※年齢操作(南沢高校生、倉間小学生)




自宅でのんびり、持ち運びに不向きなハードカバーを読み込んでいた南沢はふっと顔を上げた。それはチャイムが三度目を告げてからだった。
留守番頼んだわよ、という母の言葉を思い出し、慌てて下へ駆け下りる。もしこれが宅配便なら、留守だと見切りを付けさっさと帰ってしまっていただろう。玄関で散らばっていた誰のものか分からない靴に足を通し、急いで扉を開いた。

そこで南沢は空中を見る羽目になった。え、と普段より猫被った声は空っぽの空気に溶ける。
首を傾げてきょろきょろと辺りを見回し、ついでに不在通知が来ていないかも確認。人の気配はどちらにも無かった。更に首を捻って、けれど置いてきた小説の続きが気になった南沢はそれ以上の追跡は諦めた。ガチャン、と扉を締め鍵を回す。

(何だったんだ…)

階段を足早に上っていくが、その表情は眉を顰めて何とも不機嫌だった。そもそも自分が本に心を捕らわれていたせいなのだが、それに突っかかる人は何処にも居ない。全く誰か一人でも残っていてくれたのなら、こんなに面倒なことはなかったのに。
我が儘な溜め息をひとつ、南沢は開け放されていた自室へと足を踏み入れた。

「よお、篤志!」

ぱちぱちと、目を、瞬かせる。驚愕して声も出なかった。
南沢はベッドに転がり、先程自分が読んでいた小説をザーッと乱暴に繰っている小さな体を見た。こちらを見付けるや否やそれを放り投げ、にひ、と悪戯が成功した笑みを向けてくる。

「気付くのおっせぇなあ、それじゃ変なやつが来たとき襲われちまうぜ?」
「何処でんなこと覚えてくるんだよ…っていうか、お前いつどうやって入った!?」
「篤志が上向いてポカンとしてるとき!横から抜けた!」

その得意気な表情を見て、南沢はがくりとうなだれた。この小学生は篤志がよく面倒を見ている隣の家の子供で、何故か酷く懐かれているのだ。こうして襲撃されるのも初めてではないが、何だか日に日に頭を使って来ているのが厄介極まりない。

「…分かった、倉間。ジュース出してやるからリビング行ってろ」
「えー篤志の部屋が良い」
「言うこと聞かなきゃ拳骨」

脅してみれば篤志のなんか痛くねーからなー!と可愛くない返事だが、それでも素直に階段を下りていくのだから、幼い頃からの躾はとても行き届いている。南沢は苦笑を浮かべ、散らかされた部屋を簡単に片付けた。ハードカバーからは栞が飛び出ており、あのチビ、と低く吐き出された怒りを倉間は知らない。


リビングへ向かう際、玄関を見てみたら確かに倉間のらしき靴があった。けれどこのめちゃくちゃな場所で見分けるのは不可能に近い。
綺麗にその場を整えてから、南沢はゆったりリビングの扉を開いた。

「遅い!」

甲高い声がソファーの上から響く。気にもとめずキッチンへ入り、落としても割れない素材のコップを二つ持って行った。

「何があるかな…」
「オレンジ!」

何故この家にあるジュースのメニューを知っているんだ。
南沢はじとりと睨みながらも、冷蔵庫からオレンジジュース、棚の中からはクッキーの缶を引っ張り出した。これだけで満足しないのが小学生の面倒なところで、もう一つ何か遊べる物を持って行ってやらなければならない。ゲームにするか、漫画にするか。悩みながらジュースを注いでやれば、南沢は突然横から袖を引かれた。くいととても軽いもので、力の差があり倒れ込むことはなかったがこれでは物を取りに行くことが出来ない。
その手を目で辿り、顔を覗き込んで聞いてみる。

「どうした?」
「篤志はここにいろよ」

返ってきたのは、じっと見つめる三白眼。その周りは赤くなっていて、南沢は素直に可愛いと思った。
倉間は最近の子供らしくマセた小学生で、南沢のことが好きだと言う。男同士でそういうのは間違っている、そう諭すのは簡単だけれど、どうにも南沢自身が気に入ってしまっていて。こうして今まで出来ないでいた。

「何でだよ?」

クッと南沢は口角を意地悪く引き上げた。倉間はその笑顔を見て、耳まで真っ赤に染める。小学生を誑かす自分は何て悪党だろうか、そう南沢は自嘲した。取って食おうとまでは考えていないけれど、ここまで雰囲気を作ってしまうのは既にアウトのような気がするのだ。分かっていて止めないのがまた自分でも質が悪いと思う。
やがて、倉間は俯いたまま呟いた。

「一緒に、いたいから」

分かり切っていた答えは南沢の満足するもので、またふんわり頬を緩めた。そして頭を撫でてやろうと手を伸ばす。それがまさに水色に埋まろうかと言うとき、倉間は急に顔を近付けたのだ。一矢報いてやろう、そんな気迫に押され避けきれなかった南沢はその口付けを受け入れてしまう。

「ん…っ」

震えている、柔らかな唇。当然の話だが、慣れていないのだとすぐに分かった。
ペロリと舐めてみれば子供の肌の味が広がって、とても犯罪を犯しているような気分だ。その動作のせいだろうか、倉間は肩を大きく跳ねさせ勢い良く離れた。顔は今までにないほど赤く、湯気でも出ていそうだ。

「かっ、」
「ん?」
「帰るッ!!」

言った途端に、倉間は小さな足を必死に動かしてリビングを出て行く。ガチャガチャバタンッ!激しい音がいくつも聞こえ、倉間は本当に帰ってしまったらしい。
南沢は一口も減っていないオレンジジュースを持ち上げ、微笑した。あいつはあのまま変わって欲しくないなあ。ぐいと一気に飲み干した味は、少し酸っぱく、ひたすらに甘い。






end....
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Miss Aのかがり様よりお誕生日お祝いとして頂きましたああああああああ!!
なんて私は幸せ者なんでしょうね!
自分が一番尊敬している文字書き様からお祝いの小説頂いちゃうなんてね!
いやあもうこの可愛さ見て下さいやばいですよね天使まじ天使
倉間のマセガキなとこといい、小学生らしいウブさといい……最高です、最高ですかがり様あああ!><////
これです、これを夢見てましたいやそれ以上ですひぃ!

あーもう倉南可愛いな!
これもうほんと一生物の宝でございます可愛い><///
本当にお忙しい中お祝い文ありがとうございました!
これからもずっとストーカーさせて頂きます!!












2011.12.08-  

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