※明王と南沢が何故か同居
※鬼不と倉南が前提





 うわ、お前まだそんなことやってんの。
 呆れたような顔をして部屋に入ってきた明王さんを無視して、俺はひたすら数式を解く作業を進めた。後ろからふわりといい匂いが漂ってくる、多分明王さんはお風呂上がりなのだろう、チラリと横目で卓上型のデジタル時計を盗み見れば、時刻は午前零時を裕に越していた。

「なー、んなことやってねぇでさ、起きてんならいいことしようぜ?」
「……」
「俺溜まってんの。最近鬼道クン相手にしてくんないし」
「……」
「だからいいだろォ? な、篤志。あ、ダイジョーブダイジョーブ、俺タチもイケるし」
「……」
「聞こえてますかー篤志クーン?」
「……っ」

 煩すぎる、何この暇人。文句も言いたい(中学生を食おうとするな、とかタチネコの問題じゃねぇ、とか)ところだが、我慢我慢と唇を固くきゅっと結ぶ。だが後ろの暇な大人も引く気はないようで、ただひたすら騒ぎ立て俺の勉強の邪魔をするものだからたまらない。全くそんなに暇なら一人で何かやってるとか、もういい時間だから寝るとか、態々俺の勉強を邪魔せずとも選択肢は沢山あるだろうに。つーかそんなにヤりたいなら同じ感じで鬼道さんに頼めよ!
 いい加減集中力が散漫してきた。これではいくら問題を解いたところで意味はない。こうなったら奥の手を使うしかないだろう。
 俺は机の右側上から一段目の小さな引き出しを開ける。そこからある物を取り出して装着した。

「うわ、ずっけぇ」

 そんな明王さんの声が多少は耳に入ってきたが、先程よりは幾分かマシだと言えるような状況だ。流石便利集中アイテム、耳栓万歳。
 再度問題集に向き直って俺は勉強を再開する。流石にこれでは明王さんも諦めたのだろうか、微かに聞こえていた喧しい声も全く聞こえなくなってほっと一安心。全く迷惑な大人だ。
 だが、俺の認識は甘かった。
 五分程経っただろうか、漸く現在の頁にある最後の問題を解き終わって一息吐いた時、ぬめっとした柔らかい物が首筋を這って、俺は吃驚して肩を跳ねさせた。何かと思えば明王さんだ。全くこの人は油断も隙もない! 襲われてたまるものか、俺はその場から離れるように立ち上がろうとすればがっちり椅子ごと俺の体まで抱き締められて身動きが取れなくなった。これが二十四歳と十五歳の差か。明王さんの舌はそのまま上へと上がっていき、耳朶を唇で挟んでくる。

「っ、明王さんやめろって、俺勉強してんだってば……!」

 制止の声も届かないようだ。舌先で耳栓周りをくるりと円を描くように舐められた。そのままいとも容易く明王さんの手によって耳栓が抜かれてしまう。そうしてすっぽり空いた穴を埋めるようにして舌を差し込んでくるものだから質が悪い。ダイレクトに音が響いて変な気分になってくる。

「ほんとダメだって……ひっ、俺、倉間いるし……っ」
「ナイショにしときゃバレねぇって」
「ダ、メ……だって俺まだ倉間と、したことねぇもん……!」

 口にしてハッとする。止めようと必死になりすぎて、清く正しい男女交際(じゃなくて男男交際か……なんてそんなことはどうでもいいんだよ)をしてるだなんて、明王さんに言ってしまった。明王さんもぽかんとした表情を浮かべている。
 そう、以前俺は明王さんに見栄を張って現在の関係とは真逆のことを伝えていたのだ。だからまあ、彼がここまで驚いても無理はないというか、いや、俺が悪かったです、謝りますから。

「だからすみませんけど明王さんとは無理です……」
「……へ、あ……え? お前もしかして処女かよ?」
「……」

 その訊き方は男に対しては如何なことかと思う、仕方ないけど。若干恥ずかしさに顔を赤くしながら縦に頷けば、明王さんも信じてくれたのか、小さく謝罪の言葉を口にした。我儘な大人ではあるが、明王さんはわりといい人なのだ、わりと。
 そのまま明王さんがぽんぽんと俺の頭を撫でてくれた。もう邪魔をされることもないだろう、残ったもう片方の耳栓も抜く。そうしてすー、はー、と深呼吸をして問題集を一頁捲った。と、そこであるものに視界が覆われる。明王さんが俺の顔を覗いてきたのだ。何かと口にすれば、

「このままもちょっと辛いしさ、予行演習だと思って一回だけヤろうぜ、な、篤志。予行演習だから本番には入らねーし」

 ……前言撤回、やっぱりこの人ダメな大人だ! 明日鬼道さんに大量の愚痴と文句をメールで送りつけてやろうかと考えながら俺は深い溜め息を吐いた。



ダメな大人と賢い子供
fin.
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あ、あの、一応言っておきます
明王が嫌いなわけじゃないので……!
というか寧ろ好きです、好きですよ!
無印の本命明王だし!!

南沢受け好きな方、わりと鬼不派なので鬼不前提。
私はどっちも美味しいけどねじゅるり












2011.12.08-  

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