知っているよ、知っている。コレは忌み子、鬼の子だ。鬼さん此方、手の鳴る方へ。ほらほら皆逃げないと。鬼の子に捕まったら大変だ。とって喰われて骨も残らずバリバリされちゃう。だからいっぱいいっぱい逃げないと。限界を超えても逃げないと。だって命は惜しいだろう? あーあ、不幸な子供が躓いた。転んで振り返った、すぐ後ろにああにっこり笑った鬼が立っている。残念無念君の命はもう終りと思え、仲間は助けになんて行かないよ。だってみーんな自分が一番大切だもの。

「ひっ、」
「そんなおびえなくても、だいじょうぶですって……おれ、ヒトたべたりしねーもん」
「そんなのっ、しんようできるわけないだろ……!」

 あらあら虚勢だけは一人前だね、だけどももう君は、鬼に捕まってしまったよ。ほら見えるだろう、嗚呼怖いね頭に角がある。口の中には尖った牙まであるんだ、これは本物、偽物であれと願ったところで助かりはしないのさ。
 君の膝はがくがく、瞳はうるうる、力なんて入らないから逃げれもしない。そうだね怖いよね、でも大丈夫、食べられてしまうのは一瞬だから痛くはないそうだ、一安心一安心。
 鬼の子はそのままじりじりと顔を獲物に近づけていって。嗚呼あと三秒、君の命はそれまでだ。

「いただきます」

 ぱっくんちょ。君は驚いて瞳を丸くした。あれあれ、どうやら鬼の子が食べたかったのは、獲物の唇だけだったみたいだよ。
 それもそうか、君は村一番の美しく生まれた綺麗な子供、鬼が恋をしても可笑しくはないのかもね。
 嗚呼笑っちゃう、笑っちゃう。悲劇的結末かと思いきや、案外そうでもなかったね。



鬼さん此方、手の鳴る方へ
fin.
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書いた本人が一番意味判らんと思ってます……。












2011.12.08-  

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