久しぶりに会った南沢さんは、前より穏やかで笑顔の似合う人になっていた。
いや、前から素敵な人だったけど、なんていうかもっとこう清廉されたっていうか、とりあえず俺の少ない語彙じゃ表せないほどに魅力が増してるってことだ。
やっぱりその理由は、今まで抱え込んでいたものをふっ切れたからだろうと思う。

「くらま」

しみじみ俺の部屋でまったりしている南沢さんを見て考えていたら、不意に南沢さんに名前を呼ばれた。返事をすると無言で両手を差し出してきた。
その手は何でしょうか?俺何も持っていませんよ。と、思ったが、ここで余計なことを言ったらきっとこの人の機嫌を悪くさせてしまう。こういう時はそう、とりあえず近くに行ってみるのだ。

「どうしました?」
「ん、ほら」

目の前に来た俺を満足そうに見て笑う(ふんわりと、ふんわりとだここ重要!)と、そのまま俺を抱きしめた。
あばらればばら、突然のことにまるで呪文みたいな奇声を発した俺。くすくす笑う声が耳の近くで聞こえて、さらに体の温度が上がる気がした。実際上がってると思う。

「え、え?南沢さん!?」
「なに」
「いや、何じゃないっス!いきなりどうしたんスか!」
「甘やかしてんの」
「誰を?」
「倉間を」
「マジっスか!」

わー嬉しいな、じゃないって!
この人丸くなりすぎ!かわいいけど。俺の心臓に悪いです!かわいいけど。
俺の驚いて顔を上げた行動によって、かなりの至近距離で南沢さんと見つめ合うことになった。
これには南沢さんも驚いて、顔を赤くしていた。あ、やっぱりかわいい。俺は今日何回南沢さんをかわいいと思うのだろうか。
お互いの吐息が触れ合う距離にいて、しかも愛しの恋人はかわいらしく頬を染めている、とくればやるべきことは一つ。

「南沢さん…」
「ん…っ」
「ぅむ」
「ふぁ、んぅ…んぁ、ふ」

最初その薄く柔らかい唇を味わって、徐々に中に侵入して行けば温かい口内が俺の舌を受け入れた。奥に引っ込んでいた南沢さんの舌を絡め取って吸い上げたり、歯列をなぞってみれば、鼻を抜けるエロい声が鼓膜を震わせてきた。
暫くそうしていて、最後にもう一度唇を一舐めしてから俺は体を離した。南沢さんは顔を赤くして、瞳を潤ませながらもどこか恍惚とした表情を浮かべていて、俺がそうさせたのだと思うとふつふつと優越感と幸福感を混ぜたような気持が湧き上がってくる。
幸せだな、そう俺が思い目の前の人の名前を呼ぼうとしたら、南沢さんはムスっと唇を尖らせた。
おや?もしかして機嫌損ねたかも。

「嫌でしたか?」
「違う。嫌じゃないけど、今日は俺が倉間を甘やかそうと思ったのに」
「十分甘えてますから、安心してください」

俺がそう言っても、南沢さんは納得していないのか何かを考え込んでいるようだった。
この人は頑固だから、一度自分が決めたことはなかなか覆せないとういう長所であり短所がある。そう言った時、それはお前だろって言われて、似たもの同士っスねと言ったことがあった。

「よし、してほしいこと言え」

考えが纏まったというふうに俺を真っ直ぐに見た南沢さんは、そう命令口調で言った。これが南沢さんなりの甘やかす方法らしい。
してほしいことか…。

「う〜ん、それじゃあ、南沢さんからキスしてください」
「わかった」
「え、マジうむっ」

まさか本当にしてくれるとは思っていなかったので、俺は頬に熱が集まるのが分かった。目を閉じるタイミングを失って、目の前には真っ赤な顔でキスをしてくる南沢さんの顔がドアップに見える。

「ふ…んぅ、は、く…ぁま」

荒い息に混じって名前を呼ぶという大サービスまでしてくれるなんて最高だ。
南沢さんが目を閉じているから気づかれていないのをいいことに、俺は長い口付けが終わるまでずっとその顔を堪能させてもらった。




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Iwish Icouldflyの李織様より頂きました!
もうずっとずっと通わせて頂いておりまして、キリ番踏めてすっごくすっごく嬉しかったです!
例のごとく倉南ちゃんをお願いした私ですが……可愛すぎてどうしようかと!!!
唇を尖らせる南沢の可愛さ!!パネェ!!!
甘やかし沢お願いします、なんてリクをさせて頂いたのですけど予想以上の可愛さですよね、流石李織様です……><//
これからも陰ながら応援させて頂きます!
長編の方も楽しみにさせて頂きますね!

小説ありがとうございました!












2011.12.08-  

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