四回書き直してます(笑)
それでこの低クオリティかよって感じですが。
あ、でも書いてるのは凄く凄く楽しかったです!
何だか義理だけど兄弟設定とか、色んなオプションつけてしまってすみません><
書き直し受け付けますので、遠慮せずに仰って下さいませ!
ではでは、キリリクありがとうございましたー!












2011.12.08-  

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